第二十一話 心配

「お主の戦闘力、正直わしの想像を超えていた。そしてお主らがアクィラ商会に卸した商品にしてもそうじゃ。あれは到底タリオ村で手に入る代物ではない。お主の力で作ったんじゃろ?」


 図星を突かれ思わず心臓が飛び跳ねる。

 なんてこった、こんなに早くバレてしまうなんて。


「いや、えーと……」


「ほ、心配せんでもそれを弱味に何かしようとは思うとらんよ。わしだってお主らとの関係を悪くさせたくはない」


「そ、そうか」


「わしが危惧しとるのは世の中がわしみたいに理知的な人間ばかりじゃないことじゃ。この先絶対にお主の力を己のために利用する者が現れる」


 どこかで聞いた様な話だ。

 えーとあれは……たしかギガマンティスを倒して王国から村に帰る時だったかな。

 たまたま出会ったフロイとかいうイケメンとそんな話をした気がする。


「幸いなことにお主は善良な人間じゃ、その力を悪用はせんと思うがそれだけに誰かに利用された時良心の呵責に耐えられるか不安での」


 確かに可愛いスライム達を悪用されたらと考えるととてつもない怒りと悲しみがこみ上げてくる。

 爺さんが心配するのもわかる……が、俺は平気だ。


 なぜなら。


「大丈夫っすよブルムさん! 確かにキクチさん一人じゃ危なっかしいっすが俺っちや他にも頼りになる人がたくさんいるっすからね!」


 そう、俺はジーマと違って仲間がいるからな。


「おいおい危なっかしいは余計だろ」


「えー、だってキクチさんはすぐ厄介ごとに首をつっこむじゃないっすか」


「ぐ、それを突かれてると痛いな」


「ほほ、これなら大丈夫そうじゃの」


 いつもの様に騒ぐ俺たちを見て、ブルムは楽しそうに笑っていた。






 ◇





「じゃあな、世話になったな爺さん」


「うむ。また会おうぞ」


 ジーマ達とやりあった日から二日たった今日、俺たちはブルムとミギマに見送られ商国を出ようとしていた。

 商国についた日に用事は全部済んでしまったのだが、俺たちも馬も休憩が必要なので昨日はたっぷり休んだのだ。


 ちなみにアクィラ商会はブルム商会の傘下の商会だったらしい。なので二人には面識があった。


「それでは契約の通り商品の配送をお願いしますよぉ!」


「はいっす! 期日は絶対守るっす!」


 ロバートもミギマと打ち解けれた様だな。商国に知り合いがいるのはロバートにとって絶対にプラスになるはずだ。

 よかったよかった。


 俺はといえばミギマに「ブルム様に向かって『爺さん』とはなんですかぁ!」と怒られた。ファーストコンタクトがアレだったから仕方ないだろう。ブルムも「別にわしは構わんぞ」って言ってたし変えるつもりもない。


「ようし、それじゃあ出発するっすよ!」


 ハヤテがいななき馬車が動き出す。


「じゃあねー!」


 俺の肩の上からそらが手を振って叫ぶ。

 そういや村に残ったスライム達は元気にやってるだろうか。

 帰ったらたっぷり構ってやらないとな。


 俺はそんなことを考えながら帰路についたのだった。

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