第2話 登場人物に『題名を変えろ』って言われた件

 ……ホッペをつねると、痛い。 


 夢じゃ無いのは確実だ。


 ……だが、今迄の経験からして、箱を開けて中を覗くと、なんか無駄な物が入っていて、そのせいで何らかのハプニングに見舞われ、今晩は眠なくなる……。  ……そして、明日学校で居眠りをして先生に怒られる……ってのが今迄のパターンだ。


 しかも、今日は天体ショーは無いから、言い訳すら出来ない……。


 よし! 寝よう!


 ……例の拾った缶から、こちらを興味深げに見ていた『ナメくん』(家族間で、いつの間にか浸透していた、この子の呼び名)に『おやすみ』の挨拶をして、その日はぐっすりと眠った。


 翌朝……


 少し早目に目が覚めたので、例の『何とか皇女』から届いた箱を開けてみた。


 ……そこには一通の手紙と、光の砂が入った小瓶、そして『取扱説明書』が入っていた。


『拝啓 木枯らしが吹きすさぶ頃となりましたが、輪音りんね 一生いっせい様に於かれましてはご健勝の由、誠に大慶至極に存じ上げます』


 ……ふむ……達筆だ。 やたら堅苦しいが。


『さて、先日の双子座流星群ご観覧の際、輪音様に置かれましては、有史以来、初めて『流れ星が消える前に3回願い事を唱える』という偉業を成し遂げられ、関係者一同、驚愕致しました。 それにも関わらず、わたくしの歩行速度が遅かった事が原因で、当日は輪音様のご期待に添えない結果となり、誠に申し訳御座いませんでした。 平身低頭にて、お詫び申し上げます』


 ……自覚してたんだな。


『このたび、私共の必死の調査の結果、輪音様の現住所を割り出す事に成功致しました。 早々に商品発送の準備を進めておりましたが……既に、商品は輪音様のお手元に届いているようでずは安堵致しました。 ……念の為、商品の『予備』と、その『取扱説明書』をご送付させて頂きました。 併せてお納め頂きますよう、よしなにお願い申し上げます』


 ……既に商品が届いてる……って!?


 じゃあ、やっぱり『ナメくん』が願い事を叶える為の商品なんだ! まだ寝てるようだが……。


 確かに、小瓶に入っている、商品の『予備』って、この前の『一握の光る砂』のようだった。


『輪音様の人生が、より善きものになりますよう、私共わたくしども一同、心よりお祈り申し上げます 敬具』


 ……どうでも良いが、この『双子座流星帝国』とやらの『皇女』……何処どこで日本語習ったんだろう?


 ……ん? 追伸がある。


『なお、今回のストーリーより、本編の方向性が変化する事が予想されます。 もし可能で御座いましたら、誠にお手数とは存じますが、題名をご推敲戴き、ご変更戴きますよう、平に、おんねがい申し上げたてまつります』


 ……


 …………。


 ……それに関しては……ちょっと様子見だな……。

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