眼に見える時代の躍動と眼に見えない心の微動

一人の女の子をめぐって、兄弟どっちとくっつく———?

あらかじめ見出しでも掲示されてる通り、どちらかとくっつくこの物語。

『タッチ』みたいな感じの話かと思いきや、どっちがくっつくかまるでわからない。どっちとくっつくんだろう?って楽しみながら読み進められます。


この作品の素敵だなあって思う点は2つあります。

1つはこの時代の空気感。2000年代初頭のSMAP、松浦亜弥、おっはー、ぷよぷよ、ウィルコムなどなど、彼らの回想と、その時代に忠実な流行したものが出てくるので、懐かしい、エモい、一周回って“新しい”。

2つ目は心理描写。繊細な心の動きがつぶさに描かれていて、かつ説得力があります。例えば兄貴と好きな子のキスを見た幼稚園児の反応の描き方。幼い子がどんな反応するかなんて考えたこともないけど、きちんと丁寧に描かれているので、“あ、わかる、そーかも…”とか思います。

眼に見える時代の躍動と眼に見えない心の微動がハーモニーとなっている素敵な作品です。おすすめ!

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