第30話通学路に潜むもの(3)

男の不審な行動を察知し、とっさに男を自分の方へと引き寄せた侑。

だが男に追いつかれて、捕まってしまった。

「おい、お前!おれのことをどうして知っているんだ!?」

侑の口を右手で押さえながら、男が侑に質問した。

「そんなの当然だろ、お前の事件は近所じゃすっかり話題になってるよ!」

「ちっ、男子に興味はないのによお・・。余計なことをするんじゃねぇ!」

男は侑を絞め殺そうと、侑の首に右肘を巻きつけようとした。

「あっ・・・ああ!助け・・・」

侑は息絶え絶えだ、このまま落ちてしまうのか・・・。

ところがそうはならなかった。

「うりゃーっ!!」

突然、別の男が侑と男の背後から猛ダッシュで来ると、それを助走に飛び上がり、男の背中にひざ蹴りをした。

男は倒れてしまい、侑は無事に解放された。

「大丈夫か!?」

「げはっ・・・・、大丈夫。本当にありがとう。」

「よかった・・・。ところで君の名前は?」

「道明寺侑です、あなたは?」

「おれは田中間廊たなかまろうだ。」

その時、倒れていた男が意識を取り戻した。

「うう〜、覚えていろ!!」

男は捨て台詞を吐くと、そのまま走り去っていった。

「こらーっ!!待たんか!!」

「ん?これって・・・」

侑は道であるものを拾った、それはなんと教員免許証だった。顔写真を見ると、数年ほど若い頃の男が写っていた。

「これは先生が持っているというあの・・・」

「侑、一体どうしたんだ?」

「なんでもないよ、とにかく助けてくれてありがとう。」

「おう、気をつけてな。」

侑は教員免許証を持って走り出した。






そして侑は自宅へと向かい、教員免許証を持って考えた。

「犯人は先生だったのか・・・、だがどうもぼくの学校じゃないようだ。」

教員免許証には公立西○○中学校と書かれていた、確か夏に野球部の練習試合で対戦したことがあった。

「とにかく、警察に聞いてみよう。」

侑は家から歩いて十五分のところにある、交番へと向かった。

「おや、中学生がここへ来るなんて珍しいな。」

年老いた警官が侑を見て言った。

侑が教員免許証を渡すと、警官の表情が変わった。

「この男は・・・」

「知っているんですか?」

「ああ、女子中高生をターゲットに猥褻行為を繰り返した常習犯だよ!」

そして警官は教員免許証の男・長谷野薫はせのかおるについて話した。

今から三年前、公立西○○中学校の当時十四歳の女子から「先生に毎日エッチなことをされている」と警察に通報があり、長谷野は強制わいせつの罪で逮捕された。警察の捜査でその他にも被害者が八人いることも発覚し、男は三年の懲役刑になった。

「侑くん、君はこれをどこで拾ったんだ?」

「それが・・・、実は長谷野が不審な動きをしているのを目撃して捕まってしまったんです。ですが偶然、通りかかった人に助けてもらいました。その時にこれを拾いました。」

「なんだって!?どうしてその時に警察を呼ばなかったんだ!?」

侑は警官に怒られてしまった。

「すみません・・・。」

「でも、君のおかげでこの連続通り魔事件が解決するかもしれない。そこはありがとうな。」

警官は優しく侑の頭を撫でた、侑はとても嬉しくなった。





その日の夜、侑はUからの手紙を受け取り地下迷路へと向かった。

『やあ、侑。なんだか嬉しそうな顔をしていたな。何かあったのか?』

侑はうなずくと、Uにこれまでの経緯を説明した。

『ふーむ、やっぱり教師か・・・』

「えっ!?Uは解っていたの?」

『ああ、教師なら学校の生徒が下校する時間帯や通学路のことを把握できるからな、待ち伏せ作戦には都合がいい知識があったんだ。』

Uがそこまで考えていたことに、侑は下を巻いた。

「とにかくこれで事件が解決するね。」

『ああ、それにしても教員免許証を拾ったときは本当に運が良かったな。侑には探偵の素質があるぞ。』

「本当に・・・?」

侑は疑問を持ちつつも、Uに誉められたことが嬉しかった。

そして侑は地下迷路を後にするのだった。







翌日、侑が朝のニュースを見ていると連続通り魔事件の内容が流れてきた。

「昨夜午後七時、愛知県○○町○○区内で発生していた連続通り魔事件の犯人が、警察に逮捕されました。逮捕されたのは元教師の男・田中間廊で、女子たちが学校から帰宅する時間帯を狙って、犯行におよんだようです。警察によると『女子を見ていると、精神的衝動が抑えられない。』と言っているそうです。田中は過去にも学校で複数の女子にワイセツな行為をして逮捕された前科があり、警察は事件の内容を厳しく追及していく方針です。」

昨日の警察官の言った通りになった。

「これで、もう女子たちは安心して下校できる・・・」

侑はほっと一安心した。

それから数時間後、侑は本を買いにスーパーへ向かい、その帰り道でのことだった。

「侑、また会ったな。」

「あっ、斎藤さん。久しぶりです。事件のこと、どうもありがとうございました。」

「いえいえ、気にしておらんよ・・・。」

斎藤の表情が影って見えた、侑は心配になり斎藤に質問した。

「あの、どうしましたか?」

「・・・侑、秘密を守れるか?」

侑はうなずいた、そして斎藤から衝撃の事実が語られた。

「実は間廊は、私の従兄弟なんだ・・・。あの時、右目の下のほくろが見えたときには確信があった。だが、私には親戚を警察に通報することができなかった・・・、仲のいいたった一人の従兄弟だから・・・。」

侑は申し訳ない気持ちになり、田中の教員免許を警察に渡したことを謝罪した。

「謝ることはない、遅かれ早かれこうなることは解っていたんだ・・・。」

斎藤は遠くを見て言った。






















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