第3話

どこにでもあるワンルーム なんの変哲もないリビング 

そのテーブルの上には、あまりに非日常的な、どデカい珍銃が

なぜかぬ~~んと乗っかっていた。



「はわわっ・・なんでこいつ(銃)俺の部屋に来てんのぉ」


夢や幻覚じゃなかったのかよ・・俺は目が点 鼻水タラ~と

なっていくのを感じたよ


待て! 落ち着け いったん落ち着こう! 俺!!

こうなったら軍オタの名に懸けて こいつを調べまくってやる。


「よ~し! やってやるぜ~ おっとその前に夕食だ」


夕飯をレトルトハンバーグ(チーズ内臓タイプ)とカルパッチョと

残り飯で手早く済ませると おれは銃を取り上げてた、

そしてグリップを握ってみようとしたけどやめておいた

あの石室で、この銃のグリップを握ったとたんに衝撃が走って、

気を失ったことを思い出したからなんだ


「それにこの銃のグリップ 妙にネチャっとした感じがあったんだよなぁ・・」


だから、銃身を持って調べることにしたんだ


銃は全長が35cmほど 重さからすると1.3kgから1.5kgくらいかな

バレルなんかが作られている鈍い青みがかった材質は硬質なのに

鉄やステンレスなど違って触っても冷たくない。


照準などの出っ張りの少ない全体が丸みをおびた曲線で構成されている

う~ん それによく見るとバレルからグリップにかけてが鳥の

モモ肉っぽく見えなくもないなぁ(旨そう・・)

それから、とても大きなグリップガードがついているね

あと持った時にサイズの割に思ったよりバランスが良かったのは銃身の

一番後ろのところ 普通ならハンマー(撃鉄)のある部分が延長されていて、

それが手首を支える構造になっているからなんだな。


シリンダー(回転式)弾倉がないのでAutomatic(自動拳銃)だとわかる

とすれば・・どっかにマガジンキャッチ(弾倉をイジェクトする

ボタン)があるはずなんだ。


人間工学的にもそれは銃身の左側 そしてグリップのやや上にあるはず

なぜなら素早くマガジン交換をするために右手の親指で操作するからだね

やはり、この銃もその箇所にボタンがあった

しかもそのボタンがうっすらと光ったように見えた。


ガチャッ!


やっぱりマガジンが飛び出してきたぞ

そ~と一発だけ、弾を取り出してみる



「あっ そうだ アレがあったな」

俺は前に買ったサイドアーム関連の本に実包の実物大シルエットが

載っているページがあったっけ・・アレで調べてみよう

それで照らし合わせてみると、この弾は7.62mm弾のようだけど

驚いたことに弾頭のちょっと下の部分に赤く発光している丸いライトが見えていて弾の下部から小さなフィンが飛び出していたんだ


「なんだ こりゃ!? ずいぶんと変わった弾だなぁ・・」


どっかで見たと思ったら、この構造はまるでミサイルの安定翼そっくりだ

まさか! この弾は自分で追尾して目標に命中すんのかぁ!?


マンストッピングパワー(弾が命中した時に、敵をどれだけ

行動不能にする力があるかという指標)に定評のある7.62mm弾が

ミサイルのように目標を追尾すれば確実にやれるわけだな


いや これはミサイルやロケットのように自噴式 つまり推進用の

ロケットモーターこそついていないが誘導弾であることに違いはなかった


そういえば、ジェット戦闘機などに搭載されている最高レベルの

空対空ミサイル/AAMは高いものになると一発で数千万円以上は

するといわれているんだった


だから、拳銃とかの弾ではとってもコスト的に割に合わないし、

第一こんな小型の銃弾にシーカー(追尾装置)制御システム 

姿勢制御用フィンなどを全てを盛り込むことは不可能に違いない

できたとしても凄い金額がかかるんじゃないのかなぁ?


え~と1960年代にジャイロジェット・ピストルといって撃鉄式じゃなくて、

拳銃弾の中に推進用の火薬が入っていてロケットと同じように噴射して

飛んでいく銃が開発されたけど あれは、あくまで普通に飛ぶだけで、

狙った目標に向かって方向変えて進んでいくようなことはなかったよなぁ


この弾を見てから、俺の頭の中はめまぐるしく回転しだした、

そして だいぶ前に習った物理の講義のことを思い出したよ


確かレイノルズ数というのがあって、この数値の粘性の項が同じなら

空気や水などの流体中を動く物体はサイズによらないんだっけか?


つまり飛行機も弾丸もレイノルズ数が同じなら同様の扱いになるんだった。


こうして考えてみると、やっぱりあの神殿で撃ちあったときの

二人目の兵士は身をかわしていたし、俺の狙いも明らかに外れたと

思ったんだよ


それなのに敵兵の頭にhitしてたのは、俺の射撃の腕前じゃなくて、

この弾が目標を追尾したからなのか!?

しかもこの弾はきっとファイア・アンド・フォーゲット

(撃つちっぱなし)機能に違いない

だって銃のほうにレーダーとかで弾を誘導するものが無いからね



おいおい スッゲぇ! シューティングゲームなんかで全弾当たり判定になる

チートモードがあるけど こいつがあれば、あればターゲットに向けて

引き金を引けば現実にできることになるよ!


だいぶ分かってきたぞ! あの撃ち合いの時に角を曲がる前に潜んでいる

敵兵の姿が目の前に浮かんできたのも、きっとこのヘンテコ銃の機能の

一つなんだな!


陸上自衛隊や保安組織などでは、敵兵やテロリストとかが立てこもっている

建物などの中を調べるためにボール型のスカウトディバイスを

開発しているのを動画でみたけど、これはもっとず~と進歩している

多分、昆虫くらいの目立たない偵察ドローンが組み込まれていて必要に

応じて、飛び出して偵察した画像データをこの銃に送信するんだよ 


そして、銃のグリップを握っているユーザーの脳に何らかの方法で

アクセスして取得したデータを直接的に伝達するシステムなんだろう

それなら、俺にコーナーの先に潜んでいる敵の姿が見えたのも納得が

いくよな


これもシューティングゲームで敵を上空や背後から観れたら、

遥かに有利になるモードを実装しているといえるよね

この銃は、今の時代の軍隊や警察なんかに装備されてる

銃の何十年も先の技術で作られているとしか思えない。



「おいおい 俺ってば、そんな魔銃ともいえるGunを授かっちゃったわけだ!

え~となんてたっけ? あっそうそう arme-rouge アルマァ・ルゥ~ジュだ

いいんだね? 使っちゃって プフフフ」

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