第2話 見栄を張っている? いいえ、事実です エリザベット視点(1)


「あらあら、まあまあ。わたくしは今夜、大きな発見を致しました。あのエリザベット様は、見栄を張られる御方だったのですねぇ」


 いえ、まったく――。私がそう返答をした直後でした。ミレネア様はクスリと口元を緩め、上機嫌で笑い始めました。


「どんな時でも発言には一切の嘘がない、常に清く正しくある学院の花。そちらは、誇張だったのですのね。あの評判は、大きな誤りだったんですのねぇ」


 下がっていた目尻は更に下がってゆき、笑みの中には更に嘲りが含まれるようになりました。

 私はご希望通り、本心をお伝えしました。ですが、信じていただけなかったようですね。


「エリザベット様、嘘はいけませんわよぉ。素直に認めてくださいまし、負けを」

「ミレネア様、こちらは真実でございます。実際の気持ちを口にしており――」

「それもまた、嘘ですわね。……でしたら、仕方ありませんわ。わたくしがエリザベット様の内心を言い当てて差し上げますわ」


 彼女は私の言葉を遮り、大きく嘆息。たっぷりと呆れの息を吐いたあと、まじまじと私の顔を見つめました。


「学院時代はずっと格下で、地位も下なこんな女にあの方を奪われてしまっていただなんて……っ。悔しいっ、悔しい悔しいぃぃぃぃ……! と、心の中で歯切りしをされているんですわよね?」

「私は地位で評価をしませんし、…………。説明に必要なものですので、たぶんな失礼をお許しください」

「失礼? そちらは、なんなのでしょう?」

「実を言いますと私は、学院時代のミレネア様をあまり存じ上げておりません。そのため、そういった理由で悔しがることはないのですよ」


 かつて籍を置いていた王立・ベネレティス学院は人数が多く、所属するクラスが離れていたこと、直接お話しをした経験が一度もなかったことにより、情報が殆どありません。存じ上げているのはお顔とお名前程度ですので、当時の立ち位置を正確に把握できていないのです。


「そして、後半部分の『奪われる』なのですが。あの婚約が解消となったことで、悔しさが生まれることはありません。なぜなら――」

「なぜなら? なんですの? 言い訳と分かり切っていますが、一応お聞かせ願いますわ」

「……承知いたしました。お伝えいたします」


 このように何度も言葉を遮るのはマナー違反なのですが、それは今更ですね。ですので呆れる気持ちを抑え、続きをお伝えすることに致しました。


「かつての婚約が解消となっても、そのように感じない理由。それは、セヴラン・フィレーダ様に一切好意を抱いてはいなかったからなのですよ」

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