先輩が俺のメイドになった

 何故か先輩は俺の席で、俺だけに接客。最高のサービスをしてもらい、幸せに塗れていた。そんな時間はあっと言う間に過ぎ去って――なんと閉店時間になってしまった。どんだけ滞在してしまっていたんだ俺。


 お店を出ると外は真っ暗。

 閉店時間は二十二時だった。



 バイトを終え、店から出て来る先輩。


「お疲れ様です、先輩――って、なんでメイド服のまま!?」

「ん~? だって、鐵くんがわたしを“注文”したんじゃない。このまま帰るよ」


「あー…。なるほど」


 なんか納得してみた。

 というか、めっちゃ反応に困るっていうか。まさか、メイド服姿の先輩と一緒に帰るのか俺。やば、やばすぎ!



「さあ、帰ろうか」

「先輩、恥ずかしくないんです!?」

「恥ずかしいよ。でも、わたしは鐵くんのメイドだもん。これから、精一杯尽くすからね。なんでもお申し付け下さいっ♡」


 にこっと天使のスマイルを向けてくれる先輩。か、可愛い……なんだこの天使メイド。このままお持ち帰りしたい。


 幸い、実家は俺ひとりだけ。

 両親は世界一周の海外旅行に行ってしまって暫くは帰ってこない。たぶん、一ヶ月……下手をすると半年は帰ってこないという。


「駅前の一軒家が俺の家です」

「わぁ、ここかぁ。アクセス良いね。最高の立地じゃん」

「ええ、まあ……。じゃあ、先輩。今日はありがとうございました。また明日、学校で」


「……?」


 先輩は首を傾げる。

 俺もつられて傾げる。


「あの、先輩? なんでついてくるんです?」

「なんでって、わたしは鐵くんのメイドだから」

「は? ……はぁ!?」


 まてまて、この先輩、何をおっしゃっているんだ!


「もう仕事は終わってますって。先輩は自分の家に戻ってください。明日からいつも通りのボードゲーム部の先輩でいて下さい」

「ううん、もうわたしは鐵くんのモノだもん。どんな命令でも従順に従うの」


 誇らしげに胸を張る先輩。

 えっと……どうしてそうなった。

 いや、男の願望ではあるけれど!



「いや、先輩のご両親が心配されるでしょう」

「ウチの両親は、世界一周の海外旅行中で不在」



 まさかの俺の家と事情が一致。


 どうなっているんだよ!?

 そんなミラクルあるのかよ!?



 思わず心の中で突っ込むが、細かい事はいいか。でも、だからといって……家に上がらせるのもなぁ。先輩は美人で綺麗で、胸も大きくて……メイドだ。確かに俺が“注文”したけど、したけれど!!



「う~ん……」

「大丈夫。えっちな事も歓迎だし」

「ちょっ! せ、先輩……マジすか」

「マジ、マジ」


「じゃあ、家に連れ込みますよ?」

「うわぁ、ドキドキしてきた。わたし、何されちゃうのかな!?」


「期待されるような事はしませんって」



 とりあえず、家に上がらせた。

 俺の家に女子が……しかも、とびっきりの美少女。それがメイド服。俺、前世でどれだけ徳を積んでいたんだろうな。おかげで今の俺は幸せの絶頂!



「お邪魔します……じゃなくて、ただいまです」

「どうぞ、上がってください」

「ありがとう、鐵くん。以降は、わたしが敬語で、鐵くんがタメ口ね」

「で、でも……」

「だって、そういう主従関係だもの」

「そう、だよね。……うわ、先輩にタメ口なんて恐れ多い」


「それで大丈夫ですよ、ご主人様♡」


 抱きついてくる先輩。

 先輩メイドとのワクワクドキドキの同居生活か。両親が帰ってくるまでの期間限定だが…最高じゃないかッ!!!

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