4-5.削られたラブ表現など ②

4-5.再会と約束


もともとは、もうすこしイチャイチャするはずだった市場のエピソード。慰労会の夜に焦点を当てるため、ラブ表現を削ったという話でした。


実際に削った部分は、ラストあたりになります。


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「城で気楽な慰労会をやろうと思っててね。そこに彼女が参加できるよう、はからうつもりだよ」

 ジェイデンは言った。「タイミングを見て後押ししてあげられるかも。そうだ、媚薬と言ってきみからブランデーでも渡してやったら? うわさの白魔女の薬だと信じて、勇気が出るかも」


「そういう効果は、なくもないかもしれないわね」

 薬の話が出たことで、スーリもようやく笑った。「偽の薬を飲んでも、病気が治ることはよくあるのよ」


「よし。じゃ、今日の巡回が終わったら彼女を連れて行くよ」

「ええ。それらしいビンを用意しておくわ」

「それはむしろ、当日がいいんじゃないかな」

 ふたりは短く打ち合わせた。気まずい空気がなくなったことにスーリはほっとした。


●「ところで、これは公正を期すために言っておくけど」

●ジェイデンは手袋をはめなおし、最後にこう言った。「きみがしょげてるところを見て、よけい好きになったよ。優しくしたいのが半分、いじめたいのが半分」


●「そっ」

 

●耳のあたりが熱くなり、とっさに言葉にならなかった。赤くなったのをからかわれるかと思ったが、男は優しく笑ったまま手をのばし、頬にかかる髪をはらってくれただけだった。革につつまれた指が頬をかするあいだも、ジェイデンのまなざしが熱をおびて感じられた。


「……じゃあ、またあとで」


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●のついたあたりが、おもに削った部分です。

実際には、もうすこしビターな会話が入ることになりました。

「慰労会ということは、狩猟シーズンがもう終わるのね」

からはじまる部分で、ジェイデンが王都に帰る部分が強調されています。入れ替えた部分も、修正の余地はあるような気がしますが、ここではラブは薄めにしておきました。ただし、ボディタッチは残しています笑


いつも押せ押せで来ていたジェイデンが、この回だけは妙にクールです。スーリにあんまり雑にあしらわれるしw、ほかにもいろいろ事情があって、彼女をあきらめようかとしているところでした。そのせいでスーリは妙に彼を意識してしまい、どきどきすることになります。


好きなエピソードですが、もう少し感情面を整理するともっといいかも。このときのジェイデンとスーリのおたがいへの思いが、もうちょっとわかりやすく書かれてるほうがいいかもしれないですね。とくにジェイデンの側。


ジェイデンは最初から最後までスーリ大好きなので、こういうふうにちょっと冷たいシーンをはさんでもいいんじゃないかと思うんですが、意外と読者につたわらないものなんですよね。作者の文章力や読者側の読解力の問題じゃなくて、先日エッセイに書いたみたいに、「読者は作者が思うより10倍素直」の話じゃないかと思うんですよ。のめりこんで読んでいれば、よけいに。


絶対にカップル固定のハピエンが約束されているロマンス小説のジャンルであってさえ、読者はキャラの言動にはらはらするものですもんね。作者が思うより、あとひとさじラブを多めに足すくらいでちょうど伝わるのかもしれません。これも、改稿時の課題ですね。


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