第8話 時橋 昼奈②
リョウ君と付き合ってから少し経って、私は家族にリョウ君を紹介した。
もちろん最初はお父さんもお母さんも夕華もあんまり歓迎してくれなかったけど、リョウ君がもういじめをしないことや孤児院での出来事を話して、誤解を解くことができた。
夜光もすっごく反対していたけど、リョウ君が反省していたことを伝えたから、それで納得してもらうしかない。
ただ、孤児院でのいじめについては何も言わなかった。
昔のことで夜光に罪悪感を感じてほしくないし、私も夜光を責めるようなことは言いたくなかったから。
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初めてのデート・・・初めてのキス・・・初めてのお泊り・・・そして、女の子にとって1番大切な初めて・・・何もかもリョウ君が与えてくれた。
リョウ君と一緒にいる分、夜光と過ごす時間も減ったけど、私にとってリョウ君は大切な家族も同然だから・・・きっとわかってくれる。
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夏休みが明けてしばらく経ったある日、私の耳に信じられないニュースが飛び込んできた。
「えっ!? 夜光が女子を襲おうとした!?」
友達から聞かされたその話に私の思考は停止した。
だって、あんなに可愛く思っていた弟が女子を襲うなんてとても信じられないじゃない!
私は真意を確かめるべく、リョウ君に電話を掛けた。
「・・・もしもし。 リョウ君?」
『昼奈!? どうしたの? いきなり。 もしかして時橋のこと?』
「そう!・・・ねぇリョウ君。 夜光が女の子を襲ったって本当なの!?」
『残念だけど本当だ。 間一髪で俺達が止めに入ったからギリギリなんとかなったけど・・・』
「そっそんな・・・」
『信じられないのはわかる。 でも、これを見てほしい』
リョウ君から1枚の写メが送られた。
そこに写っていたのは、下着姿で泣いている女の子と下半身を露出させた夜光だった。
周囲にはほんのわずかだが、生々しい性の証拠が飛び散っている。
「夜光・・・どうして・・・」
『時橋みたいな陰キャはヒステリックになりやすいからね。
だから世の中の犯罪は大抵ああいう奴がやらかすんだ。
大方、好きな女の子を襲って自分の物にしようとしたんだろう』
「そんな・・・そんなことで・・・」
証言と動かぬ証拠がそろった以上、夜光が女の子を襲ったのは間違いない。
『そろそろ警察が来るから、切るね? 目撃者として事情聴取を受けないといけないから』
「ごめんね? リョウ君に迷惑かけて」
『気にしないで。 善良な市民として当然のことだから』
リョウ君はそう言って電話を切った。
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その夜、お父さんとお母さんも学校に呼び出され、私達は被害者である女の子とその両親に頭を下げて必死に謝罪した。
「違う・・・僕はやってない! 信じてよ!」
所が、加害者である夜光は謝罪するどころか自分はやってないと否認ばかり口にする。
証拠まであるのに、言い訳して逃げようとしてるんだ……。
夜光はいつからこんなクズになり下がったの?
姉として情けないよ!
※※※
私達の必死の謝罪で、向こうは被害届は出さないでくれた。
その代わり、夜光は退学処分を言い渡された。
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「出ていけ!!」
「女の子を襲うような男は家族じゃありません! 2度と私達の前に現れないで!!」
退学通知が来た後、お父さんとお母さんは夜光を追い出すと決意した。
夜光は涙ながらに懇願するけど、こればかりはもう私も愛想が尽きた。
「・・・お姉ちゃん・・・助けて・・・」
この期に及んで私に助けを求めてきた。
自分が悪いのを棚に上げて、なんて自分勝手なの!?
「さわないで!!」
「・・・」
「リョウ君が言ってた・・・あんたみたいな陰キャが世の中で犯罪を起こすんだって。
私、そんなの信じていなかったけど、それが間違いだったわ!」
私は生まれて初めて、夜光に対して激しい怒りを覚え、彼を力強くぶった。
女の子を無理やり襲うなんて、男以前に、人間として恥ずべき行為をして、私達家族の信頼を裏切った。
さらには、私の大好きなリョウ君にまで迷惑を掛けた。
許せる訳がない!
「お姉ちゃん?・・・」
「家族の名前に泥を塗ったあんたなんて、弟じゃない! お姉ちゃんなんて呼ばないでよ!
