第8話 女の水滴

お風呂が沸いたという。

ちょっと熱くしすぎちゃった。

と言って水で薄めている。


僕はさっさと裸になって

温度の調節は僕がやるから早く裸になって。

といった。


劇場で見た武蔵とは全く違う人格の女がいた。

わかった。タオルとか用意するね。

足でぐるぐる湯甘みをして

ちょうどよくなった頃に彼女がきた。


ありがとう。と言いながら体を隠している。

僕はタオルを横に置いて

裸の自分を彼女に向けた。


恥ずかしそうにする彼女がおかしかった。

ここに男の人が来るのは初めてなんだ。

強がってたけどすこしドキドキしちゃうんだよね。

変だよね。


なんとなくわかる気がした。

タオルを奪って明るい蛍光灯の下で彼女の裸を見た。

大きすぎもせずお椀型の乳房に色が薄く乳首が埋もれた乳頭、縦長の小さなおへそと毛の薄いあの場所。


恥ずかしい、と彼女はお尻を向けた。

おいおい、身持ちの良さをじっくりチェックする約束だよ。

そうね。みるだけじゃ恥ずかしいから、エッチなことをしながらにしてね。


変な注文だと思いながら、とにかく湯船に浸かった。

確認はいいの?お互いに身体の汗くらい流してからでいいだろ。

石鹸で洗ってあげようか?お互いに洗い合う?


いきなり湯船に潜って僕を軽く咥えた。

彼女は悪戯な目をしてお湯の中から現れた。

長いまつ毛に絡みついた水滴。

薄い眉から、顔のラインに沿って流れる水滴。

とにかく美しかった。


瞬きと同時に

長いまつ毛の水滴が弾けた。

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