#4 陸と望来る海夜

──────── malaca q landの民泊施設で手当を受けるコーン。


看護師である望来が手当をしている。近くの椅子に座る陸来。


いまは腕に包帯を巻いている。船のガラスが割れた時、破片が刺さっているところもある。望来は丁寧に手当を施した。


〈望来〉さて! できた! 次は体ね、上脱いで


〈コーン〉わかった


そう言うと、上の服を脱ぐ。


体は血だらけになっている。切れた跡や昔の銃撃戦の跡などが体に付けられている。


その傷を見た陸来は話をする。


〈陸来〉君は何者なんだい? 随分と傷が多いね


〈コーン〉配送屋だ、船便のね


〈陸来〉ふーん、そうなんだ。かっこいいね


〈コーン〉かっこよくはない。命懸けな仕事だ


〈陸来〉そうだな、海は危険が付き物だ


〈望来〉おわった、安静にね


〈コーン〉ありがとう……


〈陸来〉なんか食べるかい?


〈コーン〉いや悪いがいま持ち合わせがない


〈陸来〉いやいいんだ、要らないよ


〈コーン〉は? 何考えてんだ?


〈陸来〉ただ手助けをと


〈コーン〉変わってるな君は


〈陸来〉よく言われる


陸来という男は今では珍しいボランティア精神溢れる男だ。それにこの地で民泊をするとは珍しい事。例えば有名なドミニカ共和国やABC諸島、キューバなら分かる。マラカ島はそんな有名な島ではない。そんな島で民泊、中々大した事をする。マラカ島は特に何も無い。だが、海は透き通るほどの綺麗さだ、感覚でいうとマイアミの海のようだ。浅瀬で亀が泳いでいる絵が浮かぶほどだ。


〈陸来〉食堂案内するよ


〈コーン〉ああ


コーンは陸来に着いて食堂に向かった。食堂はまだその時間になってないのか、だれも居ない。


〈陸来〉おばちゃん、1つ早めには作れる?


〈食堂のおばちゃん〉いいわよ、ちょっとまってな


おばちゃんは早速料理を作る。


〈陸来〉少し待っててくれ


〈コーン〉わかった


15分ほどでおばちゃんから料理が渡された。


コーンには初めてみる料理だった。


〈コーン〉コレハ、ナンテタベモノダ?


食堂のおばちゃんも日本人だったため、コーンはカタコトで話てしまう。


〈食堂のおばちゃん〉これはカツ丼よ


〈コーン〉カツ丼? ナンダソレ


〈食堂のおばちゃん〉まあ食べてみな


そう言われ、コーンはカツ丼を食べる。すごく美味しい。食べたことの無い味だった。コーンは改めて味の表現の難しさに気づく。

コーンはその美味しさに夢中になった。さっきまでの少し水っぽい乾パンとは大違いだ。


コーンは食べ終わると、時間を聞いた。近くにいた陸来は答えた。現在、夜に近い18時だ。


〈コーン〉そんな時間か、時間ないな。もう行かないと


〈陸来〉君はまだ無理だ、暫く安静にしないと!


〈コーン〉悪いが俺には時間がない、この恩恵は嬉しいがもう行くよ


〈陸来〉そうか


〈コーン〉ただ頼みがある、海にあった船を1隻貸してほしい。ここのだろ? おれはこの島からでてアルゼンチンに向かわないといけない


〈陸来〉いいよ、持っていきなよ。でもなんでアルゼンチン?


〈コーン〉いま仕事中でね、荷物を届けに。その途中、荒々しい波にやられた


〈陸来〉そうか、またどこかで


〈コーン〉ありがとう


そう言うと、コーンは自分のリュックを背負って、この民泊施設を出た。コーンのタラモア1010号から10分歩いたところに、小さめなボートがある。あの時島を歩いた時に見つけたものはそのボートだ。だが、まさか民泊施設のボートとは思いもよらなかった。


ボートのエンジンを付けるコーン。出発してすぐ海の夜の雰囲気に先程の言葉を思い返していた。


──────── コーンは陸来と望来にお礼を言った時、陸来はこう言った「あの船、生きてちゃんと返してくれよ」だそうだ。


それ言われた途端、コーンは少し笑ってしまった。


いま思えば本当に変わっている。なぜそんなに優しく出来るのか。


コーンはこの夜、暗い海のど真ん中で静かに深けていた。





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Corn Islands. コーン&ゼブラ Kohr.435円 @katumata

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