4.帰り道で。








「だ、大丈夫か? 絵麻……」

「恥ずかしかった……」




 生徒会の仕事を終えて。

 あの後メンバーにいじられた義妹は、まだ顔が真っ赤なままだった。

 俺が止めに入るまで続いていて、半分涙目になっていた絵麻。そんな顔を見せたくはないのだろう。彼女はずっと手で顔を覆っていた。

 しかし、その状態で歩くのは危ない。

 そう考えて俺は、苦笑いしながら絵麻の頭を撫でて言った。



「気にしなくてもいいって。それに今みたいに可愛い絵麻の方が、みんなも親しみやすいと思うよ?」

「え、かわいい……? 私が……?」



 すると、義妹は驚いたような表情でこちらを見る。

 俺としては素直な感想を口にしたのだけど、どうやら本人は意外だったらしい。可愛い自分、というものが想像できていない。そんな感じだった。

 なのでここは、念を押しておいた方がいいだろう。



「うん。学校で絵麻のことを可愛くない、って思ってる人はいないよ」

「え、えええぇ!? そんなことないよ!!」



 大きく、首を左右に振る絵麻。

 彼女のリアクションに、俺は自然と微笑んでしまった。

 そしてまた、いつの間にか義妹の頭を撫でる。



「うぅ、お兄ちゃんのばかぁ」

「ははは、ごめんな?」

「…………」



 ついには頬を膨らしてしまったので、俺は撫でるのをやめて前を向いた。

 その時だ。



「ねぇ、お兄ちゃん……?」



 しばしの沈黙の後に、絵麻が小さな声でこう訊いてきたのは。



「男の子、って……お風呂覗きたいの?」

「ぶふっ!」



 それは、先ほどの高橋の戯言について。

 思わず吹き出してしまったが、彼女は至って真剣な表情だった。



「う、うーん……?」



 なので、俺は少し考えてから苦笑しつつ答える。



「大丈夫。少なくとも俺は、そんなことしないって」――と。



 こんな可愛い義妹を裏切る行為は、絶対にしたくなかった。

 だから誓うのだ。そのようなことはしない、と。

 すると、俺の言葉を聞いた絵麻は笑った。




「えへへ! やっぱり、お兄ちゃんは優しいねっ!」




 とても嬉しそうに。

 学校からの帰り道には、明るい彼女の声が響いていた。



 





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