一話 「このアパートに二人で住むんだね」

「では、サインかハンコをいただけますか?」

「……はい」

 引っ越しの業者さんにサインをし。俺と桜は新しい〝家〟となる方を見ていた。

「はぁ……」

「……ほぉ」

 二人とも唖然という言葉が出るほどただ呆然と立っていた。

「このアパートに二人で住むんだね」

「そう、だな……」

 ずっと夢にみていた幼馴染から彼女になって桜とこうして一緒に住むってことがこうして実現しているといまだに信じられなかった。

 桜の方に目を向けると同じようにただボーとアパートの方を眺めていた。

「部屋に向かう?」

 桜がこっちの方を向いて少し嬉しそうな表情をしていた。

 さっき大家さんから鍵を受けった。204号室と書かれた部屋の方へ向かい鍵を開けた。

「オープン!」

 ガチャとドアを同時に桜が部屋に足を踏みいれた。

「……」

「……」

 新品の木の香りが漂ってくる。

「結構広いね……」

「だな……」

 ウチの両親が家賃は支払うということで2LDKのアパートを選んでくれた。

 二人用に別々がありスペースにお風呂とトイレは別でキッチンも付いている想像してたよりも広い部屋だった。

 冷蔵庫とか電子レンジとかその他にも生活に必要なのは桜の両親が買ってくれて物で、

『ようやく桜に彼氏が出来たのが仁くんなんて嬉しいな。ははっはっ! 冷蔵庫とか必要だろ。可愛い娘たちのお祝いとして買わせてくれ。遠慮なんてしなくていいから他にも必要なものがあったらどんどん注文してくれてかまわないから。……………桜がとうとう彼氏を持つとはなぁ、もうそんな年になるのか。……小さい頃はパパ大好きと言ってたくれて嬉しかったのに。……あぁぁあぁぁぁぁっっ!!』

 そう言って涙を流していた。

 ……冷蔵庫とか大切に使います。桜と同棲を認めてくれてありがとうございます。

 心の中でそう念じてた。

「部屋決めどうするか決めるか」

「そうだね」

 中に入り部屋を色々と見て思ったことは。

「ベットないんだけど」

「……うん、そうだね。ないね」

 部屋のどこにもベットがないということだった。

「……んー」

「おっ?」

「どうしよう」

 俺と桜の部屋にはベットはあったから寝るときはどうしたらいいんだろうか。

「ねぇねぇ仁」

「ん?」

 桜に呼びかけられて振り向く。

「これで寝るってことじゃない?」

 するといつの間にか分厚い生地を手元に持っていた。

「えっそれって……」

「布団だね。まだふかふかしてる!」

 桜が顔を布団の方に埋めていた。

「おぉ……」

 可愛い……。

 桜の元に近づくともう一つ布団が置いてあった。

「あぁ俺の分もある」

 ……本当にうちの両親や桜の両親には頭が上がらない。

「寝るところも確保したことだし部屋決めはどっちにするか?」

「……?」

 桜が首を傾げていた。

「部屋もう一つあっただろ。桜はどっちで寝たい?」

「……え? 一緒のところで寝たい仁と寝たい。隣に布団をくっつけて寝ようよ」

「――なん、だと」

 小さい頃には一緒に寝ていた。けど、小学校5年の時に恥ずかしくて一緒に寝るのはなくなった。

 ……それでも彼女になったらいつかは一緒には寝たいと思っていたが、良いんですかね?

 こんな幸せなことがあって良いんでしょうか?

「マジでいいの?」

「えっ良いと思うんだけど。だってこんなに素敵な彼氏がそばで寝てくれたら日常的に頑張れそうだから……」

「……おぉ」

 不意打ちを食らってしまった。彼氏っという言葉だけで嬉しい。

「わかった……。この部屋で二人で寝よう」

「やった!」

 桜がめちゃくちゃ喜んでいた。

 ヤバい桜が隣で寝てくれるっていうだけでにやける……。

 するとこっちの腹の虫が鳴きだした。

「腹減った……」

「こっちも」

 桜も同時にお腹が空いたみたいで摩っていた。

「冷蔵庫なにもないから作れないね」

「そうだな……」

 冷蔵庫か……あれ? 飯はどうしよう。

「俺、料理作れないんだけど」

「え、私がいるじゃん」

 桜が自分に指を挿していた。

「あぁ、家庭科でなんか作ったのを試食してくれけど美味かったな」

 この前授業で卵焼きの課題が出て桜が試食という感じでこっちのグループに持ってきてくれたが美味かった。

 それとクッキーを作ってくれたりもしたけどそれも美味かった。

「それじゃあ料理は桜に任せてもいいの?」

「いいよ。仁が美味しいって言ってくれるだけで50倍は頑張れちゃう」

「そんなに盛られると返すのが大変だな」

「……返すのだったらあるよ」

「え?」

 桜の方を見ると顔が赤くなっていた。

「えっと。お願いというか私の欲望と言いますか……。仁にちょこっとだけ、抱きつきたいなーってお願いが、毎日」

「おっ、おぉ……んん」

 抱きつきたいなんて嬉しすぎる。

「それだったらいつでも抱きついてくれて構わないよ」

「――っ! わかった」

 桜が小さい頷いた。

「……お昼はどこかで食べない? その帰りに材料とか調味料とか買いたい」

「わかった」

 調味料とか重たい物は俺が待たないとな。少しだけ桜の役に立てるように。

「じゃあ行こう」

 俺が立ち上がり玄関の方へ歩こうとした瞬間。

 グッと桜が抱きしめてきた。

「ごめん仁。我慢出来なった」

「……いいよ」

 小さい頃はよく抱きついてが少しの間。手がこんなにも細く。女の子らしい手になっていた。

 けど暖かった。

「私、幸せ……過ぎるな。こんなイケメンな仁と同棲出来るなんて幸せ」

「……おぉ」

 桜からイケメンって言われるのが嬉しすぎる。

「そんな素敵で美人な彼女と同棲出来るなんて俺の方こそ幸せだよ」

「――っ!」

 すると抱きしめられてた手がもっと締め付けてきた。

「それ言われたら仁に抱きしめるのもう少ししてたい」

「いいよ。俺も嬉しい」

「ありがとう。愛してるよ仁」

「俺も愛してる……桜」

 その後。桜に十分間抱きしめられ一緒に外に出た。

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