第35話 番外編 ある男の過去1

君を見ていた・・・

窓際に座る君

どんな女の子より可憐で・・・

どんな女のよりもおしとやかで・・・

高嶺の花だった俺にとって君はそう花だ。

学校が楽しいと感じたのは最近で

その学校を楽しくしてくれたのは君・・・・

特に話したことはないけど

一目見て君に・・・

君を好きになった。

物静かでクラスの女子ともそこまで話していない

きっと彼女はシャイなのだ。

風に髪がなびいた・・・

ああ、なんてきれいなんだろう・・・

絹のように滑らかでするっとしていて・・・

彼女にぴったりな黒髪・・・

触れてみたい・・・

髪の毛だけではなく

君に触れてみたい・・・・

きっと天にも届く

そんな気持ちになるっだろう。

あああ!!

なんてすてきなんだ!!!

あ!!こっちを見た!?

サ!!

目を伏せた。

見れない。

あんなきれいな瞳・・・

見つめることなんて・・・・

彼女もだけも

僕もシャイなんだ・・・

きっと気が合う

きっといろんなことがいっしょなはず・・・

いつかは・・・

いつかは話をしたい・・・

そしたらきっと彼女も僕のことをまた・・・

また見てくれる。

・・・・

このクラスになって本当に良かった

高校最後の一年がこのクラスで本当によかった

なにがよかったて?

そんなのは決まっている。

彼女がいることだ

このクラスの意味

いや

この学校の意味なんてそれしかない。

勉強なんて見ていれば頭に入ってくる

テストはそれを引き出して書くだけ・・・

なのにみんなは

「難しかった」とか・・・

「やばい」とか・・・

正直意味が分からない。

そして馬鹿ばかりだと思った。

しまいには最後の一年・・・

受験を控えてみんな必死になっている・・・

大学にいこうか働こうか・・・

ああでもない、こうでもない・・・

まったくもって落ち着きというものがない。

でも彼女は違った・・・

彼女はそんな中でも落ち着いていて・・・

おとなしくて・・・

清楚で・・・

本当に全員彼女の行動を見習って生きればいい

本気で思った。

彼女は女子大学に行くみたいだ・・・

それもとても彼女らしい考えで

僕はさらに彼女が好きになった。

だから僕も大学に行くことにした。

同じ大学にいけないのはすこし残念だが・・・

それでも大学というくくりは同じ・・・

違う大学でも・・・・

ん?

あいつは・・・

彼女に一人の男子が近づいて話しかけている・・・

あいつはこのクラスで一番落ち着きがない

やかましい人間・・・

そんな奴が彼女に話しかけるなんて・・・

身の程をしればいいのに!!

でも

「・・・・・」

コクコク

と彼女は黙って話を聞くだけ

なにか言われているみたいだけど・・・

彼女はただうなずくだけであいつが去るとまた

いつものようにおとなしくスッとしている。

きっと彼女もあいつが嫌いに違いない。

だからあんなにつまらなそうなのだ。

きっと僕ならそんなことはない。

彼女とは運命で結ばれている。

きっと話題も話も尽きることなく

彼女は笑顔で僕を見るだろう。

はやく・・・

はやく・・・彼女に近づきたいな・・・

そして彼女の笑顔を間近でみたい。

どうすればいいのだろ??

彼女に近づくには・・・

きっとあいつみたいにズカズカと遠慮なしに行ったら

シャイな彼女だからきっと驚いてしまう。

それに僕もそんなことはできない。

あいつみたいな無粋な男だと思われたくない。

もっとかっこよく

それでいて彼女のように

優雅に清楚に華麗さを忘れてはいけない。

しっかりと出来る男でないと彼女には釣り合わない。

さぁ・・・

どうやったら彼女とうまくはなせるかな?

どうやったら彼女にふさわしいかな?

・・・・

ああ!!!

やっぱり運命なんだ!!!

神様もそういっているのだ!!!

彼女が隣に居る!!

クラス最後の席替え・・・

クラスのやつらはわいわい騒いでいたが

なにがそんなに楽しいか理解できなかった

でも

今はそんなやつらの思いもほんの少しは理解できた。

だってこの席替えのおかげで彼女が隣になったのだ!!

やはり僕の思ったとおり

きっとこれは運命だ!!!

神様が二人でいっしょになるように

そうなるようにしたのだ!!!

