第8話



「……」


 テラは何も言わず、ただ物悲しそうな目でスサオを見つめていた。


「ま、まさか! お前のこ、子供! お前……女だったのか!?」


「ねえ、スサオ。お願いだから。少し静かにして。この子、ぐっすり寝ているんだから」


 首をブンブンとふるスサオ。


「いや、そんなはずはない! ま、まさか前の彼氏との子供――痛てっ!」


「馬鹿なこと言うんじゃないよ!」


 カネミママの壮絶なツッコミがスサオの暴走を止めた。テラと目を合わせ、優しく語り始める。


「テラちゃん。私には事情が飲み込めてきたよ。その子はあの女の人の子だね?」


 黙ったままうなずくテラ。


「お母さん、この子はうちの店員がちゃんと預かっていたみたいだよ。さあ、抱いてあげな」


 その言葉に刺激され、堰を切ったように母親がテラのもとへ駆け出した。テラは子供を優しく――少し未練を残しつつ――母親のもとへと差し出した。


「マコちゃん! ごめんなさい!! あなたを育てていく自信がなくって……でも、わたし……わたし……二度とこんな真似はしない!!」


 母親がおいおいと涙して我が子を抱く様子を、カネミママ、トキ、ウズメ、テラが涙目で見つめている。


 スサオだけがひとり、この状況に困惑していた。


「な、なんで子供が? 母親? 意味わかんねえ!!!」


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