わらしべハウス⑥




鋲斗視点



「では他の二人のもとへ行きましょうか」


紺乃介と瑠璃子は部屋にいたため、ノックして出てきてもらった。 今は鋲斗も含め四人がリビングに集まっている。 座り順は鋲斗の隣に壮弥で、テーブルを挟み正面が紺乃介でその隣が瑠璃子となる。

そして簡単な自己紹介まで終えたところだ。


「そう言えば、物々交換をもう一周しようと思うんですが」

「もう一周ですか!?」


瑠璃子が驚きの声を上げた。


「はい。 このままだと紺之介さんが不利ですので。 ちなみに僕はもらわず出すことしかしないため安心してください」

「いや、オーナー。 俺は今のままでいいぞ?」

「そうはいけません。 せめて平等にしないと」


物々交換を押す鋲斗に二人は揃って考える。


瑠璃子:(とりあえず今は物々交換から離れないと!!)

紺之介:(何か違和感ない新しい話題はないか!?)


そこで紺之介が口を開いた。


「そ、そうだオーナー! 物々交換や家の中を案内よりも先にやりたいことが!!」

「何ですか?」

「まずは四人で少し話さないか? 折角みんな集まったんだし」

「それもそうですね・・・」


そういうことで一度交流を入れることにした。 先に紺之介が瑠璃子に話題を振る。


「そうだ! 瑠璃子ちゃん、俺のプレゼント気に入ってくれた?」

「プレゼント?」

「そうそう、物々交換の!」

「あぁ! あれ貴方のものだったんですね? 花柄のエコバッグって・・・」


瑠璃子は必死に笑いを堪えていた。


瑠璃子:(マジッ・・・。 笑っちゃいけねぇってのに・・・ッ!)


「な、何がおかしいんだよ!」

「いえ、物は悪くなかったと思います・・・。 素材も高そうでエコバッグには勿体ないくらいで・・・」


瑠璃子はクツクツと肩が震えている。


―――瑠璃子、震えているけど戦女神の封印でも抑えているのか?


鋲斗は素直に心配した。


「それにもらって嬉しくないものでもなかったですよ」

「・・・」

「ただ大の男性からのプレゼントって思ったら笑えちゃって」

「・・・だよ」

「え?」

「そうなんだよ!!」

「え、な、何がですか?」


紺之介は急に嬉しそうに声を上げた。


「いいものだっただろ!? あの価値が分かるとは流石は俺の見込んだ瑠璃子ちゃんだな!!」

「は、はぁ・・・」


壮弥:(俺の見込んだ・・・? どういうことだろう・・・。 紺之介さんは瑠璃子さんのことを意識しているのかな・・・?)


「あ、そうだオーナーさん! 私たち以外にも入居者って決まっているんですか?」


おそらくは話をそらそうとしているのだ。 瑠璃子に話を強制的に変えられ紺之介は不貞腐れている。


紺之介:(どうして今話をそらしたんだ? ママのエピソードが眩し過ぎて目をそらしたくなっちゃったのかな)

壮弥:(紺之介さんのそのいじけたような表情、可愛い・・・)


そんな紺之介を近くで見ている者もいた。


「いえ。 今のところはお三方だけですね」

「そうですか・・・」

「女性が一人で不安ですか?」

「あぁ、いえ。 そういうことではないんですけど」

「何か不安があったら言ってくださいね」

「ありがとうございます」


瑠璃子:(やっぱりオーナー最高! 優し過ぎっしょ!! 寧ろライバルとかウザいだけだから、女はもういらないんだけど?)


「これからは細かいことを決めていかないといけませんね」

「シェアハウスのルールみたいなものだな」

「そうですね。 今後も人は増えるでしょうが、それまでも生活は続いていきます。 できれば簡単なことは今のうちに四人で相談したいと思っているのですが」



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