異世界の中心に降り立った俺

「ちょっと待て、うわぁぁぁ。」


暗い謎の空間を越えて、真っ青な空に放り出された俺は重力に引かれて真っ逆さまに落ちていく。結構な高さだ。正直、俺は先ほどからテンションが上がりまくっていた。昨夜もいつも通り安アパートの一室で寝たはずだった。しかし、次に目が覚めた時には目の前に女神がいた。そしてありがちな能力うんぬんの話をして俺は異世界へと放り出された。うーん。俺の見てきたフィクションもの。アニメなんかでよく見る場面展開。空から急に降ってくるヒロイン。落ちてくるのはよく見ていたが主人公が落ちるのはあんまり記憶にない。しかしこの場合どうなるんだ?息がしにくい。俺の女神からの贈り物はこの世界のあらゆる魔法を扱える能力。俺が現実で学んだのは、能力が無くてもお金があればどうにかなる。だったから女神に願ったのは最初お金だったが、贈り物はもっとこう…精神的なものしかダメだったらしく願いは却下された。その次に思いついたのがこれだった。単純になんでもできる奴が一番だと思ったから。だけど、これどうしよう?扱えるけど知らなければ魔法使えない。魔法は、基本精霊との契約によって成り立つらしい。それを学ぶのは異世界に辿り着いてからと言われた。しかもそれを言われたのは贈り物を贈られた後だった。即刻、返品したかったのだが、遅かった。俺は異世界に放り出されていた。


えっ?正直、女神を見た時、俺は夢を見ていると思った。だってそうだろ?やけにリアルだけど現実だと受け容れられる内容では到底ありえない。そういや、落ちる夢って良い夢だったっけ?そんなことが頭によぎる。やばい段々速度が上がってきている気がする。さっきから状況を確認したいがいかんせん目を開けられない。目を開ければやばい。それを本能で感じる。ただ自分が落下していることだけは確かだ。悲鳴のような叫び声が下で聞こえ始めた。そりゃそうだろう。もし空を見ていて人が落ちてくるのを確認出来たら俺だって叫ぶかもしれない。そういや空なんてもう何年も見上げてなかったな。やばい、なんだろ、なんか涙が出そうだ。俺、死ぬのか?よく分かんないうちに転生?したと思ったらもう死ぬのか?いやいやいやどういうことだよ。そんなことが頭の中を駆け巡っていたが、急にふわっと柔らかい感触に包まれると俺の身体にかかっていた重力が消えた。思わず目を開けた。目の前にはとても可愛らしい女の子の顔。思わず顔を背ける。背けた先には同じ紺色のセーラー服を着た、恐らく学生か何かの幾人かが好奇の目でこちらを見ている。ここは公園かなにかだろうか中央には噴水が見え、その周りにランダムに設置されたベンチ。しかし、奥にはえらく大きな建物群。中世ヨーロッパって言えばいいのか?実際、ヨーロッパのどの国にも行ったことが無いから分からないがレンガで作られたそれらはまさしくヨーロッパぽかった。知らんけど。


「もう。ダメじゃない。なんのパフォーマンスか知らないけど、流石にあの高さでも目を開けてないなんて。」


俺は自分の足で地面に立ち、改めて助けてくれた女の子を見る。この子も周りの子達と同様に紺色のセーラー服を着ている。が、俺はそれよりも別のところに視線がいってしまった。メチャクチャでかい。うーん。夢だとして俺こんなに欲求不満だったか?あまりにも露骨すぎやしないか?


「さっきから黙ってどうしたの?そういえば空から降ってきたってことはあなた、神託の騎士の一人ってこと?」


ヤバい。俺はどうやらこの世界では選ばれた勇者的な存在みたいだ。

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