第10話



「えー!! 冗談でしょ、ママ! そりゃ長い時間お店開けられなかったけど、テラだって悪気があって、閉じこもってたわけじゃないのよ?」


 ウズメが涙目で訴えた。


「ママ、気は確かかい? テラを辞めさせて店のNo.1になるなんて、アタシ嫌だよ!」


 トキが不機嫌そうにそっぽを向く。実際はカネミママの言動が気になって、そわそわしていた。


 そんな緊張の場を、カネミママの意表をつく一言が切り裂いた。


「あとね、スサオちゃんもクビ!」


「(全員)え!!!!!」


 これにはスサオ本人だけでなく、その場の全員が驚いた。最初に言葉を喋れたのは、意外にもテジオだった。


「マ、ママ。どうして兄貴がクビになるんすか?」


「馬鹿だからよ! そもそもスサオがテラちゃんみたいないい子を放っておいたから、こんな騒ぎになったんだ。そんな不真面目な男、私のお店に置いておけないね!」


「ママ……そんな! 私のせい。私のせいだから!」


 不安そうな顔で店長を見つめるテラ。まさか自分のせいでスサオが辞めさせられるとは、予想もしていなかった。


 そんなテラの願いを振り切るように、突然カネミママが笑い出した。


「ハハハ!! テラ、そんな顔をしなくていいよ! スサオちゃん……私の知り合いが島根県の方で、ある会社の社長をやってるの。『八俣卸ヤマタオロシ産業』っていう名前の小さな規模の会社。でもしっかりとした会社だよ。紹介してあげるから、そこでまっとうに正社員として働きな! 稼いだお金でテラちゃんをしっかり養って、幸せにしてあげるんだよ」


「……ママ!」


 ぽかんとするスサオの前で、テラの顔が喜びに輝いた。


「その代わり、たまには2人でうちのお店に顔を出しなさい。店の扉はいつでも開けておくからさ!」




(アマテラちゃん    おわり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る