幼馴染が出来もしない催眠術で僕の恋路を暴こうとしてくる

ミソネタ・ドザえもん

揺れる五円玉

「カッちゃん、催眠術の練習台になってくれない?」


 外でセミが喧しいくらいに鳴き続けていた。毎日毎日、エアコンの中にいても、母の節電宣言により時折汗を掻くそんな暑さだと言うのに、セミと言うのはいつも元気なものだと思うばかりだった。

 ただ、残念ながらセミは、幼虫から成虫になった後はわずか一週間しか生きる事が出来ないと言うのだから、その喧しいくらいの鳴き声も自分の最期を彩るための空元気のようで、苛立ちを覚えるのもどこか可哀そうだった。


「聞いてる? おうい、カッちゃん」


 それにしても毎年毎年、本当に夏はなんでこんなに暑いのだろう。

 折角の夏休みなのに、これでは碌に外でも遊べない。まあ、そこそこな田舎である僕の住む町では、外に出ても碌に遊ぶ事さえ叶わないわけだが、選択肢の一つとしてあるかないのか、それだけで多いに違うわけなのだ。

 仮に、選択肢の一つに外で遊ぶ、があったとして。

 恐らく僕は、家で漫画を読む、と言う選択肢を選ぶのだが。


「この男、ずうっと無視してくる。酷い人だ」


「喧しい」


 僕は、いつの間にか僕の部屋にやって来ていた幼馴染の明日香にようやく文句の言葉を口にした。

 そろそろ相手をしないと、彼女も文句を言い出す頃だという事は、腐れ縁のおかげで察していた。

 彼女……明日香は、幼稚園時代からの知り合いだった。昔から彼女は、突拍子もない女だった。

 例えば、夏休み突然僕の家に押しかけて来て、しばらくは僕を放って母と世間話に勤しんで、そうして僕が自室に戻ると母との会話を切り上げて、僕の部屋に着いてきて……そうして、催眠術の練習台になれ、だなんて突拍子もない事を言うくらい、突拍子もない人なのだ。

 あ、これ丁度今の話だった。


「そもそも、今日はどうしてウチに来た。昨晩言っただろう。今日は例の漫画の新刊が発売するから、忙しいのだと。おかげでこの時間になっても未だ買いに行けてないのだぞ」


「どうせ、あたしが来なくても外は暑いから夜に行く、とか言う癖に」


「……わかってないな、明日香は。選択肢の一つとしてあるかないか。それだけで随分と話は違ってくるんだぞ」


「あるのに選択しないのなら選択肢の中から除外しても良いじゃない」


 奇遇だな、僕もそう思っていたところだ。


「……ただな、その選択肢の中からお前が僕に選べと言ったのは……その、催眠術?」


 一応、明日香との会話は右から左へ受け流していなかった。

 だから、明日香の願いを咀嚼した上で、僕は当然な疑問を彼女にぶつけたのだった。


 催眠術、とはなんと言うか……本当、馬鹿みたいな事を頼むものである、この女は。


「そう、催眠術」


 呆れる僕を他所に、明日香は大層嬉しそうに微笑んで頷いた。


 ……一々可愛いから、質が悪い。


 ただそれにしても、催眠術とは本当に、突拍子もない頼み事だった。

 彼女はいつもそうだ。

 憎まれ口を叩く癖にいつだって最後には彼女の願いを僕が聞き入れるものだから。可愛い笑みを浮かべれば僕が願いを聞き入れると思っているものだから。


 だから、毎度毎度僕にこんな突拍子もない願いを投げかけてくる。


 本当に、馬鹿な奴。


「……催眠術をマスターしたいって事?」


「多分」


「多分って……。催眠術なんて覚えて、何がしたい」


「色々」


「例えば?」


「……そうだねぇ。あっ、カッちゃんの秘密を暴く、とか?」


「趣味悪いな」


 僕はげんなりした顔をした。


「まあまあ良いじゃない。減るもんでもない」


「減るよ。僕の隠し事が減るじゃんか」


「隠し事なんて、ない方が人として良いと思わない?」


「……確かに」


 見事に言い包められた。




 本当、僕って馬鹿な奴だな。




 ……まあ、初めから断る気なんてなかったのだがな。

 別に、あれだぞ?

