冒険者ギルド都市パレト・リスコ

 昼食を食べ終えたピクノス達三名はエピアの自家用車に乗り込み、このスボクの中心に存在する冒険者達が集い、そして冒険者ギルドの中枢となる本部ビルが存在するパレト・リスコへと向かった。

 ピクノスが揺れる車中の中から外を眺め見ると、そこには長閑な田園風景を広がっていた。

 先程待ていた地域の境界に存在していた街の雑踏は一切感じない、実に明媚な風景であった。

 エピアは運転をしながらピクノス達と話をしている。

「冒険者ギルドはその役割、そして現在の複雑化し機能性を求めて作られた各国の行政システムに対応する為に今の在り方となっていますが、元はルードゥス様が作られて組織という側面の為、非常に宗教色が強い組織となっています。

 ですが、先程説明をしたアーニグマ教やディエヒーリシ教に比べると、宗教としての役割は希薄と言っても良いでしょう。

 実際私はルードゥス様の巫女としての教養を治めていますが、普段は冒険者ギルドの事務員として活動をしていますしね」

 ピクノスはエピアが語る話を真剣に聞いていたが、それと比較してミニマは実に暇そうにピクノスの肩の上で欠伸をしている。

 こういった話しをしながら車を走らせる事凡そ三十分、パレト・リスコ郊外の縁が見える位置まで到達する見え始めてくる巨大な建造物。

 それこそがこのスボクの中心であり、それと同時に冒険者ギルドの中枢。

 その身にルードゥスが齎した神物を内包する冒険者ギルド本部ビルであった。

「見えてきましたね。

 今正面にあるのがパレト・リスコのランドマーク、冒険者ギルド本部ビルです」

 高さ凡そ三十五m、幅二㎞になる巨大な建造物がそこに聳え立っていた。

「あの冒険者本部ビルは、ルードゥス様がこの地に配した神物、大迷宮「ペリペティア・ミハニミズモス」を囲うように建造された建物になります。

 冒険者ギルドの使命として、この大迷宮の攻略が掲げられており、冒険者とはこの大迷宮を攻略する危険を冒すものという意味となります。

 また、この大迷宮「ペリペティア・ミハニミズモス」の中枢には、冒険者ギルドカードを初めとした、冒険者ギルドが運営・管理する為の様々な機構が納められていると伝えられています。

 こういった理由から、ルードゥス様を信仰する方々にとって、この地は信仰上非常に重要な地となっています。

 その為、複雑な歴史的経緯を経たアーニグマ教とディエヒーリシ教の大聖堂がこの地に存在してしまっている理由にもなっています」

 そんな話しをしながらさらに進む事しばし、パレト・リスコの郊外へと彼等は到達した。

 豊かな自然は徐々に減り都市部へと近づいていく。

 そうすると遠くからも見えていた冒険者本部ビルの威容が、圧力が増していった。

「まずは冒険者ギルド本部行きましょう。

 ギルドの行政の中心地、そして信仰上重要な場所でもありますが、周辺は観光地化されてもいますので、色々と楽しめると思いますよ?」


 そこに存在するのは圧倒的な質量を誇る建造物。

 だがこれはmその中に存在する神物…大迷宮「ペリペティア・ミハニミズモス」に張り付くように建造された籠のような物。

 その籠の一辺一角、観光地され商業施設が周辺を賑やかす場所を冷やかす三名の姿があった。

 そんな彼等の周りは人、人、人。

 観光地と愉しむ人、巡礼を行う人、迷宮を攻略する人。

 様々な用件で、様々な身なりで、この地を満たす人々がそこには居た。

 冒険者本部ビル、ここはそういった人々に解放される各地区が存在した。

 大迷宮「ペリペティア・ミハニミズモス」眺め観る為の場所、大迷宮「ペリペティア・ミハニミズモス」に信仰を捧げる為の場所、大迷宮「ペリペティア・ミハニミズモス」の攻略へ向かう為の場所。

 そして、冒険者ギルドの行政能力の中心地、当代のギルドマスターが居る場所。

 様々な人々がここには集っていた。


「さて、すこし見て回ってみましたが愉しんで貰えましたか?」

「ええ、本当に凄い光景ですね」

 と答えながら、ピクノスは今まで見てきた光景を反芻する。

 様々な人々…と言っても、本当に色々な人がいた。

 ヒューマン、獣人、人獣、精霊種、妖精種。

 人型もいれば、獣に近いシルエットを持ちぱっと見では人…知的人種と判断出来ないような人もいた。

 そして、エルフやドワーフ等といった精霊種等から、ゴブリンやコボルド等の妖精種。

 そして、そんな彼等に時折付き添う光、精霊と呼ばれる存在だ。

 基本的に精霊の多くは特定の形を持たない光のような存在で、色によって個性が見て取れる。

 ごく偶に、形を持った精霊もいたが、そんな精霊も人型から獣型まで様々いた。

 さて、ここで一つ説明をしておこう。

 この世界に於ける幻精という存在について。

 今ここにいる幻精ミニマという存在がどの様な存在であるかだ。

 幻精、それは幻の精霊。

 ルードゥスの眷属の事を指す。

 過去ルードゥスが積極的にこの地で活動を行っていた太古の時代であれば、よく見かける存在であったのだが、現在ルードゥスは積極的な活動を行わず、地上の事は地上で生活を営む者達に任せ、自分はこの世界を管理する事のみを行っている。

 さらに、話しを続ける為に精霊の話をしよう。

 精霊とは、この惑星ハールトスに存在する属性エネルギーが纏まり意識を持った者。

 精霊の多くはエネルギーが纏まった光そのものといった存在なのだが、永い年月の末に形を持つようになる精霊も存在する。

 この様な存在は希ではあるのだが、このハールトス全体を巡れば見つける事自体はそれ程難しくない。

 だが、ミニマは違う。

 ミニマは幻精、ルードゥスの眷属。

 見る人が見なければ人の形を持つに至った、成長した精霊にしか見えない。

 だが、逆に言えば、見る人が見れば精霊では無く幻精であると言う事は一目瞭然であるのだ。

 そして、ここは様々な人々が集う場所。

 さらにいえば宗教的に非常に重要な場所で、巡礼地の一つとして最も認知されている場所。

 その様な場所の為、ミニマが精霊では無く幻精であると見抜く者がいた。

 

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