ビターバレンタインとスノーホワイト


 三月十四日。

 机の中にホワイトチョコが入っていた。


『ありがとう』とメッセージ付き。


 顔を上げると、片想い中の彼と目があって慌てて顔を背けた。

 心当たりはある。

 先月のバレンタイン、彼の机にカカオ100%のビターチョコを入れた。

『ビターが好きなら〜〜』と、包装紙にメッセージを書いて。

 悩んだ末、名前はかかなかった。臆病だから私は、自分から告白なんて怖いから。

 賭けに出た。

 どうかと思うけど、これくらいしか思いつかなくて。


 だから、見つけてくれて嬉しい。

 お返しまでくれるなんて。


「間違ってたら怖くて、声かけづらかったんだけど」


 頭上から降って来た声に顔をあげる。

 私の席の前に、彼がいた。


「やっぱり、そうだよな?」


 彼の手には、毎月発行される図書室便りと私が彼に贈ったチョコの包装紙。

 両方、私が書いたものだ。

 どちらも『おすゝめ』と繰り返しのすがゝになっている。


 甘ったるくて、頭が真っ白で、深く頷くと彼が照れたように笑った。

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400文字の恋愛小説 七種夏生(サエグサナツキ @taderaion

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