 ただ……そろそろ明日香の頼みを聞き入れてやらないと、こいつは拗ねるから。拗ねられたら後々僕に多大な被害が及ぶ事になるから。

 具体的には……その、特に浮かばないけど。

 とにかくっ、そう言うわけで僕は彼女の頼みを聞き入れるのだ。


 これは山より高く谷より深いそんな事情によって、仕方なく行う事なのだ。



 ……一体誰に弁明しているんだ、僕は。



「で、催眠術って具体的にどうやるの?」


「うーん」


 深く考えていなかったのか、明日香はとりあえず去年僕が誕生日にプレゼントしたピンク色の財布を開けた。そして、一枚の小銭を見つけていた。五円玉だ。


「ちょっと、おばちゃんに糸もらってくる」


「あ、そう」


 慌ただしく、明日香は僕の部屋を飛び出した。

 それから明日香は……中々帰ってこなかった。僕の部屋は二階。母がいるだろう居間は一階。自室の下の方から、楽しそうな笑い声が二つ。明日香と母だ。

 漫画を読んで、時間を潰す事にした。


 今の愛読本は、探偵もの。一時は一大ミステリーブームを巻き起こした漫画で、じっちゃんの名をしょっちゅうかけることで有名だ。

 その漫画の、錬金術が題材の章を読んでいるのだが……作者コメントに書かれた、錬金術を調べるためにネットで検索したら、某漫画の情報しか出てこなかったと悲観めいていたコメントがとても面白かった。

 完。


 完、ではないだろ。

 まだ終わってもなければ、始まってもいない。


 明日香が部屋を出て読み始めた漫画が、丁度犯人当てを始めると言う佳境を迎えたタイミングで、明日香は僕の部屋に戻ってきた。


「もうっ、なんで漫画なんて読んでるのよー」


 理不尽。


「どれくらい母さんと話してるんだよ」


「え、五分?」


「脳内時計ぶっ壊れてるじゃねえか」


 残念ながら、脳内時計は家電量販店では修理出来ない。Gショックだったら二週間で直るのに、一生ものとは、つくづく人体とは奥深い。

 でも人体錬成は駄目だぞ。持ってかれるからな。


「ちょっと待っててね」


「わかった」


 明日香は一度僕に背を向けて、五円玉ともらった糸を絡ませ始めた。

 だから僕は、漫画を再び読み始めて……えっ、トリックそんな大がかりなの!???? 舞台設定から怪しいと思ってた!!!!


「カッちゃん、いい加減にしてよね」


 理不尽。


「返して。漫画返してっ」


「駄目。これはあたしが預かっておきます」


「理不尽」


「素直に練習台の相手してくれたら、返してあげます」


「子に勉強させたい親か?」


「あたしはカッちゃんのお母さんじゃないよ。なれて妻、かな?」


「知ってるわ」


 ……ん? なんだか変な事を口走った気がする。

 まあ、良いか。早く漫画の続き読みたい。


「……じゃあ、カッちゃん。ジィーっと五円玉を見るんだよ?」


「わかった」


 明日香が手に持つ糸から垂れた五円玉を、僕は注視した。


「どの辺見れば良いの?」


 しかし、僕はすぐに困惑した。

 銅製の硬貨は、注視してみると意外と大きかった。日本国の掘込、糸を通している穴、明日香。本当に、どこを見て良いかわからなかった。

 え、最後はおかしい?


「どこでもいいんじゃない?」


「そんなアバウトな」


「大丈夫。プロがやればそれで一発でかかるからっ」


 じゃあ、明日香がプロの催眠術師なら一発だな。

 違うからかかるはずないじゃないか。


「はい。もうっ、ちゃんと集中して。漫画返さないよ?」


 理不尽。

 しかしそれでやる気を出すのだから、僕も簡単な奴である。




「おっ、いいね。……ゴホン。あなたは段々、ねむーくなります」




 ……おおっ。




 すげえすっげえ!






