悪の組織の下っ端戦闘員なんだけど念願の初彼女がまさか正義のヒーローやっているってどういうこと?この世に神様っていないの?

最終章

キャンパスライフ

第1話 始まりの風景

「私が正義であるかぎり、貴方達あなたたち悪事あくじは許さない」



 凛々りりしく宣言しつつ、ブルーレンジャーは華麗にポーズを決めた。フルフェイスのヘルメットに、タイトな全身タイツ。青を基調きちょうとした装備は、彼女の冷徹れいてつなキャラを色付けていた。



「それがたとえあなたであっても」



 ブルーは、やけにごついハンドガンのスライドを引いてから、ゆっくりと俺に銃口を向けた。



「どうして、おまえが」


「それは私のセリフよ。どうして悪の組織なんかに」



 悪の組織。彼女からすればそうだろう。黒を基調とした戦闘服。安っぽいドクロマークは、確かに悪の組織に寄せたよそおい。俺はさながら下っ端戦闘員だ。



「悪とはきらわれたものだな」


「だって悪でしょ。私の敵なんだから」


「意見が合わないだけだ」


「意見があるならちゃんとした場所で言えばいいじゃない。むりやりを通すなんて非道ひどうだわ」


「おまえらが話を聞かないから、こうするしかなかったんじゃないか」


怠慢たいまんだわ。他に方法はあったはずよ」


体制側たいせいがわに染まっちまったな」


「悪に染まるよりはマシでしょ」



 冷たい風の吹く人文棟じんぶんとうの屋上から、彼女は地上をあごで示す。



「あれが悪でなくてなんていうの?」


「救われている奴もいる」


「こんなことでいったい誰が救われるっていうの!」



 聞こえてくるのは銃声。どこかしこで上がるのは悲鳴と歓声。乱暴な光が現れては消え、戦場をいろどっている。



「今のおまえにはわからないさ」


「えぇ、わからないわ。あなたのことは今も昔も」



 それこそ、こっちのセリフだと俺は心底しんそこ思った。昔から彼女のことは理解できなかった。同じ人間とは思えない。種族から違うのではないかとすら思っていた。今もなお、こうしてわかり合えないのだから、きっとその感覚は間違っていなかった。


 どうすればよかったのだろう。


 神の悪戯いたずらとしか思えないこの筋書きにさからうことはできたのだろうか。仮に、正しい選択があったとして、俺はいつ間違えたのだろうか。大学に入学したとき? 秘密結社ラクダインに入ったとき? 彼女と再会したとき? それとも、もっと前?


 いずれにしても、もう間に合わない。


 ブルーは、俺に照準を合わせ、一呼吸おいてから、



「さよなら、好きだった人」



 トリガーを引いた。

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