チュートリアル

「はーいようこそ!チュートリアルの時間よ」

 唐突に声を掛けられやや困惑しながらも周囲を見る、自分に対する事柄をほぼ全ての記憶をなくした彼。

 そんな彼は周囲を軽く見回しつつ目の前の小さな存在を認識した。

 ここは閉ざされた空間。

 彼が惑星ハールトスに敷かれている理を学ぶ場所として、ルードゥスが用意したチュートリアル空間。

 軽く運動するに問題内程度の広さを持った小さな世界。

「まずは私の名前から、私は幻精げんせいのミニマよ!

 よろしくね。

 あなたの名前は?なんていうのかしら?」

 彼は考える、だが、自分の名前が思い出せなかった。

「名前か…実はその辺りの記憶を無くしてしまって」

「あら?そうなの…

 じゃ!私があなたに名前を付けてあげる。

 そうね、…ピクノス、ピクノス!

 そう、あなたの名前はピクノスなの、いいこと!?」

 由来も解らぬ名前を突如与えられ困惑しつつも、状況が状況な為に受け入れる彼ピクノス。

「有り難う、良い名前だね」

「そうよね!

 じゃ、話しを進めましょ!

 まずは基本的な所からよ!」

 元気いっぱい声を上げ、説明をし始めるミニマ。

「まずはステータスについて。

 ステータスはルードゥス様がこの惑星に与えた奇跡!

 その人の能力の程度をある程度決めて、みんなに目に見える形で数値化した物なの。

 あなたにもステータスは既にあたえられているわ。

 まずはステータスオープンと考えてみて、もしそれで出ないようだったら口に出してみるのよ。

 そして、慣れてくればステータスオープンと考えなくても、何となくで出来る様になるからね」


ステータス

HP 32

ST 32

MP 32

攻撃力 32

防御力 32

魔攻撃力 32

魔防御力 32

回避力 32

命中力 32

種族レベル

ヒューマン 1

スキルレベル

ステータスポイント上昇 0

スキルポイント上昇 0

ステータスポイント 1

スキルポイント 0


「自分のステータスは見えたかしら?」

「見えたよ」

 ピクノスは表示されたステータスに視線を遣りながらミニマに言葉を返す。

「じゃ、説明するわね!

