第2話:異世界生活は、楽しくてしょうがない

「ここが、魔王領か……」


僕は無双しまくって、あっという間に魔王城がある土地へついた。各地で、僕は英雄と呼ばれている。あとは魔王を倒せば、この旅もおしまいだ。


(ま、余裕でしょ)


全能力値が無限なのは、ダテじゃなかった。どんな敵もワンパンで倒せたし、一度たりともダメージを喰らわなかった。


そして、異世界転生と言えば……。やっぱり、ハーレムだ。


「勇者様、いよいよですね」


この子は、魔法使いのマジカル。清楚で真面目な、金髪碧眼の鉄板美少女だ。しかし、僕と出会ってから谷間が見える服を着だした。


(僕色に染まったんだろうなぁ。デヘヘヘ)


「気を引き締めていこう」


言いながら、僕はさりげなく彼女の尻を撫でる。


「ちょっと、勇者様。こんなところで……」


彼女も別に、まんざらでもない様子だ。僕はそのまま、スリスリ触りまくる。


(触り心地いいんだよなぁ)


「なんだか、こわ~い」


そんな僕らを邪魔するように、別の娘がピトッとくっついてきた。神官のリプトイスだ。神職らしい黒髪に、ボディラインを強調した修道服がなまめかしい。あざといのが、また可愛かった。腰に手を回してやる。


(こっちの相手もしてあげないとぉ)


「おい! アタシの勇者に、くっついてんじゃねえよ! 勇者もデレデレすんな!」


また別の娘が、僕の背中にしがみついた。女戦士のウオリアだ。赤い髪からは、いつも良い匂いがする。鍛えあげた肉体が、とても良い。彼女は一番年上で、いつも強気だった。しかたないので、そっと耳元で囁いてやる。


「あとで可愛がってやるから」


「う、うん……」


一瞬でしおらしくなった。


(全く、夜は僕の言いなりのくせに)


「勇者様!」


「勇者さまぁ~」


「勇者!」


三人とも離れてくれないので、歩くのも一苦労だった。


「みんなぁ、そんなにくっつかれたら歩けないって~」


(モテる男は大変だなぁ)


僕を美女たちが奪い合う。こんな幸せな展開は、生まれて初めてだった。もちろん、旅の道中にお楽しみしまくっている。鼻の下が伸びっぱなしで、顔の形が変わるほどだ。


(これを生きる喜びと言うんだろう)


歩いていくと、森が出てきた。一歩入ってしまえば、外からは見えなくなる。


(……一発ヤッてから行こうかな。いや、でもさすがに魔王城が近くにあるしな。やめとくか、危ないし)


しかし、僕の心の中で、悪魔が囁いた。


(ヤッちまえって! その方が集中できるだろ! 今さら何いい子ぶってんだよ!)


負けじと、天使が抵抗する。


(いけません! 敵はすぐ目の前なんですよ! 早く魔王を倒しに行きなさい!)


僕の中で天使と悪魔が戦っていると、マジカルが僕をツンツンした。


「どうしたの? マジカル」


「勇者様……少し休んでいきませんか?」


マジカルは赤らめた顔で、服の胸元を下げていく。彼女の白い柔肌が、少しずつあらわになる。


「私も疲れちゃった~」


リプトイスが僕の腕に、胸を押し付けた。身長に似合わない大きな胸で、僕の腕を巧みに挟んでくる。


「アタシだって休みたいんだよ!」


ウオリアがグイグイと、森へ僕を引っぱっていった。僕の天使は、これまたあっさりと悪魔に負けた。


「まったく、しょうがないなぁ~」


僕は三人を抱えるようにして、森へ歩いていく。


(ゲハハハハ! 異世界生活って最高だなぁ!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る