第21話 巨人

ズゴゴゴゴゴゴッ!


ガズン! ガズン!


「うおーっ! なんだコイツはっ!?」


砂煙を巻き上げながら突如、姿を現したチャンシー製の

戦闘用ロボットがこちらに向けて迫ってくる。



そのチャンシーロボは、全長が15mくらい

(4階建ての建物以上の高さ)でおそらく

軽量化のためなんだろうが、胴体はフレームだけの

構造で青や赤に光る内部の駆動系が見えている。



細い銀色にピカピカ輝く特殊金属の長い手足をしていて

左腕の先が不気味な青龍刀のような形状になっているんだ

逆らう者をあれでビシッ!と切り裂くつもりなんだろう。


ギュィーン!


更に右腕には、どんなドリラーでもビビりそうな

巨大で鋭いドリルが付いていて超高速で回転している。


「なんて凶悪そうなデザインセンスなんだっ!」



そして、顔の部分は割と古典的なロボットフェイスで

カメラアイが黄色い光から、増悪に燃える赤い光に変わっていった。


15mクラスと言えば、ロボットアニメなら一番ちっさい方だろう

だけど、相対するとその巨大に押しつぶされそうな感じだった。


「デカい! 糞ッ! どうすりゃいいんだ!?」


本来ならハイパー鍛造弾で打ち抜くところだけど

もうあの弾は敵の装甲部隊との闘いで打ち尽くしている


残っているのは一発しかないSN弾だけだ

だけど、こいつは最後の切り札だ、無駄には撃てない。


ギュピピィ!ギュピピィ!ガズン ガズン!


チャンシーロボはしきりと顔の横についている

センサー類を動かして、こっちの位置を掴もうと

しているようだ

しかも見かけ以上に すばやく移動していた。


「マズいぞ、これじゃ、迂闊に動けんよなぁ」 


突然、チャンシーロボの動きが止まった。


ドジュ~ン!


何故か、股間のところにあるランチャーから

ミサイルを発射したんだ!


俺は咄嗟に地面に突っ伏すして身を守った。


ギュガガ! ズバァ~~ン!


ミサイルは頭上をかすめて、少し向こう側の岩に

命中して、その岩を完全に吹っ飛ばすと、後には2~3mの

クレーターが出来ていた。

(後で判ったことだけど、このミサイルが外れたのは

ギズモドローンがECM/電子妨害をしてくれていたらしい)


「このままじゃやられる!」 


俺は意を決して、銃口を上に向けると小銃弾を撃ち込んだ。


バシュ! バシュ! 


ガキン! ガギンッ! 


「ダメだ! 金属フレームに凹みができるくらいで

やっぱり7.62mm弾じゃ、あのロボットには効かないな


あんなのにこれ以上は関わり合っていられないぞ 

よし! こうなったら・・」


俺は、セレクターをフルオートにすると頭部にある

カメラアイやセンサー類に狙いをつけてマガジンが

空になるまで引き金を引き続けた。


ズバッ! ズバババン!


もちろん自動追尾弾だ。

全弾が吸い込まれるようにチャンシーロボの頭部に命中した。


バギギッ! ギュビガガッ!! ギャババァーン!!!


ロボの顔面のパーツの破片が飛び散り、カメラアイが吹っ飛んだ。


ギシッギギッィ・・・


妙な音を立て、ギザギサに空いた穴から、うす汚い煙を

吐き出しながら、チャンシーロボは明後日の方向に向かっていった。


「目潰しが上手くいったようだ よし! いまのうちに・・」


俺は力を振り絞って、飛び出すと前方にあった

大岩の影に移動した。


ここなら射撃にぴったりだ

ビジョンを通じてSN弾に最適な方位と

仰角はキズモが示してくれる。


仰角はグレネードランチャーのようにかなり大きい角度で

曲射することになる

レティクルがレッドからグリーンに変わった。


おれは深呼吸して落ち着くと、静かに息を吐きながら

祈るような気持ちで引き金を引いた。


パポォ~ゥ!!


キミョーンナ村 いや、この世界みんなの命運を賭けた弾が放たれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る