【魔界遺産】虚心坦懐とカタルシス【レグ×プラ】

 アンドリューズが両手を伸ばした。混沌の星空にすべてある。アンドリューズにとってはそれが真実だった。ゆっくりと目を閉じて魔力を練り上げていく。ふわりと、不自然な風が渦巻き始める。


「魔界創造は創造スキル持ちにしか出来ない芸当だろ?」


 ジークが首を傾げてル・シリウスに問う。


「無から有を生もうって話じゃない。かつてあったものを再構築するの。好き勝手に生み出せない分、取り戻すってことの方が大変なのかもしれないけれど」


 それがどんなに困難でも、今はアンドリューズを信じるしかない。


 風が意思を持って混沌から何か引き寄せる。きっと小魔界を構成していた要素たちだ。


「そういやお前、さっきの姉さんに本を渡してたろ」

「ヤミの真似して混沌からカラッポの本を取り出した」


 もう一冊。真っ白の本はいくらでも出せたが受け取り手がいないとすぐにまたぼろぼろと崩れて消えていった。


「んで、アタシのファイノメナ。アンドリューズに会って共鳴したから最初の頁ができた」

「お。ちょっと読ませろよ」

「だが断る☆」


 ル・シリウスが素早くパタンとファイノメナを閉じた。


「完全に蘇るというより、断片の、アルバムみたいな、そんな内容だよ。地図やガイドブックを見ているみたいな」

「……そうか」

「自分が何をなくしちゃったかわかるってだけ」


 べつにガッカリはしていない。そこに喜怒哀楽の感情は生まれない。事実を事実として受け止めた。


「多分。アタシは何を失っても、そもそもマスターがいないならかわらないんだ。だから逆に辛くも悲しくもない」


 今さら世界が滅んだところで何とも思わない。


「落ち込んだり、足を止めたりする理由にはならない」


「そういうもんかね。──だがお前以外の普通のやつらが、思い出すことで逆に喪失感が強まるなら、時間が経つほどこの世界は荒れる可能性があるな」

「そだね。ゼロから始まる方が身軽だけど、頂点を極めた存在がリセットされた今は決してスタートラインじゃない。どの魔王様も栄光を思い出しては絶望する。なまじ力があるだけに自暴自棄になられるとめんどい。そういう意味ではアタシにとってはジークも危険要素なんだよ」


 他人事のように余裕をかましていられるのは、まだ何も思い出していないからだと。真っ向から指摘を受けたジークは鼻で笑った。


「せいぜい今のうちに絆で繋いでおけよ?」

「アタシが? やだよ。絶対ぶっ倒せるよう強くなっておく方がいい」

「顔に似合わず野蛮だな」


 誰かをあてにしたり、防衛まもりに入る方がずっと不確定で恐い。お前が壊れたら俺が引導を渡してやる、というスタンスの方がブレない。


「アタシはまだまだ強くなるんだ。弱くて後悔するのはもううんざり」


「まあそっちのが好みではある」

「おいマジでヤメロ。ロリコン罪で今処刑するぞ」

「ロリコンではないがな」

「お前が何を言おうが、アタシに手を出したら世間様的にはロリコン罪になるんだよ変態」

「仲間として悪くないって話だ」

「『そういう意味ではアタシにとってはジークも危険要素なんだよ』(二回目)」

「話を聞け。さっきは『そういう』意味じゃなかったろうが」


 ル・シリウスとジークがくだらない言い合いをする間も、アンドリューズは真面目に小魔界再生を続けていた。


「外野うるさいっす。ロリコン談義とか気が散るんで他所でやってほしいっすよ。でも気になるんで後で聞かせてほしいっす」

「全力で気ぃ散ってんじゃねえよ」

「ちゃんと集中しろ☆」


「崩壊した混沌世界に、最初の小魔界が復活っすよ。もっと刮目して見守ってくれても」

「アンドリューズがいい仕事してくれてるから、どうやらお客さんが見物に来たみたい」

「見守ってられない時もしっかり守ってはやるから安心して仕事を続けてくれよ、お役人さん」


 小魔界が復活する。魔力が渦巻く気配に気付いた猛者が集まってくるのは想定内。敵か味方か、ル・シリウスとジークは目を光らせた。


(遠くの気配を早めにキャッチできるのも目がいいのもお互い様か。能力被りはパーティバランス悪くない? まあアタシは万能型のソロプレイヤーだから補ってもらう必要はないですけど)


