7−6

その不気味な物の怪はクリストファー王太子にむかい、突然言葉を話し始めた


唇から紡ぎ出される言語は美しい滑らかな発音の連邦英語だった


「コロニーDー01から来日されました、クリストファー王太子様であらせられますね?」

 

?!……

思わず隙を突かれた感があった

それもその筈

まだうんと若い……!

 

野太い男の声では無かった事に驚いたのだ


しかもどう聞いても明らかに

高い波長をもつ未だ未だ子ども〜


やっとティーンエイジャーに差し掛かる世代特有の独特の澄んだ声だったのだ


おまけにそれも……

少女の声


……信じられない!!

こんな閉じられたもの悲しい場所に居る筈が無いのだ


ーーーやはり妖怪の仕業だとクリストファーは覚悟を決めた


「初めまして」


やはり聞き違えじゃ無いスッと流暢な連邦英語



「お会い出来まして嬉しく思います」

「……」


クリストファーは〜

そう言いながら如何にもサラリと躊躇いなくフードを取った人物の顔を見て


「!!」

 

今度こそ目玉がコロコロ…何処かに落ちて転がって行ってしまいそうだった


やはり声で想像の通りの年齢〜

掌で余裕で隠れてしまいそうな、人形のように整う小さな顔はどうみても10代半ば…

しいて言えば精々プラス1〜2年にしか思えない



クッキリとした切れ長の二重の瞼

縁を取り囲む、ゆらりと悩ましげに揺れる〜たっぷりした睫毛


コロニー都市Dー01で珍重され高額で取引される、高価な地球産の最高級黒真珠よりも更に艶のある瞳


高揚した薔薇色の頬

ぷるると形良く動く綺麗な唇

 

微かに覗く……白玉の歯


小さな顔


すんなりと長い手足


つまりーーーー極めて美しい

……どこもかしこも


重厚なグローブを嵌めているからわからないが、きっと防具に隠された指さえも美しいのだろう


すぅーーーっと接近…側による姿を見て確信に変わる


……これほどの東洋系黒髪の美少女を地球以外でも〜

今まで何処でも見た事が無かった



それが『城』〜シロと呼ばれ凶悪犯ばかりを収容したと内々で語られている……


〜分厚い極秘ベールの彼方の監獄を統べる最高責任者

〜特殊収容施設・所長


クリストファー王太子の『城主』

ーーーー『シロヌシ』との最初の奇跡の出会いだった



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