第4話:再会という名の地獄

ダッ!!!!!


僕は全速力で逃げ出した。


「「「あ! 勇者(様)、どこへ!」」」


『逃げないでください! みんな、勇者様を捕まえるぞ!』


ガバッ! ズシャアア! 


しかし、あっけなく魔王たちに捕まってしまった。


(なんで僕に追いつけるの!?)


「離してくれえええええ!」


『たった今、戦うっておっしゃってくれたじゃないですか!』


『あなたまで、私たちを見捨てるのですか!?』


『アンタが、最後の希望なんだよ!』


『逃げないでおくれ!』


ズルズルズル!


僕は引きずられるようにして、城に戻された。


「いやだああああ!」


「勇者様! どうしたんですか!」


「泣くなよ! みっともないだろ!」


「何がそんなに嫌なのよ?」


「ぐすっ……」


とてもじゃないが、元カノだとかヤンデレだとかは言えなかった。


『私たちも一緒に戦いますから! さ、頑張りましょう!』


そのまま魔王たちに連れられ、玉座の間まで来てしまった。


『着きました。勇者様、ここがヤツの棲み処です』


「うん……そう」


僕は、超ローテンションだった。


(いや、待て! たとえ相手が執子でも、別に問題ないじゃないか! 僕は最強なんだから、倒しちゃえばいいんだよ!)


そう考えると、気持ちが明るくなっていく。


(よし! 来るなら来やがれってんだ!)


ギィィィィィィィィィ……!


ゆっくりと、大きな扉が開いていく。


『さぁ! オモイ・シュウコ、観念しろ! 私たちは最強の味方を連れてきた! お前の悪行も、今日で終わりだ!』


『おとなしく、玉座を魔王様に返してもらいましょうか!』


『今さら謝ってもムダだぜ!? こっちには勇者様がいるんだからな!』


『自分の行いを後悔するんだね!』


魔王たちは、意気揚々としている。聞き覚えのある声がした。


「なんだ、まだアンタたちいたの」


(執子だ……)


玉座には、執子が座っている。僕を殺した時と、同じ格好だった。


「久しぶりね、平人。《グラビティ》」


ヴヴン!! ズシャッ!!


「ぐああああああああ!!」


とてつもない重力で、僕は床に這いつくばった。指1本、動かすことができない。


(な、なんだ、この力は! 僕の全能力値は無限のはずなのに!)


「か、身体が……動かない……」


『ゆ、勇者様!? おのれえええ! しもべたちよ、我に力を……』


魔王が呪文を詠唱しようとする。


「うるさい」


ボオオオン!


『うぎゃあああああああああああああああ!!』


突然、魔王の身体が爆発した。魔王はぐったりと倒れる。


『『魔王様!?』』


「アンタたちもよ」


ボオオオン! ボボボオオオン!


『『うわああああああああ!』』


四天王の身体も、同じように爆発した。執子が指を振る。


ヒュウウン! ドサッ!


彼らは窓から外に、放り出されてしまった。執子は僕の仲間を見る。


「さて、私の平人と仲良くしてくれたみたいね。それも、ずいぶんと長い間」


僕はその目を見て、心の底から震えあがった。


(しゅ、執子のヤツ、さらに怖くなっている)


「勇者様を離しなさい!」


「1対3で、勝てると思うな!」


「あなたの横暴も、ここまでよ!」


「ま、待て……! 逃げるんだ……! み……んな!」


パチン! シュンッ! 


執子が指を鳴らす。その直後、マジカルが消えた。


「マ、マジカル!?」


「こいつ! よくもマジカルを!?」


「許しません!」


ウオリアとリプトイスが、執子に突撃する。


「や、やめるんだ……二人とも……!」


パチ、パチン! シュ、シュンッ!


あっという間に、二人とも消えてしまった。ここにいるのは、僕と執子だけだ。


「しゅ、執子! 三人に何をしたんだ!」


「なにって。存在を消したのよ」


執子は、至極淡々と言う。僕は彼女の言うことが理解できなかった。


「存……在を……消した?」


「そう。あの子たちは、この世界に生まれてこなかったことになったの。彼女たちの両親も友達の記憶からも、完全に消してやったわ。当然でしょ?平人に手を出すからよ」


ガタガタガタ!!


全然寒くないのに、身体が震えてしかたがない。執子はニッコリと笑ってきた。


「ようやく、二人っきりになれたね。私の平人」

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