2#愛妻が風船追いかけて行方不明!!

 その日の昼間を過ぎた頃だった。



 ふうわり・・・



 ・・・風船・・・?


 雌トラのオマは、ジャングルの木々の隙間から降りてきた大きな青い風船に見とれていた。


 「風船さん・・・風船さん・・・聞いてる?」


 大きな青い風船は、雌トラのオマの周りをふわふわと浮いてまるで一緒に遊びたさげに、飛び回っていた。


 「風船さん・・・風船さん・・・どこから来たの?」


 大きな青い風船は、ジャングルにそよぐそよ風に煽られて雌トラのオマにお辞儀をするように揺れた。


 風船のゴムの香ばしいい匂いが、雌トラのオマのピンク色の団子鼻の孔の中に吸い込まれ嗅がせた。


 「ん?なあに?一緒に遊びたいの?私と?」


 またそよ風が吹いてきて、煽られ青い大きな風船をお辞儀させた。


 「え?ホント?私と遊びたいのね!私!ゴム風船大好きなの!膨らますのも!突くのも!萎ますのも!割るのも・・・あ、僻んだ?めんごめんご!」


 雌トラのオマは、しばし青い大きな風船にみとれた。


 大きな青い風船の中のヘリウムガスで膨らんだビードロの様な体を通して透き通る、この煌めいた世界に飛び込みたくなった。


 ・・・風船・・・



 びゆうううぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーー・・・・・・



 突然、突風が吹いてきた。



 ふうわり・・・



 大きな青い風船が、突風に煽られて吹き飛ばされるようにジャングルの木々の隙間を縫って飛んで行ってしまった。


 「あーっ!!待ってぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!風船待ってぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!一緒に遊ぼうよぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!」


 雌トラのオマは、慌ててどこかともなく飛んで行った大きな青い風船を追いかけていった。


 「待ってぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!風船待ってぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!ああん!!待ってぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!風船待ってぇぇぇぇぇーーーーーーーー!」




 ・・・・・・


 ・・・・・・



 ぱぁん!!

 

 すっかり眠りこけていた雄トラのショジは、顔より大きく膨らんでいた鼻提灯が割れ拍子に目を覚ました。


 「はっ!!オマは?」


 傍らで寝ていた筈の許嫁のオマが居なくなっている事に気付いた時には、既に遅かった。


 「オマ・・・何処に行っちゃたんだ?!」


 雄トラのショジは、ピンク色の団子鼻を突きだして周りをクンカクンカと嗅いだ。


 「狩りにいったんだろ。直ぐに獲物担いで帰ってくるさ・・・」


 しかし、待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど待てど、許嫁の雌トラのオマは帰って来なかった。


 「もう我慢できないっ!!オマ・・・!!愛しのオマ・・・!!何処へ行ったんだ!!」


 遂に雄トラのショジは寝床から飛びだして、何処へと消えた雌トラのオマを探しに出かけた。


 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る