 ぜんっぜんかからない!






 すげー。




 神のなせる業だな。これもう、全然効果ないもん。




「そろそろかかったかな?」




 かかるか。




 が、僕は催眠術にかかったふりをした。




 ……だって、その。




 明日香、頑張っているし……努力が徒労に終わるなんて、可哀そうだし……。




 ほ、本当それだけだから。




「うっそ。かかった? 本当にかかった?」




 僕の顔の前で明日香は手を振っていた。

 僕はと言えば、催眠術がかかったように今にも眠りそうな感じで能面のように無表情を貼り付けた。

 ……これ、顔面の筋肉を動かさなくて良いから結構楽だな。新たな発見。



「……うわー、まさか本当にかかるだなんて」


 明日香も、どうやら自らの新たな超能力を発見して、驚いているようだった。まあ、彼女は凡人なのだが。


「……どうすれば催眠術解除されるんだろう?」


 確かに。

 どうすれば僕、素面に戻っていいのだろう?


「……試しにビンタ、してみるか?」


 理不尽。


「まあ、止めるか」


 ……ホッ。


 能面を続けていたが、しばらくして明日香が何やら思いついたようだった。


「……カッちゃん。じゃあ、これからあたしの質問に全て答えてね」

 

 僕は黙っていた。


「わかったら、はいって言って」


「……はい」


 なるべく無機質に、僕は言った。


「よーしよし」


 何故か、頭を撫でられた。


「……ゴホン」


 わざとらしく、明日香は咳ばらいをした。


「カッちゃんは今、催眠状態ですか?」


「はい」


「今の記憶は、催眠術が覚めた時全て忘れますか?」


「はい」


「……じゃあ、質問です」


 明日香は、息を大きく吸った。




「カッちゃんは今、好きな人いますか?」




 はい、でたー。

 されると思ってた。されると思ってたよ?

 だって、作品のタイトルがそう言う感じだもの。


 でもまさか、一番最初の質問かー。

 

 いきなり答えづらい。

 これは……本当、勘弁して欲しい。


 ……それは別に、僕の気持ちが別の方向を向いているから、と言うわけじゃない。

 むしろ、ここまでの流れで。ただ一人にどこまでも甘い事を鑑みても。

 クラスの皆だって。母だって。明日香の母だって。


 当人以外、最早周知の事実だろう。僕の好きな人なんて。


 でも、答えづらい。


 だって、その質問をしてきた当人の事が好きだなんて言うの、恥ずかしいじゃないか。




 ……違うか。



 むしろ、こういうタイミングだから、か。

 催眠術にかかっている体なのだから、今までずっと臆して言えなかった最後の言葉を、言えるのかもしれない。


「……あれ、催眠術かかってない?」


 やばい。

 問題児と書いてトラブルメイカーと書いて明日香が察し始めた。


 ……どうする。


 ここが最後の分岐点だろう。


 ここで選択肢を間違えれば、最後まで演じ切る必要が生まれる。


 明日香の質問に、全て答える必要が生まれる。正直に、答える必要が生まれる。




 ……どうする?


 


 ……と、悩んだ振りをして。


 結局目の前の選択肢、僕が選ぶそれはいつだって、初めから変わる事がないのだ。




「……明日香」

 



「へ」



 へ、じゃあないよ。へ、じゃあ。


 恥ずかしい。

 でも、もう引けない。またとないチャンスじゃないか。最悪、悪い結果を生んでも催眠術かかってたわーと逃げ道が残っているのだから。


 ……でも、悪い答えなんて、聞きたくないなあ。




「……もう一回」




 思いもしなかった明日香の言葉に、僕は体を揺らした。




「もう一回。誰が好きか言って」


「……明日香」


「明日香は同じ学年に二人いるよ?」


 そうなの?

