女の子になったと思ったら霊が見える様になった話

いぬまる

第1話 序

 ある森の中、秋になり日が沈むのが早まってきた季節の夕刻の事。森の中を歩くのに似合わぬ、綺麗でヒラヒラした服を着た少女が一人、森の出口へと歩いていた。


 彼女は何かに怯えているのか、手に持った鞄をぎゅっと握りしめ、息を潜める様にそろそろと進んでいる。


 風が吹き、木々がざわざわと揺れ葉がこすれあうと、少女は過剰なまでに驚き固まった。しかし何かを決心したのか、しっかりと前を見据えまた歩き出す。


 やがて森の出口が近いのか、木々が少なくなり、日の光も少し増え、少女はそれに安堵して胸に手を当て顔を下げ、ホッとため息を吐いた。


 気持ち足取りが軽くなった少女は、これ以上余計な事を考えないように、自分の足元だけを見て森を進んだ。するといよいよ日が落ちたてきたのか一気に辺りが暗くなった。


 少女の中に再び不安な気持ちが巻き起こり、森の出口はまだなのかと視線を上げると・・・。


「え?なんで・・・?」


 視線を上げた先には森の境界線があった。喜ぶべき事なのだろうが今は困惑の感情の方が強かった。何故なら・・・。


「まだ明るい・・・」


 森の外はまだ日の光が差していた。だが現在少女がいる場所は暗く日の光は無い。少女は何かを確かめる様に恐る恐る後ろを振り返る。


 振り返った先、森の奥はある一定の距離から先は何故かまだ光が差していた。何故か日の光りが届かず暗いのは少女の周りのみだった。


「ぅ・・・ぁ・・・」


 少女は気づいてはいけないことに気付いてしまった、そんな表情で顔色は真っ青になっていた。口からは言葉にならない音が漏れ出て、今にも気を失いそうだった。


 しかし、少女は感情に蓋をするように気持ちを押し殺し、森の出口へと視線を戻して歩みを再開させた。


 時々風が吹き森の木々等を揺らすが、今度は驚いて固まる事なく足を動かしていき、やがて森の境目、日の当たる場所へとたどり着きそのまま森の外へとでた。少女は止まることなく、そのまましばらくは歩き続けた。


 やがて森との距離が十分に開いた頃、少女は歩みを止め立ち止まった。そして恐る恐る振り返り森の上部へと目を向けた。


「・・・」


 何を見たのか、少女は声には出さなかったが、瞳孔は開き顔は青白を通り越し土気色にまでなり、明らかに怯えていた。


 少女は突如何かに気付いたようにハッとなり、ゆっくりと両手を上にあげてをした。そしてそのままゆっくりと両手を下ろして森へ背を向け、町の方へ歩き出した。


「本当に・・・なんでこんなことに・・・」


 少女・佐十優は泣きそうな顔でそう呟き、自分を取り巻く環境が変わってしまった日の事を思い出していた。



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