10.特別補習へ向かう道すがら。









 ――さて。冬休みは短さも相まって、いつも早々に終わる気がするもので。

 三が日を過ごすと、曲がりなりにも受験生である俺は登校せざるを得なくなった。理由はただ一つ、冬季補習である。

 自由参加と謳いながらも、その実は強制参加のようなものだ。

 以前の俺だったら間違いなくうな垂れていただろう。



「まぁ、基本的に勉強嫌いだし」



 以前も言ったように、俺の学力は良くて中の上ほど。

 親父曰く、大学は出ておけ、とのこと。せっかく親がそう言ってくれるのだから、応えないわけにもいかなかった。

 そんなわけで、ひとまずそこそこの大学を目指そう。

 そう思っていた。



「ねぇ、お兄ちゃんはどこの大学を受験するの?」



 絵麻と兄妹に、なるまでは。

 首を傾げながらこちらを覗き込む、成績トップな義妹。

 そんな彼女は興味津々に、俺の進路について訊ねてきた。



「んー、実は迷ってる」

「迷ってるの?」



 俺は絵麻の問いかけに対して、顎に手を当て考え込む。

 というのも先日から、義妹とはもっと仲良くなりたいと、そう思うようになったからだ。そのためにも、なるべく彼女の傍にいられるような環境が欲しい。

 だとすると、高校卒業後には絵麻と同じ大学に通うのが理想――となる。


 しかし現時点での俺の学力では、到底及ばないのは明白だった。



「どこで迷ってるの?」

「ん、とりあえずはそうだな――」



 そんなことを考えながら、絵麻と二人で通学路を歩いていた時。

 ほんの少し前方にある公園から、元気な声が聞こえてきた。




「たっくーん! おっはよーっ!」

「……あ。アイツの存在、忘れてた」




 それに導かれるように、前を見る。

 するとそこには、黒い髪を肩ほどで切り揃えた活発そうな女子が一人。俺たちと同じ学校の制服に袖を通して、意気揚々と手を振っていた。

 俺は朝から元気なそいつに、思わず苦笑いしてしまう。



「お前はホントに騒がしいな――瀬奈」

「むむ! 騒がしいってなにさー!」



 こちらの言葉に、彼女――野川瀬奈は頬を膨らした。

 しかしすぐにキョトンとして、俺の隣にいる絵麻を見る。どうやら、冬休み前には見かけなかった義妹の姿を不思議に思っている様子だった。



「あれ? たっくん、どうして会長と一緒に?」

「あー、説明すると小難しいんだけど……」



 俺は黙ったままの絵麻に代わり、瀬奈に説明する。

 すると、彼女は驚きながらも何回か頷いた。



「ほうほう? つまり、二人は兄妹になった、と……」

「あぁ、そんなわけだから。仲良く――」

「はーい、それじゃ自己紹介します!」

「話を聞けよ」



 こちらの言葉を遮った瀬奈は、ニヤリと笑って俺の腕にしがみつく。

 そして、絵麻に向かってこう名乗るのだった。





「アタシの名前は野川瀬奈! たっくんの、幼馴染でーすっ!」――と。





 住宅街に響き渡るような、そんな声で。



 








――――

絵麻にまさかのライバル登場!?


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