 こいつ以外の明日香なんて、僕の眼中にはない。


「片瀬明日香」


「どこが好き?」


「全部」


「……うへえ」


「……全部」


 そんな、甘ったるいコーヒー飲んだみたいな顔をするなよ。思わず泣きそうな声でもう一回言っちゃったよ。


「……全部好きなの?」


「はい」


「でも、敢えて一つに絞るなら?」


「可愛らしい笑顔」


「うへえ」


 だから……この野郎。


「明日香さんの体の部位で好きなところは?」


「ふともも」


「ふとももフェチなの?」


「違う。……明日香のふとももだから、好きなんだ」


「うへえ」


 もう突っ込まないぞ。


「明日香さんはしょっちゅう事あるごとにあなたの家に押しかけるけど。いつもそれで迷惑そうな顔をしているけど、本心はどうなの?」


「めちゃくちゃ嬉しい」


「明日香さんは、本当は結構、嫌がられてるんじゃないかなってビクビクしてたんだよ? だから最近はあなたのお母さんのところに逃げるの」


「ごめん。これからはもっと一緒にいてくれ」


「うへえ」


 ……さすがにそろそろ僕も恥ずかしくなってきた。


「……漫画と明日香、どっちが好き?」


「明日香」


「じゃあこの漫画、返さなくていい?」


「駄目」


「……あはは」


 明日香は笑っていた。


「この漫画と後で買いに行く漫画、どっちが読みたい?」


「両方」


「どっちかだったら?」


「……後で買う方」


「……じゃあ」


 明日香は、能面状態で胡坐をかいている僕の足の上に、さっきの漫画を置いた。


「そろそろ目を覚まして、もう少し暗くなったら一緒に買いに行こう?」


 それは……質問なのか。お願いなのか。


「返事は?」


「はい」


「気持ちは?」


「嬉しい」


「うへへ」


 情けない笑みで、馬鹿みたいに明日香は微笑んでいた。それもまた可愛い。


「あたしが次に手を叩いたら、カッちゃんは目覚めます」


「はい」


「そうしたら、その足元にある漫画の続きがとても気になる状態になります」


「はい」


「ちなみにその漫画の犯人は、歯科大生です」


 え、ナチュラルにネタバレされた。

 途端に興味失ったわ。ミステリーでネタバレはご法度だろ。


「じゃあ、叩くよ」


 ……さて。

 

 とりあえず、ようやく終わるのか。この生き地獄が。


 ……全てを語ったがまったく。返事を聞ける日は、いつになる事やら。




 ぱんっ

 



