第4話 好きな人が、いる……? ドニ視点(1)

「新進気鋭のピアノ奏者、ルーフェ侯爵家のラファエル様。わたしはその方を、愛していますの」


 そ、んな……。その男は、連弾の相手……。

 シルヴィは、パートナーに恋をしていた……。


「貴方とリゼット様が交際を始めた直後に、とある夜会でご縁ができたんですの。そうしてピアノのお話をするようになって、ラファエル様のピアノ論には共感できる部分と刺激になる部分が沢山あって。自然と惹かれていって、初恋の人となったんですの」

「………………」

「だから、実はね。わたしが、ラファエル様に相応しい奏者になれたら――コンクールで最優秀賞、個人でも賞をいただけたら、想いを告げると決めていましたの」


 そのため睡眠時間を削って練習に励み、何度も何度も二人で会って練習をしていたらしい……。

 その結果、さっき最優秀賞と優秀賞に選ばれたから……。俺との約束が終わったら、会う約束をしていたらしい…………。


「ドニ、貴方のことは嫌いではないの。わたしは隣に居たい人がいるから、その気持ちに応えられないの。……応援までしてくれたリゼット様にも、申し訳ないのだけど……。頷けませんわ」

「そ、そんな……。しっ、シルヴィっ! そんなことを言わないでくれっ! この俺を選んでくれっ!!」


 首を左右に振る、彼女。それに対して俺も首を左右に振り、力強く自身の胸元に右手を添える。


「俺は誰よりもシルヴィを知っていてっ、だから誰よりもシルヴィを幸せにできるんだよっ!! なので実際に確認して欲しい!! とりあえず俺と交際をしてみてっ、確かめてみてくれ!! そうして万が一納得できないのであればっ、別れてくれていいから!! 俺との日々を体験してみてくれ!!」

「ドニ、ごめんなさい。それも、できませんわ」

「頼む!! それもっ、青空と一緒なんだよ!! ずっと傍に居たから俺の魅力が正しく見えていないだけっ!! 実際はあんな男なんかより遥かに優れていてっ、世界で一番シルヴィに幸せを届けられるんだよ!! 俺が言ったようにしてくれれば、それは真実だと必ずや理解でき――し、シルヴィ? どうしてしまったんだ……?」


 急に、怖い顔になってしまった。

 そんな表情をしたら、美しい顔が台無しじゃないか。どうしてしまったんだ……?

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