感動が頭と心を駆け抜けた

ざわざわとする教室内

みんなそれぞれ決まったところに動き出す

僕もまっさきに動いた。

そして彼女を待つ

すると

「よろしくね」

っと彼女がほほ笑む

やっぱりだ!!!

彼女はきれいだ!!!

こんなに美しい笑顔みたことない!!!

しかも、僕が隣にいるだけでこんな笑顔・・・

きっと彼女もうれしいのだ!!

好きなのだ・・・

きっと彼女も僕のことが・・・

そうに違いない

だから彼女は隣に来ただけでこんな笑顔を!!!

ああ・・・

幸せだ・・・・

本当に幸せだ・・・・

でも残念なことがあるとしたら

もう少ししか彼女と同じクラスで隣の席にいれないということ・・・

でも

運命が決めた二人はきっとこれからもずっと・・・

ずっと一緒に違いない。

・・・・・・・・

時間がこんなに早いなんて・・・

今まで一度も感じなかった。

彼女は想像通り聡明で可憐で・・・

何一つ僕の想いと違うところがなかった。

そしてそんな彼女はやはり僕に惹かれていたのだろう。

こう聞いてきた

「あのここわかる?」

って教科書を広げて聞いてくる。

一瞬どきっとしたがシャイな彼女が自分から話しかけてくるなんて・・・

きっとずっとその機会を待っていたに違いない

彼女が聞いてきたところはたしかに

無能な先生の説明ではかなりわかりづらい。

僕は丁寧に教えた。

彼女がわかりやすいように丁寧に。

すると彼女は笑顔で

「ありがとう」

と・・・

美しかった。

その言葉も

表情も

すべてが美しい・・・

その笑顔が僕だけに送られていると思うと・・・

胸が張り裂けそうだった。

それから彼女は良く僕に質問をしてきた。

僕はその質問に懇切丁寧に答えた。

そのたびに彼女の笑顔が僕の瞳に映った。

その時間は一瞬であまりに早く感じた。

彼女が話しかけてくれた日は特に早かった。

そうやって一日一日が過ぎっていった。

世の中の時間が24時間しかないことが

初めてもどかしく感じた。

けどそんなのは些細な事。

また明日になれば彼女に会えるのだ・・・

また明日になれば・・・

・・・・・・・・・・・・

ついに高校生活が終わってしまう。

彼女との日々が終わってしまう。

彼女は志望した大学へと進学が決まった。

僕もおおよその考え通りの大学に進学がきまった。

学校では

「君みたいな優秀な生徒がいて本当に鼻が高いよ」

とか先生はいっていた。

そして両親もこの進学に満足したのか大喜び・・・

正直むかついた。

その程度の人間だと思われていたことに

だが彼女は違う

わかっていたのだ

「やっぱり!すごいね!」

彼女は言った。

やっぱりっと

確信していたのだこの結果を・・・

やはり僕を理解してくれているのは彼女だけなんだ!

だがそんな彼女とも・・・

いや!

きっと待っている!

だから伝えるのだ!!

卒業式・・・

みんなが涙をながして

「またな」とか

「最高だったな」とか

しらじらしいセリフを言いながら

シクシクと泣いていた

そんな光景をうんざりしながら見ていた。

さぞ楽しいそうでよかったねと心で思っていたが

最後くらいはねぎらった。

そしてその時はきた・・・

先生が長い最後の演説を終えた。

それと同時に

彼女に

「あの」

と話しかけた

すると彼女は少しびっくりしたが

きっとわかったのだろう。

僕の言葉を聞いて場所を移した。

そしてそこで

「君が好きです」

そう伝えた。

彼女は

「私も好きです」

と答えた。

彼女は頬を赤く染めて

すこし恥ずかしそうに答えた。

ああ、やっぱり・・・

これは運命・・・

彼女は僕を受け入れた・・・

こんなにうれしいことがあるだろうか!?

僕が知りうるかぎり

これほどの喜びを僕は知らない。

運命で決まっていたとしても

それは変わらない

至上の喜びだった。

僕の両親ですらここまで僕を喜ばせることはできない。

あああああああ!!!

なんて幸せなんだ!!!

そしてこれからも僕は彼女とともにいれるのだ!!!

この日初めて彼女の手を握った。

それは軟雪のようになめらかでか弱く

それでいて灯のようにあたたかく

二人の距離が近づいたことを証明する

そんな感触だった。

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