 魔王級相手に輪ゴム銃はどこまで通用するのか。広がる混沌と未完の小魔界とアンドリューズを守りながら。


「相手は魔王級って言ってもピンキリだ。記憶も装備もない。余裕だろ」

「こっちは背中が弱点の変態がいる( o̴̶̷᷄ ·̭ o̴̶̷᷅ )ぴえん」

「後で泣かすから」



 ✂︎-----------------㋖㋷㋣㋷線-------------------✂︎


【レグ×プラ】


「魔界遺産再始動!! 魔法使いプラウです」プラウ

「戦士レグルスだ」レグルス


「そしてはじめましての皆様、はじめまして!!」プラウ

「ひさしぶりの……いるか? まあ挨拶はいい」レグルス


「ここは僕とレグルスがお喋りするだけのレグ×プラのコーナーです」プラウ

「かつては──そうだな、質問とか来たらそれに答える交流の場だったり」レグルス

「特にリアクションなどなくても勝手に色々解説したりする安心設計」プラウ


「そんな話はどうでもいいんだ。ル・シリウスが無事で俺は嬉しい」レグルス

「いやあ、あれは無事って言えるんでしょうかね。もちろん本人はあれだけ減らず口叩いてて元気ですけど、世界は依然として消失してますからね」プラウ

「世界が滅んでもル・シリウスは滅ばない。それが証明されたんだ」レグルス

「とはいえ魔界遺産の更新は普通の小説とは比べられないくらい気が遠くなる作業(当社比)ですよ」プラウ

「そんなものどうってことはない」レグルス


「さて師弟コンプレックスがすぎるので解説に戻りますが、そうですねー、何から説明したらいいですかねー、開始三頁ですでに課題が山積みですからねー(遠い目)」プラウ

「そうか? 何かわからないことでも書いてあったか?」レグルス

「もちろんですよ。かつてあった物語を知らないはじめましての皆様からしたら、どっちを向いてもわけわかめ劇場なんですから!」プラウ

「俺でもわかる内容だぞ」レグルス

「普通序盤ではもっと世界観とか説明が入るんですよ!」プラウ

「でもほら、世界は滅んでるし」レグルス

「そういうことじゃないんです。まあ作中では伝えられないメタ情報としては、ものすごく長編交響小説だった魔界遺産が、某小説サイトの閉鎖的な煽りを受けてロストしたという事実がベースにあって、とりあえず全員記憶喪失です」プラウ

「俺たちは記憶喪失じゃないぞ」レグルス

「ええ。僕達は舞台にいませんでした。ヤミも」プラウ

「あ。ヤミは物語の登場人物じゃないもんな」レグルス

「とにかく作者がバックアップとってなかったせいで世界はこんな感じです。作者の記憶でどこまで復元可能かわかります? あの人、重要人物の名前も思い出せないんですよ」プラウ

「俺も記憶は苦手だから共感」レグルス


「ただ、これは物語の中でもあった現象が現実でも巻き起こったパターンなのでデジャブ感がすごいです」プラウ

「グランドキングダムは未公開だったから俺は読んでないぞ」レグルス

「僕もプロットでしか知りません。けど作者はそれを流用して魔界遺産を再建しようとしているのは確かで、器用というか不器用というか……普通にファイノメナをまた最初から書くのは無理だったということですかね」プラウ

「ここでは書けない大人の事情が発動したからだな!」レグルス


「最初の小魔界に迫り来る魔王級!!」プラウ

「ル・シリウスとジークは!!」レグルス

「最初の歯車を廻せるのか!!」プラウ

「次回、登場するのは誰なのか──!!」レグルス


「なにはともあれ」プラウ

「おかえりル・シリウス」レグルス

「これからも「『再見』」」レグプラ





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