第13話 研ぎ澄まされた剣技

 第13話 研ぎ澄まされた剣技


 5月15日午後9時50分。月明かりが照らしている広い野原で、極魔獣と戦い始めて30分程攻防が続いていた。お互い攻めきれずに時間だけが過ぎて行った。


「・・くそ!こいつ全然倒れねえ!」


「・・・・はぁはぁ、Levelレベルはあっちの方が5は上のはずだからここまで戦える方が凄いよ。」


 リュールの言っていたLevelレベルの差は正しかったが少しだけ違った。それは3人のLevelレベルから対応出来ていただけだった。

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「オルフェウス、そろそろだぞ。早いとこ殺せよ。」


 通信が聞こえ、タイムリミットが近付いて来ている事にようやく気づいた。


「・・ッチ。後、2時間かよ教会の騎士ども以外としぶといな。」


 ぼそっと呟き、剣を構えた。そして、突然極魔獣に向かって全速力で走り出した。


「全員、突撃!怯まず進め!」

(これで必ず1人は死ぬな。)

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 一方その頃、リュール達はなんとか、まともに戦えてる状況になっていた。

2人の剣技、1人の魔法が当たるたびに再生していった。極魔獣もまた、何度も霧の刃を放ち、両足からのスタンプ攻撃も繰り出して行った。

 そして、刻一刻と終わりが見えてきた。


「セイ!・・どうだ?」


「・・・あいつの再生も遅くなってるし、傷も完璧に塞げてるわけではなさそうだよ。」


「お兄ちゃん達の剣技もしっかりと効いてるから。多分、後少しで倒せると思うよ。」


少し距離が空きお互いにどちらが先に動くか駆け引きを続けていると。


「・・ふぅ。なあ、リュールそろそろ5を使おうぜ。このままだとどっちが先に死ぬか分からねえぞ。」


「・・・・だよ。無理だよ!確実に倒せる自信がない!」


「はぁ?お前しか出来ないんだぞ!」


「・・・でも、もし削りきれなかったら!」


「そんな事はどうでもいい!その時は俺がトドメを指す!ここで躊躇って俺たちが死んだら、庇ってくれた先生を裏切ることになるぞ!」


「・・ほんと嫌なとこをついてくるよね。・・・はぁ〜やるしかないか。」


「頼むぞ。お前に懸かってるからな、この勝負。」


 磁槍剣じそうけんに隠された能力がある。それは相手の弱点にと言うものが付与されている。磁石で引き寄せ合うかのように弱点を斬り裂く事ができるのだ。


「ザザは少し離れててくれ。剣技に巻き込んでしまうから。リューラはあいつの足を水鏡で固定してくれ。」


「・・・わかった。頼むぞリュール。」


「わかったお兄ちゃん。タイミングは任せるよ。」


「ありがとう。カウント5・・4・・3・・2・・1。Go!」


「アクア・バインド!」


リューラが放ったアクア・バインドは霧の刃をも跳ね返し、狙い違わず命中し動きを止めた。


「ナイス!リューラ。これで決める!氷旋盤獄ひょうせんばんごく!」


磁槍剣じそうけんの能力とリュールの集中力が合わさり正確に弱点を突き、冷気をまとった15を叩き込んだ。


「・・うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 リュールの口から血を吐いてもなお、止まる事なく斬り刻んだ。彼を止める事はどんな者でも出来ないほど荒々しくも綺麗な剣技だった。

 そして、剣を握った右手と魔獣の左手がお互いの肩を刺し固まった。一瞬の静寂ののち、崩壊し始めたのは魔獣の方だった。


「graaaaaaaaaaaaa!」


奇怪な断末魔を出しながら完全に跡形もなく消えたのを見届けたリュールは、


「・・・ふぅ・・・終わったのか・・・よかっ・・」


崩れる様にその場に鈍い音を立てて倒れ込んだ。

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(・・っ。まじか、あいつ15を出せるのかよ。これで倒せたが、あいつも瀕死に近いだろうな。)

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(・・・凄い速い!バフを掛けてないのにバフがかかってる状態以上のスピードだった。けどお兄ちゃんはもう限界のはず。助けないと!)


「・・・・お兄ちゃん!待ってて今回復させるから!」


精一杯力を込めて回復魔法を施そうと唱えようと杖をかざし、


「ライフ・デュラビティーコード・エリア・トウ・レフト」


少しずつ傷を癒やして行ったが血の止まりは遅く、傷も完全に回復は出来なかった。

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