! 気持ち悪い!!」
「!!!・・・あぁぁぁぁ!!」
夜光は雄たけびのような叫び声を上げながら、その場を去って行った。
はっきりいって自業自得!
もう私が知っている夜光はもういない・・・私はそう思い、夜光のことを忘れることにした。
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夜光が去ってから数ヶ月の月日が流れた。
私は変わらずリョウ君と愛し合っている。
将来は結婚して2人で温かな家族を築いていきたいと思っている。
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季節が代わり、涼し気な風が吹き上げる秋になったある日。
冬に開催される大きな大会に向けてサッカー部は合宿に来て、猛練習をしていた。
もちろんマネージャーの私も同行して、みんなのサポートをしている。
※※※
合宿2日目の夜……。
宿舎のおばちゃんが作ってくれたカレーを食べた後、私は部屋に戻って寝る準備をしていた。
部屋はもちろんみんなのいる大部屋とは別の部屋。
「・・・なんだろ? 体がうずく・・・」
私は体が熱くなるのを感じた。
息も荒くなり、汗まで出てきた。
風邪とかインフルエンザとか、そんな病的なものじゃない。
なんというか・・・動物的な発情?
「がっがまんできない・・・」
私はたまらなくなり、自分の股をさする。
すると、それがたまらなく気持ちいい。
「どうしちゃったの? 私」
みんなが大変な時に何をしているんだって思うけど、私は性の欲望にあらがえなかった。
衣服を脱いで下着姿となり、体中を取り巻く熱を逃がす。
再び股をさするが、性欲は全く消えない。
「昼奈、いるか?」
どうしようか悩んでいる時に、ノックと共にリョウ君が部屋に訪ねてきた。
私は藁にもすがる思いでドアを開けた。
リョウ君はもちろん、下着姿の私を見て驚いた。
「昼奈、その恰好は・・・」
「ごめん、なんだか体がうずくの。 リョウ君、疲れているとは思うけど・・・」
「実はさ・・・俺もさっきからめちゃくちゃヤリたくて仕方なかったんだ。
練習ばっかで溜まってるのかも・・・」
「じゃあ、ちょうどいいね」
私はリョウ君を部屋に招くと、2人で生まれたままの姿になって、1つになった。
なんだか今日は一段と気持ち良く感じる。
※※※
「おっ! やっぱりここか!」
2人の世界を満喫していると、サッカー部のみんながなだれ込むように入ってきた。
私はリョウ君とヤルことに夢中でカギをかけ忘れていたことを、この時初めて気付いた。
「なっなんだよ、お前ら!」
「なんだじゃねぇよ! 何、合宿に来てまで、女と楽しんでるんだよ!!」
「関係ないだだろ!! っていうか出て行けよ!」
「冷たいこと言うなよリョウ。 俺達もさっきからヤリたくてうずうずしてんだよ!」
「そうだ、俺達にもヤラせろよ!」
「ふっふざけんなよ! 昼奈は俺の彼女だ!」
「ケチケチするなって、俺らチームだろ? 楽しいことはみんなで分けようぜ?」
「だいたいお前らのせいで余計に興奮してんだよ! 責任取れ! 責任!」
みんなは私からリョウ君を引きはがすと当時にズボンとパンツを脱いで、私にモノを突き出してきた。
「やっやめてっ!!」
「いいじゃねぇか! マネージャーなんだろ? だったらこいつのサポートもしてくれよ!」
「何言ってるの!? 私はリョウ君の彼女なんだよ!?」
「だからなんだよ? これだけのイケメンに囲まれてヤレるんだぜ? 女冥利につきるだろ?」
「嫌っ! 離して!」
私は必死に逃げようとするが、サッカーで鍛えられておるみんなの力に勝てるわけがない。。
「やめろッ!」
リョウ君は必死にみんなを止めようとしてきれるけど、3人で押さえつけられていては、いくら彼でも動くことはできない。
「それじゃあ、リョウ。 彼女借りるぜ?」
「いっいやぁぁぁぁぁ!! やめてぇぇぇぇぇ!!」
※※※
そこからはあんまり記憶にない。
覚えているのは鼻をさす生臭さと下品な男達の笑い声。
どんなに叫んでも、彼らは私の体に性を吐き出すのをやめなかった。
「あ・・・う・・・」
気が付くと、いつの間にか部屋には誰もいなかった。
あれは夢だったのかと淡い希望を一瞬抱くも、私の体にまとわりついている生臭い液体が真実を物語っている。
「うっ・・・」
私の目から涙があふれた。
今まで一緒に頑張ってきたサッカー部のみんなが私を性処理の道具みたいに……。
あの中には付き合っている彼女がいる人もいたのに……。
リョウ君はどこにいったの? なんで私のそばにいてくれないの?
