第4話 雪は溶け、再出発の朝日が照らす

『寒いわね。今朝は氷点下だったものね。帰ってお風呂入りたいわ。』

「そうだね。お風呂は全ての感情を忘れさせてくれる場所。昔付き合ってた彼氏のことも。そう、かつて私は言葉に表せない凄い恋をしてた。凄い恋愛をきっとしてたんだ。その時間は夢見心地のように、暖かく、時間を感じないほどにゆっくりと流れてたんだ。夢のような時間だった。だけど、夢は長続きしないから。いつの間にか、あの時感じた熱は冷めてたから。熱が冷め、想いも冷め、夢からも覚めたから。それでも、その楽しかった時間を忘れられず、お風呂に入るたびに思い出すんだ。まだ、私は夢の中にいるの?っと自分に問いかけ、既に出ている答えから目を背け、泣くんだ。私は一体なんだろ…。」

『長いわ!!!!!!!!』

「ちょっと!まだ話途中だよ!!」

『妄想でしょ?もう少しコンパクトにしなさいよ。』

「風呂場で涙を枯らした夜もあったぜ。」

『妄想って所は否定しないのね。』

「夜で涙を枯らした風呂場もあったぜ。」

『文章が壊れたわね。何よ夜で涙を枯らすって。』

「注文が多いんだよちゃん美優は!宮沢賢治かっ!」

『分かりづらいツッコミね。注文の多い料理店でしょ宮沢賢治は!』

「ちゃん美優が帰ってお風呂に入りたいとか寂しいこと言うんだもん。私が居るでしょ!」

『妄想で凍えそうなのよ。』

「妄想じゃないもん!居たもん!あの人のことを今でも忘れない。それ程の恋をしてたんだ。どこまでも限りなく 降りつもる雪と

あなたへの想い〜。」

『後半、DEPARTURESのサビじゃない?』

「少しでも伝えたくて 届けたくて そばにいてほしくて〜♫」

『熱唱してるとこ悪いけど、帰っても良い?』

「ちゃん美優ーー!待って!悪かったって!ほら、一発ギャグするから許して!」

『一発ギャグしても許さないから帰らせて。』

「一発ギャグやりまぁーす。道路工事で地盤をドリルではつるレディーガガ。」

『おい、話聞きなさい。』

「レディーガガガガガガガガガガッ!!!!!!!」

『よし、射殺しましょ。』

「なんでよおおおお!!」

『2度とやらないで。今世でも。来世でも。』

「来世でもか!」

『もし今世でまたやったら、奈緒の輪廻は今世でおしまいよ。』

「こっわ!そんな重罪なのか!?」

『はぁー、寒い。おうち帰る。』

「待ってよ!私と喋ろう!私と話せば暖かくなるよ!」

『ならないわよ。帰るわ。』

「待ってよ!私と喋ろう!私と話せば暖かくなるよ!」

『ならないわよ。帰るわ。』

「待ってよ!私と喋ろう!私と話せば暖かくなるよ!」

『ならないわよ。って何回このやり取りするのよ!RPGの村人かっ!』

「待ってよ!私と喋ろう!私と話せば暖かくなるよ!」

『ならないわよ。帰るわ。』

「待ってよ!私と喋ろう!私と話せば暖かくなるよ!」

『ってもういいわよ!!!!!吉本新喜劇なの!!?すっちー座長と吉田さんの乳首ドリルすなー、みたいになってるじゃない。』

「爪先顎脇やめろ!ドリル…。ドリル…。レディーガガガガガガガガガガッッ!!!!」

『ドリル使うレディーガガの真似は止めろって言ったわよね。』

「つい勢いで。すまぬ。」

『奈緒を殺して私も死ぬわ。』

「一体ちゃん美優の何がそこまで突き動かすの???」

『最近私の家の近くで夜間の道路工事が始まってね。うるさくて寝不足なのよ。』

「あ、怒ってた所は道路工事の方なんだ。」

『だから、最近はお風呂で音楽聴いてリラックスして、そのままイヤホン付けて寝てるわ。』

「へえー。何を聴いて寝るの?」

『……。最近はDEPARTURESよ。』

「結局ちゃん美優もglobeじゃんか!」

『globe聴かない人は乙女失格よ。』

「でも、小室哲哉さんとKEIKOさんはもう…。どこまでも限りなく 降りつもる雪と

あなたへの想い〜。」

『皮肉で歌わないでよ。小室さんへの想いは雪解けのように消えたのよ。』

「そして、お風呂場でまた思い出すんだ。あの夢のような日々を。まだ私は夢の中にいるの?っと自分に問いかけ…。」

『あの妄想、KEIKOさんの妄想だったの!?』

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