おまけ/???月???日

 コンコンコンと控えめにドアノッカーが鳴る音がして、わたしは玄関に向かった。

 今日は誰とも約束なんてしていなかったはずだけど……不思議に思いながら重たい木の扉を開く。

 そこには、見覚えのあるおかっぱ頭の少年が立っていた。


「ざしきわらしくん!?」

「どこの家もぼくを閉じ込めそうでお世話になれませんでした……サンタさんが良ければ、家に住まわせてください……」


 完全にトラウマになってしまったのだろう。

 顔色の悪い少年を慌てて家の中に案内した。

 ソファに座らせ、ホットチョコレートを作ってあげる。


 湯気の立つホットチョコレートを冷ましながら飲みきる頃には、死人のようだった顔色もだいぶ元に戻っていた。


「それにしても、よくここが分かりましたねぇ」

「お手紙出すって言ってたお家で調べました」

「あぁ、なるほど!」


 家の中の物が気になるのか、少年はキョロキョロと周囲を見回している。

 その姿がなんだか微笑ましくて、わたしはクスリと笑ってしまった。


「このお家、気に入りました?」

「あっ、すみません。知識としては知っていても見たことない物ばかりだったので」

「いくらでも見てください! キミが気に入ってくれたなら、いつまでだってここに居てくれていいんですよ」

「本当ですか!」

「もちろん!」


 基本的にクリスマスシーズン以外は好きに修行をするくらいで仕事はない。

 独りで暮らすには広すぎる家だったが、彼がいるなら楽しく過ごせるだろう。


 まるでわたしまでクリスマスプレゼントをもらってしまったようだ。


 わたしはこれからの新しい日常に思いを馳せ、小さく笑った。





【了】

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慌てん坊のサンタクロースとぼく 南雲 皋 @nagumo-satsuki

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