第14話 Hちゃん

桜子を匿ってもらう場所。私より7歳年上のHちゃんの家。



Hちゃんは、私が16歳で施設にいた頃の先輩。スキンヘッドでがたいもよく、厳つい。年上なんだけれど、何故か“Hちゃん”“エレジーちゃん”と、ちゃん付けで呼びあう間柄。よく一緒に飲みに行ったりと、可愛がってもらった。



ある時、カウンターで二人並んで飲んでいた時。



明らかにHちゃんが、私ではなく私の一人向こうの人間を見ていた。すると、急にHちゃんが動いた。



「スパーーーン!」



Hちゃんが私の隣の男の頭を叩いた。いきなり叩かれた男は驚いたけれど、Hちゃんの風貌を見て何も言えなかった。



「Hちゃん、やめてよー!」



飲みに行くと、いつもこんな感じ。そんな訳のわからない凶暴な一面を持つHちゃん。



でも、何故か私には優しかった。



Hちゃんとこだったら、仮にAがヤクザを使って桜子を探しに来ても大丈夫だろう。Hちゃんは結婚していて、桜子の事情を相談したら二つ返事でOKしてくれた。



私の勤め先は、兵庫県で仕事が終わると、毎日、大阪のHちゃんの家に通った。

桜子も、Hちゃん夫婦や私の優しさに、段々と元の元気な桜子に戻っていった。



やっと平穏な日々を過ごせる安堵。



ん?ポリポリポリ。

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