わくわくドキドキ出発前夜

わくわくドキドキ出発前夜

「ゆうちゃん、久しぶりに三人でお出かけしましょう」

　ママがそう言い出したのは、夕食の途中だった。

　僕が「いつ？」と聞き返すと、ママより先にパパが答えてくれた。

「明日だよ」

　最近ではママもパパも難しい表情ばかりで、二人と一緒に食事するのが辛いくらいだったけど、珍しく今日はどちらもニコニコ顔。

　なるほど、旅行の予定という、楽しい計画が決まっていたからなんだね！

「わーい！ ねえ、どこ？ どこへ行くの？」

「そうねえ。ゆうちゃんには、まだ難しい話だけど……」

「ここだよ」

　説明しにくそうなママに代わって、パパがスマホで示してくれた。

　地図か写真だと思って見てみたら、辞書アプリだった。

　僕が知らない言葉のページだ。

　パパが説明文を指差しながら、

「ほら、『理想的な世界。快適な環境。楽園』って書いてあるだろ？」

　と読み上げてくれた。

　よくわからないけど、遊園地よりも凄そうで、面白そうな場所だね！

　どんなところなんだろう？

　楽しみだなあ、『天国』ってところへ行くのが。

（「わくわくドキドキ出発前夜」完）