「時橋! 大丈夫か!?」
そう言って部屋に入ってきたのはサッカー部の顧問をしている高橋先生だった。
「平気か!?」
「・・・先生っ!!」
私は思わず先生の胸に飛び込んだ。
自分が汚されたと言う事実から、目を背けたかったからだ。
「時橋・・・」
先生は私の体を抱きしめてくれた。
なんだかお父さんみたいなあったかい胸だな……。
「・・・いいんだな?」
「えっ? いいって・・・きゃ!」
先生はいきなり私を押し倒し、馬乗りになった。
「先生・・・何を・・・」
「お前から俺の胸に飛び込んだってことは、そういうことなんだろ?」
そういうと、先生はいきなり私の胸を揉みだした。
「先生っ! やめてっ!」
「すまん、時橋。 先生、我慢の限界なんだ!
でもお前が悪いんだぞ!? こんなところであいつらとやりたい放題するから!」
「なっ何いってるんですか!?」
「大丈夫! すぐ済むから!」
先生は私を押さえつけながら、服を脱ぎ捨て、全裸となった。
なんで? 先生は確か奥さんと子供がいるはず!!
こんなの家族に対する裏切り以外の何ものでもない!!
「先生やめてっ! お願いッ!!」
「静かにしてくれ! 良い子だから!」
私は先生に口をふさがれ、声を出すことすらできなくなってしまった。
「(誰か・・・助けて・・・)」
でも、私の声は誰もに届かなかった……。
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翌朝、私は体調不良と言う名目で家に帰った。
シャワーを浴びて体を隅々まで洗ったと言うのに、体があのおぞましい経験を記憶してしまっている。
気持ち悪い・・・。
「もういや・・・」
私はそれ以降、学校にも行かず部屋に引きこもるようになった。
信じていたみんなに裏切られたショックがあまりにも大きかったんだ。
お父さんとお母さんは心配して何度も声を掛けてくれたけど、私は本当のことを話すことができなかった。
心配して来てくれた友達にも、気分が悪いと適当なことを言って納得してもらっていた。
それに言ったとしても、犯された証拠もないし・・・痕跡もきっと消されているはず。
「リョウ君・・・」
私の唯一の希望はリョウ君だった。
あの夜から私はリョウ君と1度も顔を合わせていない。
電話やメールで何度も連絡したけど、全く反応がなかった。
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引きこもってからしばらくして、私のスマホに着信が入った。
心配してよく電話してくる友達の誰かかなと、画面を何気なく見ると・・・。
「リョウ君!!」
スマホに表示されていたのは、リョウ君の名前だった。
私は藁にもすがる思いで、通話ボタンを押した。
「もしもし!! リョウ君!?」
『昼奈・・・』
大好きなリョウ君が私の名前を呼んだだけで、体中から力が沸き上がるのを感じる。
私は嬉しくて涙が止まらなかった。
「リョウ君、私・・・」
『別れよう・・・』
「・・・えっ? 今なんて」
『別れよう。 もう君を好きになれない』
「なっ何を言ってるの?」
『俺以外の男と寝るような浮気女なんかどうでもいいよ』
「何を言ってるの!? あれはみんなや先生が無理矢理・・・」
『関係ないね。 俺の彼女を名乗るならどんなことをしてでも体を明け渡すマネはさせなかったはずだ。
その場に俺がいればなおさらだ。
でも君はできなかった・・・これは立派な浮気だ』
「そんな・・・」
リョウ君が何を言ってるのか理解できなかった。
無理矢理犯されたのが浮気?
・・・いいえ。
それよりなんで傷ついた私にこんな淡々と話せるの?
よく聞けば、彼の声は今まで聞いたことがないほど冷たかった。
『そういうことだから、もう俺に関わらないでくれ』
「まっ待って・・・」
『さよなら』
無慈悲にも、電話はそこで切れてしまった。
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