第20話 紅月-20

 それにずっと後になって知ったことだけど、ファントムは、女でなければ使えないらしいの。


 ―――どうして?

 男の筋肉だと堅すぎて、腱が切れたり、筋肉が断裂したりするらしいの。女の柔らかな筋肉を限界まで鍛えて、気を扱えて初めて完成するものということよ。


 ―――へぇ~。それで、朝夢見とか未来とか女の子ばかりなんだ。

 それと、小さいころから鍛えられていることも条件。小さいころから武道なんかで鍛えている子は、筋肉が発達しているし腱も強くなっているからトレーニングにも耐えられるの。そうでなければ、途中のトレーニングで、ブチッ!


 ―――結構、制約が多いもんなんだな。

 あたしもしばらくはファントムを使えなかったわ。最初の一回は本当に偶然だったのね。後は、なかなか決まらなくて、普通のボディブローみたいなのばっかり。気を扱うのが難しいのよ。


 ―――え?ずっと、ケンカしてたの?

 降りかかる火の粉は払わなきゃ仕方ないのよ。ファントム・レディだからって避けてくれる人ばかりじゃないのよ。ファントム・レディなら、ということで挑戦してくる連中もいるのよ。


 ―――そういや朝夢見がそうだったよな。それで、転校してきたんだよな。

 幸い、タイマンばっかりだったから、扱いやすかったけど、それでも、負けられないというプレッシャーは大きかったわ。


 ―――最強無敗の伝説?

 それもあるけど、一度負ければ、そのままリンチに会うかもしれないから。やっぱり、虎視眈々と狙っているような雰囲気は感じていたの。秋葉さんからも、リンチや闇討ちには注意するように言われてたからね。


 ―――面倒だったんだなぁ。でも、野球はどうだったの?

 すごく上手になってたわ、一年の秋くらいには。レギュラーで公式戦にも出たの。


 ―――お兄ちゃんと対決できたの?

 んん。残念ながら、お兄ちゃんは、緑ヶ丘でしょ。一回戦負け。こっちは、準優勝まで行ったのに。


 ―――次の年はどうだったの?

 あたしとお兄ちゃんは二つ違いだから、次の年はもうお兄ちゃんは高校へ行ってたわ。あたしたちは、市大会優勝。県大会も準優勝。


 ―――先生のおかげ?

 自分でそんなこと言えないわ。でも、練習を熱心にやってたから、みんな上手になっててね、田川君とか川村さんとか、本当に上手だった。

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