 明日香の手が叩かれた音を聞いた後、僕はゆっくりと目に生気を取り戻した(風に見せた)。


 最初に視界に入ったのは、さっきまで読んでいた漫画だった(的な反応を見せた)。


 そして、その漫画を取って、読み途中だったページを開いて三ページくらい読み進めて、ん? と何かに気付いた(と見せる事が僕の至上命題だった)。




「あれれぇぇ? 僕、いつの間にこの漫画、君に返してもらったのぉぉぉぉ?」




 いやはや、完璧な演技だぜ。

 これならさすがの明日香も、僕が本当に催眠術にかかっていたと錯覚するだろう。


「どうしてだろうね?」


 明日香は、さっきまであんなこっぱずかしい事を聞いたからかはぐらかした。


 僕は、意識を失う前までの記憶を思い出した(気がしたがそもそも忘れてはいなかった)。


「っべー。っべっべー。まさか催眠術? 催眠術にかかってたの、俺? お前ぇ、変な事聞いてへんよな? よな?」


「うん」


 うん、じゃねえ。あれだけ生き恥を僕に晒させておいて……。




「ねえ、カッちゃん?」




 僕の完璧な演技に、明日香はあまり興味はないようだった。

 僕の部屋の窓の外を見て、何かに気付いたように今度は僕を見て、そして微笑んだ。


「もう、外も暗いね」


「……うん」


「欲しい漫画、あるんでしょ?」


「うん」




「買いに行こうか」




 勿論、それを僕が断る事はなかった。


 母に、二人で外に出掛けることを告げた。どうやら今日は、明日香もウチでご飯を食べて行くらしい。

 だから、出掛けるのも一緒で帰って来るのも一緒。


 明日香には、出掛ける直前にこれから買う漫画、後であたしにも読ませてよね、と言われた。




 夕暮れ沈む外を歩きながら、僕は不愉快な気持ちを抱えていた。


 そろそろ陽が沈むのに、まだジメジメと外が暑かった、からではない。勿論その事でも鬱屈さは感じていたが、それよりなにより、気になっている事があったのだ。

 

「明日香、さっき催眠術で、僕に何を聞いたんだよ」


「んー?」


 それは、さっきあれほど僕に生き恥を晒させた癖に、明日香がずっと平然にしている事だった。

 そりゃあ、すぐには答えを聞けないとは思ってもいたが……まさか事後、完全スルーされるだなんて思わんだろう。


 さすがに少し、意地悪をしたくなると言うものだ。

 好きな人をイジメたいだなんて、小学生みたいだ。


「なんだよ、言えないような事を聞いたのか?」


「んー」


「はぐらかしたってそうはいかないぞ。……無意識化でいるって、結構気持ちが悪いんだ。そんな感じを味わわせた罰だ。教えてくれよ」


「えー?」


 曖昧な返事に、どうやら明日香が真面目に応答する気がない事を悟った。


 ……これ以上は、明日香の性格を考えても、明日香に甘い自分の事を考えても、無駄、か。


 答えは全て、闇の中。


 ……本当、進展したと思って、しないものだ。


 僕は辟易としたようにため息を吐いた。




「……まさか、お前に催眠術の才能があっただなんてなあ」




 そして、そのため息の理由付けとばかりに適当な嘘を吐いた。




「……催眠術の才能?」




 すると、ようやく僕の言葉を真面目に聞いた明日香が、先を歩んでいた足をピタリと止めた。




「嫌だなあ、カッちゃんったら」




 明日香は振り返りながら、微笑んでいた。






「あたし、催眠術なんて使えないよ?」





 夕暮れの中、明日香の長髪が靡いた。




「へ」




 しかし僕は、そんな艶やかな明日香の姿に多少しか興味を示す事は出来なかった。



「言ったじゃない。催眠術の練習台になってって。催眠術をしたの、あたし今日が初めてだよ? そんなの、最初から上手くいくわけないよー」



 ……へ?


「あれ、でも不思議だね」


 キョトンと顎に指を当てていた明日香が、悪戯っ子のように、可愛らしく微笑んだ。




「だって誰かさんは、あたしの質問、全部答えてくれた。まるで催眠術にかかったみたいに。不思議だね」




 ……。




「理不尽っ!」




 顔が、熱かった。




「そう言うの、わかってても言わないもんだろ。暗黙のルールってもんだろっ!!!」




 多分これは、夏が暑いせいだからではない。




「……で、どうなのさ」




 でも、そんな事はどうでも良い。




「……何が?」




「わかっていたなら……返事をくれよ」




 僕の前には、無数の選択肢が存在する。




「僕の想いは……伝えたぞ」




 でも僕の導く選択は、いつだって最初に決めたものだった。

 明日香にとことん甘い事も。

 明日香からキチンと答えをもらいたい事も。



 ……明日香へのこの想いも。



 ずっと、変わらないのだ。




「返事を、くれ」




「嫌」




「僕だって嫌だ。教えてくれ」




「嫌。だって恥ずかしいもの」




「……むぐぐ」




 僕が、好きなもの。


 冬。

 漫画。

 ……明日香のふともも。

 



「じゃあ……」




 そして、明日香のこの笑顔。

 可愛らしくて、眩しくて、綺麗で。




 いつだって見ていたい、大好きな彼女の、そんな笑顔。






「あたしに催眠術、使ってみたら?」

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