わらしべハウス⑤




壮弥視点



人見知りが強めな壮弥がシェアハウスに決めたのは、まさにその人見知りのためだ。 テレビで見たシェアハウスの企画番組。 恋愛要素強めで構成されたそれは、リアルとは違うのかもしれない。

しかし壮弥が人見知りを克服するための手段として選んだのは、半ば強制的に交流を持たざるを得ないシェアハウスが自分に必要だと思ったからだ。


「初めまして。 大家をさせてもらっている宙仁鋲斗です」


―――オーナーさん、優しそうな人でよかった・・・。

―――怖い人だったらどうしようかと思った・・・。


とはいえ、不安だらけでありそんなシェアハウスにも溶け込めなかったらどうしようかと思っていた。

それがオーナーの礼儀正しく人のよさそうな外見に、これからやっていけるのではないかという自信がついたのは事実だ。


「よろしくお願いします・・・」

「部屋へ案内する前に少しだけ確認したいことがあるのですが」


そう言われ部屋へと通された。


―――ただ・・・。

―――優しそうな人だけど、オーナーの見た目は中性的だなぁ・・・。

―――僕の恋愛対象ではない・・・。


「電気代水道代ガス代。 全て込みで月7万円になります」


説明を聞きながら思った。


―――そう言えばさっき廊下でチラリと見えたけど、もう一人背の高い男性がいたよね・・・?

―――その人は僕の好みだったなぁ・・・。

―――イケイケ系で男らしくて眩しい人・・・。

―――あの人にならアタックできるかな・・・?

―――嫌われないといいな・・・。


「壮弥さんは17歳ですね。 何されることが好きなんですか?」

「好きなことですか・・・? 好きなことは可愛いもの集めとか・・・」

「可愛いもの集め?」


―――あッ・・・!


「えっと、いや・・・。 ふりふりなドレスとか・・・」

「ドレス・・・?」


―――あ、また・・・ッ!


「えっと僕には小さな妹がいて、妹のために可愛いものを集めているんです・・・」

「なるほど。 妹さん想いなのですね」

「そうですね・・・。 歳が離れているので可愛いです・・・」


―――危なかった・・・。

―――僕の趣味が女装だということがバレるところだった・・・。

―――でも隠しているのは女装だけじゃない・・・。

―――恋愛対象が男性なのも秘密にしている・・・。

―――今までこのことを打ち明けた人は誰もいない・・・。

―――人見知りを克服し、初めてそれを打ち明ける勇気を持つためにここへ来たんだ・・・。

―――だからいつまでも怯んではいられない・・・。


鋲斗はスマートフォンケースを渡してきた。


「これは・・・?」


尋ねると現在わらしべ長者を行っているらしく、プレゼント交換で親睦を深めるためだということを説明された。 部屋へと通されスマートフォンの代わりとなるものがないかを探す。


―――急にそんなことを言われても・・・。

―――僕が持ってきたものは可愛いものしかないんだよね・・・。

―――どれも勘付かれちゃう・・・。

―――妹のために集めたっていう理由でもいいんだけど、もう家を出たから傍に妹はいない・・・。

―――これは妹のために買ったものとか今更嘘をついても、きっと駄目だよね・・・?


そうは言っても渡せるものが見つからなかった。


―――でも流石にオーナーさんが決めたルールを拒否するわけにもいかないから・・・。


結局選んだのはぬいぐるみだった。


「恐竜のぬいぐるみですか。 可愛いですね」

「はい・・・。 これはゲームセンターでしか取れないものなんです・・・」

「それなのに渡しちゃってもいいんですか?」

「スマホケースよりいいものがあまり他にはなくて・・・」

「鑑定するわけじゃないですからね。 それでは次は僕の番ですか・・・」


その言葉にギョッとした。


「え、まだ続けるんですか・・・?」

「これだと一番最初に行った紺之介さんが不利で不公平ですからね」


―――あのイケイケ系の人は紺之介さんというのか・・・。

―――というか、わらしべ長者って最後にもらう人以外全員損するものだよね・・・。


「今度は逆回りで渡していこうと思います。 そうだ、僕はずっと敬語ですが喋り方を崩しても構いませんよ」

「はい・・・。 慣れたら・・・」


―――もう一周物交換をするの・・・!?

―――ぬいぐるみ以上に可愛いものはたくさんあるけど、もう渡せないよ・・・!


壮也は頭を悩ませていた。 だがそれは他の二人も同じだった。



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