13−6

『〜いつもと同じ、可も無く不可も無く

如何にもフツーな生活態度が大人が満足安心するんだ……!』


この時ほど〜〜!

クリストファーは大袈裟でやたら目立つ、無駄に大きな戦車みたいな装甲の特殊車を有り難いと思った事は無かった


『矢でもてっぽーでもドントコイ!』


自身の王宮のプライベート空間に着くまで、広々とした革製のリクライニングシートに、傷ついたウィンストンを体をのびのび伸ばし寝かせた


「……」

「ごめん」

「ばーか」


見るからに酷くだるそうで、口数も少なかった

突っ込むことはおろか……軽く明るくふざける事すら最早しない


『これは本当にマズイかも知れない……!』

本当に様子がおかしい

クリストファーは生きた心地がしなかった


『彼の体は限界なんだーーー』

異常過ぎる危機的状況なのは子どもでも感じた


どうする?

サァどうする?


ーーー…そうだ……いくら何でも


あの外面の良い滅茶苦茶な暴力親父も、王族の住むプライベート空間までやってきて

”返せもどせ”ーーー

心の折れきっている息子を連れ出しには来ないだろう


『そう……いい考えがある!』

クリストファーは、そこでぴかっと閃いた


取りあえず今晩はーーー…!


「悪戯をしすぎで成績が下がったからと反省しました、もうしません

学年1秀才のウィンストンに、勉強を教えてもらいたいと懇願して今王宮に来ていただいています」


と…如何にもな、もっともらしい理由をつけて、彼の実家のお屋敷から『外泊』

 

『こうで無ければ認められない筈』のーー……

体裁を整えチャンとした、滅多に出来ない宿泊許可をクリストファーは取り付けた



『〜〜〜さあこれで大義名分が出来た

 やったぜ!!』


『……悪いのは秀才のウィンストンではなく

 ーーーろくでなしの僕なのだ』


とにかくウィンストンを帰宅させ、これ以上傷つく体をいじめるような孤独で……

1人ぼっちにしておくのはクリストファーは心情的にどうしても出来なかった


義を見て為ざるは勇無きなり

 

『…居ないよな?』

「〜何やってるんですか? クリス様?」


「うんちょっと……えへ〜……厨房に行くんだ!」


「そうですか〜…侍従長様でしたら 御母堂様の所です

今夜はお疲れで 

『もうお休みした』と伝えておきますね?」


「いいの?!」


「どうやらご一緒のご友人も<そのよう>で……? 

以上で差配は宜しいですね?」


「有り難う!!」

 

クリストファーは、顔をピカッと耀かす

幼い頃から王太子のガードを専任で勤めている、優しく賢い顔見知りの衛兵にお礼を言った


勝手知ったるなんとやら

ーー……

彼はこっそり目を盗み、厨房にスルッと忍び込んだ


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