第8話 そして、崩壊への序章・・・


翌日、というか、実は私が家に帰ってから一本電話が入っていた。桜子には友達の家に泊まると言っていた私。



「どうしたん?」



「いや、なんかツレが都合悪なってな・・・。」



「あ、そうなん。」



桜子は微塵も疑っていなかった。そんな会話を桜子としている時、電話が鳴った。



(うわ、ヤバ・・・)



すかさず受話器を取る。



「コブ・・・」



Aちゃんとわかったけれど、すぐに電話を切った。今、考えてもひどい男だと思う。Aちゃんは、千葉県から来ていたので、おそらく帰れない。



でも、私は自分の保身の為、ガチャンと切った。



「イタズラ電話やわ!」



「あ、そうなん。」



ホント桜子は私の事を疑わなかった。



翌日、私はAちゃんに電話した。



「あ、どうも・・・」



明らかにAちゃんの声色は、いつもと違っていた。それでも、あの日の理由が知りたかった私はAちゃんに聞いた。



「電車が事故で止まったの・・・。」



あの日の夜、Aちゃんが乗っていた電車が、自殺か何かの人身事故でストップしたらしい。事故処理に時間がかかり、ようやく動き出した電車は最終電車だった。もう電車がない状態で、私に電話したらしい。



私に切られた後、知り合いの知り合いに頼んで、なんとかなったとの事だった。結局、Aちゃんは薄情な私の事など好きになるわけはなく、それきり別れてしまった。



あの日、桜子だったら、たとえタクシーで帰る事になったとしても最終電車まで待っていたと思う。



今、思い出してもクズだなぁと思う・・・。



『本命と遊びの差、10分』



私の中の格言。



この話は、桜子もモチロン、誰も知らない私だけの秘密の話。桜子に対する贖罪のつもりで書きました。



話が脱線しました。続きです・・・



勢いに乗っている私に、早速、ジムも試合を組んでくれた。日本ランキング入りをかけた賞金トーナメントにエントリー。優勝すれば賞金30万円プラスランキング10位以内の上位に入る。



しかも、違うブロックでは私が前戦で勝った元日本ランカーもいる。もう一度やって100%勝てるとは言わないけれど勝つ自信はあった。そして何より日本タイトル戦も視野に入れられる。



Aちゃんとのことも終わり、試合に集中することにした。しかし、この試合で私の人生の歯車が狂いはじめる。



それは、桜子との関係も壊れる始まりとなった・・・

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