ストラップの想い出

 電車の振動で光星くんのスマホに付いているストラップが左右に揺れている。よく観光名所とかで売っている2つで1つになるストラップ。付き合ったばっかりのカップルが買ったりするようなものだ。

 懐かしいな。

 あれは、付き合ってから初めて2人で行った旅行で買ったやつだ。まだ付けていてくれて嬉しい気持ちがあるが、悲しい気持ちもあった。



 再会してしばらくすると、私と光星くんは付き合うようになった。特にドラマチックな展開は一切なくて、何度か一緒にご飯を食べに行って、何度か一緒に色んな場所に出かけるようになって、光星くんに告白されて付き合うようになった。

 告白の時に光星くんが「ちゅき合ってください」と噛んだことは今も覚えている。あんなに緊張している光星くんを見たのはこれが最初で最後だった。

 付き合ってから光星くんと初めて行ったのは歴史的名城がある場所だった。お城は大きくて迫力があって凄かったし、旅館で食べたご飯は美味しいのが多くて楽しかった記憶がある。

 永遠にこの時間が続けばいいのに。

 物語のワンフレーズみたいなことを考えたりもしていた。今思うとポエムチックになっていて、少し恥ずかしく感じたりもする。

 帰りの電車。時間帯の影響は分からないけど、乗ってる人は少ない。少しソワソワしてる光星くんを覚えてる。

 不思議になって「どうしたの?」と聞くと光星くんは覚悟を決めたかのようにこっちを見てきた。そして、袋を目の前に出して「これ」と渡してきた。

 私が「開けていいの?」と聞くと、光星くんは「うん」と答える。

 ラッピングされた袋の中に入っていたのはハートの形をしたストラップだった。ハートは半分だけになっていた。

 なんで半分なんだろうと思っていると、光星くんがもう半分のハートをスマホに付けていた。光星くんが「今日のプランは全部頭の中にある」って言ってスマホを出さなかったのはこのためだったのか。

 嬉しくて思わず光星くんに抱きついたのを覚えている。今考えると、少しだけ恥ずかしかったりもしている。

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