 まずはステータスそれぞれの数値について。

 ここの表示されている数値はHPならHPの評価値。

 実際のHPの数値とは違う物よ。

 これはルードゥス様の意向でこの様に表現されているわ。

 それぞれのステータスは呼んで字の如しだがら、説明を省くわね。

 次に種族レベル。

 これはあなたの種族のレベルが表示されていて、このレベルはあなたのステータスに影響を与えるわ。

 そして、スキルレベルはあなたが保有しているスキル。

 あなたはルードゥス様から二つのスキルを授けられているの。

 この二つはそれぞれ、ステータスを上昇させる為のポイント獲得量を上昇させるスキルと、スキルポイントを上昇させるポイント獲得量を上昇させるスキル。

 因みに、スキルポイントはスキルだけではなく、種族スキルを上昇させる為にもつかうわ。

 そして、それぞれのポイントはレベルを上げることで獲得出来るの。

 レベルの上げ方は色々あって、いろんな事を経験することをオススメするわ。

 ここまではいいかしら?」

 コクリと相槌を打ちながらピクノスは一言。

「大丈夫かな」

「じゃ、次ね。

 種族レベルやスキルレベルの効果についてよ。

 そうね、ヒューマンの効果を知りたいと思ってみて」


 ヒューマン

 各種ステータスが平均的に上昇する種族


「みえたかしら?」

「見えたよ」

「いま見えているように言葉で説明が為されるわ。

 効果量に関しては記されないの。

 これもルードゥス様のお考えよ。

 これがあなたのステータス、能力に関しての説明。

 何か質問はあるかしら?」

「今思いつくようなことはないかな」

「なら、次の説明に行くわね。

 あっちを見てみて」

 ミニマの小さい指で、指し示された先には人影が存在していた。

「ルードゥス様の管理されるこの星ハールトスには、様々な種族がいるわ。

 あなたと同じヒューマン、それからビーストマン、エルフにドワーフ等の主要な種族から、竜人等の稀少な種族。

 さらにはモンスターに属しながらも、コミュケーション能力を獲得している種族まで様々よ。

 だから、これから向かう先で見たこともない種族がいても驚かないように。

 良いわね?」

「分かったよ」

「とはいえ、色々な種族がいるから色々と問題があるわ。

 その辺りのことは実際に体験してみて憶えていきましょう。

 後は、この世界の移動に関する事を説明するだけなんだけど、その前に軽く今の身体の状態を確かめてはどう?」

「そうだね、貰ったばかりの身体だけど、特に問題を感じてはいないけど、ちょっと運動してみるよ」

「あっ、それと今持っているポイントを使うには、使いポイントと意識して、使いたい物、種族なら種族、スキルならスキルをそれぞれ意識するだけで良いわ。

そして、ステータスポイントも同じ感覚でそれぞれのステータスに使えるわ。

 でも、気を付けて。

 一度使用されたポイントを元の状態に戻せないから」


 ピクノスは軽く運動を行った。

 ジョギング感覚でのランニングから全力疾走。

 柔軟体操に自重を使った筋力トレーニング等、一通りを熟していった。

 そうして、幾許か運動をした後、軽く息が上がり心拍数も上がっていた状態から、呼吸を使って落ち着かせると、その様子を何が楽しいのかニコニコとしながら眺めていたミニマへと声を掛けた。


「じゃ、最後の説明よ。

 最後はこの世界での移動に関してと、それに伴う世界の構造の話し。

 ルードゥス様はこの世界の各地域を空間的に断絶させて管理をしているわ。

 そして、その断絶した各地域に門を設置して、その門を通過することで隣り合った地域に移動出来るようにしているの。

 今あなたの目の前に存在するこの門のようにね」

 ミニマはピクノスに声を掛けられた後、今目の前にある門の前に案内してから説明を始めていた。

「ただ、この門は通常の門よりもかなり小さい規模なの。

 この小さなチュートリアル専用の門だからね。

 実際にはもっと巨大な門、天をつく程の大きさの巨大な門が、隣り合って断絶した空間に置かれているの」

 門の方に意識を向けつつ説明をしていたミニマはピクノスの方に向き直りつつさらに言葉を重ねる。

「これで、チュートリアルは終わり。

 後は実際に色々なことを経験しましょ。

 私も一緒に居てあげるから安心して。」

 そう言いながらピクノスの肩にふわりと腰を下ろすミニマ。

 ピクノスはミニマの体重を感じず、ただ、そこに居るという感覚だけがある、何とも不可思議で、初めての感覚に戸惑いながらも返事をする。

「そうなのかい?

 今後も色々と教えてくれる?」

「もちろんよ!

 色々とルードゥス様と約束していることがあるけど、その約束は破らない範囲で助けで上げるわ」

 足をパタパタさせつつ門を指さし。

「さあ、行きましょう!」

 ピクノスはミニマに急かされ門を通過していく。

「と、その前に、この境界って触っても平気なのか?」

「…触っても平気よ、触ってみれば?」

 手鼻を挫かれちょっと臍を曲げてもちゃんと答えるミニマ。

 それを横目に見ながら、ミニマのテンションの変化にどうしようかと思いながらも、透明の壁の様なものが存在している場所へと近づいていくピクノス。

 門の直ぐ側の壁に軽く手を触れると、そこには確かに壁が存在する事が分かる。

 壁と表現したが、その感触は何とも言えないもので、物体として壁があるのでは無く、向こうに行けないという感触がある場所という感じがするものだった。

「なる程…」

 一言零しながら門へと足を向けるピクノス。

 と同時にミニマの脇腹を擽る。

「ちょっといきなり何をするのよ!」

 と、起こってみせるが、ピクノスがフォローのつもりで行動を起したものだと言うことを察し、満更でもない模様。

 幼精という性質は自分の置かれている環境や、周囲の人の感情に敏感な為、非常に感受性が高い。その為、不器用ながらも行動を起せば伝わるものは確かにあった。

 そんなことをしながら、ピクノスとミニマは門を通り新たな地域へと向かう。

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