第7-3話 「『女子高生 誕生日 祝い方』」

 帰宅してから麻薙の誕生日をどう祝うのか考えていた俺だったが、同級生女子の誕生日を一度も祝ったことのない俺に良いアイデアなど思い付くはずもなく、時間だけが過ぎていった。


 結局寝る準備をする時間になってもどうするか決めることができなかったので、自室のベッドに寝転がり誕生日の祝い方について検索してみることにした。


『女子高生 誕生日 祝い方』


 この検索の仕方、リア充高校生なら絶対しないよな。

 女子高生と関係を持ってしまった中年男性の調べ方だろこれ。


 そう自分にツッコミながらも検索を続けると、なぜかネットにはサプライズという言葉が飛び交っている。


 麻薙の誕生日を祝うのをサプライズにするつもりなんて微塵もなかったが、もしかするとサプライズにした方が喜ぶのか?


 確かに子供の頃クリスマスの朝に枕元にプレゼントが置かれているというサプライズに毎年狂喜乱舞していたことを考えると、やはりサプライズは祝われる側からするとかなり嬉しいことなのだろう。


 他にも、「学校でお祝い‼︎」なんて書かれていたりするが、流石にそれはハードルが高い。


 大まかな方向性としてサプライズで誕生日を祝うことだけは決まりそうだな。


 とりあえず麻薙にラインで日曜日の予定を聞いておかないと。

 サプライズを考えたは良いが、麻薙の予定が空いていませんでしたでは意味がなくなってしまう。


 そう考えた俺はすぐにラインをした。


『次の日曜日って暇してないか?』20:48


 送信ボタンを押してから、俺はもしかすると誘い方を間違えたのではないか? と不安になった。


 例えば、「次の日曜日、夜ご飯でも食いに行かないか?」と誘う理由を記載していれば相手も警戒することないだろうが、「暇してないか?」と訊いてしまうと、相手からすれば何に付き合わされるのだろうかと警戒してしまう。


 とはいえ、サプライズをするならもちろん内容なんて伝えられるはずがないし……。


『私に友達が少ないの知ってて嫌味でも言ってるのかしら』20:48


 そんなことに頭を抱えていると、麻薙から予想より早く返信が来た。


 好きな相手とラインをするときは返信するまでの時間でさえ駆け引きをしなければならないと聞くが、麻薙が俺に対して駆け引きをするつもりなんて一切なさそうだ。


 少し悲しくもあるが、その麻薙らしい返答に安心感を覚えた。


『素直に暇してるっていえば良いだろ』20:49


『じゃあ日曜日、うちで待ってるから』20:49


『迎えに行くとは一言も言ってないんだが、、、』

 20:49


『それじゃあもう寝るから。おやすみなさい』20:50


 結局ラインでも俺は麻薙にペースを握られ、日曜日は麻薙を家まで迎えに行くことになってしまった。


 祝い方についてもサプライズという方向性しか決まらず、ラインでも麻薙に主導権を握られてしまった俺だったが、日曜日に予定を取り付けられたことを喜ぶことにしよう。

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