03 アルカトラズ
農場を飛び立ったレイとドーラン。
「――すっげぇぇぇ!!空飛んでるじゃん俺!!」
<我の魔力でな>
レイの言葉にすかさずツッコミを入れるドーラン。
本来、農場からアルカトラズまではだいぶ距離がある為乗り物で移動しても数時間は掛かるのだが、どんな乗り物よりも速い飛行能力。それもドラゴンの中の王、古代黒龍のドーランにかかればものの数分でアルカトラズに到着した。
広大に広がる大地の一角。断崖絶壁に囲まれたど真ん中にアルカトラズは建っている。武装した軍隊が厳重に建物の周りから中まで警備をしており、
外からの侵入は勿論、囚人の脱獄も不可能といわれる完全要塞である。
レイとドーランは上空からアルカトラズを見下ろしていた。
「ホントに正面突破するの……?アルカトラズの警備だから魔力高い奴ばっかだりだし武装してるぞ。剣、銃、槍、斧……何も武器持っていない奴はきっと強力な魔法使いだ……危なそー」
陽気に空を飛んでいた頃から一転、目の当たりにしたアルカトラズの独特な雰囲気に呑まれたレイは少々緊張気味だ。
<さっきまでの威勢はどうした?思ったより情けないの>
「ビビってる訳じゃないけどさ……いまいち力に不安あるんだよな……ドーラン大丈夫?」
<なッ⁉ ……レイ貴様!我の魔力を信用しておらぬのかッ!黒龍の力を!>
「信用してないわけじゃないけど、俺魔力も魔法も使った事ないからさ……どんなものなのかな?って疑ってわいる!」
<――⁉⁉>
颯爽と答えるレイの言葉にドーランは驚愕。
魔力0の……しかも人間の少年にこんな言われ方をするなど言語道断。ドラゴンの王としてのプライドが深く傷つけられたドーランはムキになって己の力を見せつける。
<レイ!!我の強さをその眼に焼き付け全身でドラゴンの偉大さを知るが良いッ!!>
「おいおい。別にそんなにムキにならなくてもッ……って、うわぁぁぁぁッ⁉⁉」
ドーランは、体で魔力の使い方を覚えろとレイの体を操作し始めた。アルカトラズ遥か上空から急転直下するレイ。
「ちょ、ちょっと待ッ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
開いた口が塞がらないとはこういう状況なのだろうか……。
そんなくだらない事が頭を過ったのも束の間、気を付けの姿勢でロケットの様に発車していたレイの右腕が勝手に動き出し腕全体が魔力で覆われる。「ドーラン何する気だ!」というレイの言葉は無視し、魔力を集めた右腕をアルカトラズ目掛け振り下ろした。
――ズガァァァァァァンッ!!
レイ……正しくはドーランの力で、物凄い轟音と共にアルカトラズの天井に穴が開いた。
爆撃の様な地震の様なその攻撃は一瞬でアルカトラズにいる全ての者達を驚かせる。あまりに突然な出来事に警備をしていた者達も状況が全くつかめない。
災害か――⁉
敵襲か――⁉
ほんの数分前まで静かだったアルカトラズ内は大騒ぎになっている。
「一体何なんだッ今のは……!!」
「敵襲か⁉⁉」
「そっちの状況はどうなっている!」
「突如瓦礫の残骸が上から降ってきました!」
「敵襲ー!!敵襲ー!!上空に人影を確認!!」
流石は一流の警備体制とでも言うべきか、警備員達は一瞬困惑した様子を見せつつも冷静に状況を把握し上から落下してくるレイの姿を捉えた。隊長と思われる男が指示を出し、銃を持っていた警備員達が皆一斉に狙いを定める。
降下しているレイはアルカトラズまで残り数メートル……そのタイミングで隊長が合図を出した。
「撃てぇぇぇぇぇぇッ!!」
その号令で銃を構えていた者達が皆発砲する。無数の弾丸がレイ目掛けて飛んでいくが、ドーランの魔力で生み出された大きな翼で全ての弾を防いだ。
<こんなもの効かぬわ。レイ!言っていた通りこのまま“正面突破”するぞ>
「いや、確かにアルカトラズが“目の前”に見えてるけど……思っていた正面とは“角度”が違ぇ!!」
予想外の正面突破とドーランの勢いに面食らっているレイだが時は止まらない――。
体の自由も奪われもう成す術がないレイは言われるがままされるがままに、開けた穴からそのままアルカトラズに突っ込んでいった。
♢♦♢
~アルカトラズ内・フロア「1」~
レイによる天井破壊から遡る事数分前―。
ここアルカトラズではフロア「1」~フロア「10」までの階層にわかれおり、下の階に行くほど凶悪犯やモンスターが収監されている。アルカトラズでの警報レベルは次のようになっている。
―――――――――――――――――――――
フロア「1」~フロア「4」軽犯罪レベル。
フロア「5」~フロア「7」重犯罪レベル。
フロア「8」災害レベル。
フロア「9」人類滅亡レベル
フロア「10」※超警報※異世界消滅レベル。
―――――――――――――――――――――
フロア「1」には犯罪者が収監されるというよりも、盗みやストーカー、酔っ払いや近所迷惑などをした者達への厳重注意や処罰、注意喚起を促すアルカトラズ内では一番平和な場所である。
「――ちょっと!何で私がこんなところに連れてこられなきゃいけないのよ!」
フロア「1」の受付で何やら文句を言っている女の子。
肩の辺りまである綺麗なブロンドの髪が揺れ、険しい表情をしている。大きな瞳に端正な顔立ちの彼女は見たところレイと同じぐらいの歳の子だった。
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