第20話⁂彩と雅彦❣⁂
二歳年上のリンダと鈴子の母彩が知り合ったのは、リンダが二〇歳で彩が十八歳の時。
丁度その日は夏休み期間中で、雅彦が名古屋から出て来ていた日なのだ。
✰三光百貨店で、ショッピグと食事を楽しもうと東京駅で待ち合わせて、早速✰三光百貨店にやって来た二人。
喫茶店やレストランも有ったには有ったのだが、二人は和洋、中華、軽食、デザ-トなんでもござれの大食堂『さくら』の前ににやって来た。
それは雅彦たっての希望も有ったからなのだ。
子供の頃から母に連れられ百貨店で買い物の後、百貨店のお子様ランチの後は豪華なフル-ッパフェと決まっていて、今尚その感覚が忘れられず、外食イコ-ル百貨店なのだ。
和洋、中華、軽食、デザ-トの食品サンプルの並ぶウインドウのワクワク感、このウインドウを見て選んで食券を買うのだ。
二人は各々、雅彦はAランチ(野菜サラダ・ハンバ-グ・コロッケ・ミートパスタ・ポテトフライ)を頼みリンダは、ボロネーゼパスタを頼んで会話に花を咲かせている。
すると大食堂の入り口付近に、先程エレべ-タ-に乗った時に見掛けた、エレベーターガールを発見。
その時、エレベーターガールも二人に気が付き、何を思ったのか、トコトコ大食堂に入って来るではないか、
「ああ~?佐々木様ハンカチをエレベーターに落とされたので、届けに参りました。名前が刺繡してありました。最上階でお客様を誘導しておりましたら、エレべ-タ-の向いの、大食堂『さくら』に入られたので、丁度私もお昼休憩だったので届けに参ったのです」
「嗚呼!有難御座います。休憩時間なら隣に、座って!座って!………僕食事おごりますから」
「イイ イエ!仕事中ですから?」
最初の出会いはこれで終わったのだが………?
これを切っ掛けに、✰三光百貨店に買い物に来るとリンダは、彩とエレベーターで会うと挨拶をして、お客様が居ない時は一言二言話すようになっていた。
一方の雅彦にしても、リンダに会いに来たら必ず✰三光百貨店に寄っているのだ。
一体何故………?
リンダは神奈川県湘南エリアの鎌倉に有る『ホテルパシフィックOCEAN・湘南』近くのマンションに生活しているのに、何故わざわざ東京まで来なければならないのか………?
当然デートで東京に出る事が多いのもあるのだが、いつも東京に出る訳ではない。
ある日の事、この日もリンダに会いに来たついでに✰三光百貨店に立ち寄った雅彦。
理由はカーペンタ-ズの大ファンの雅彦は、一九七〇年代丁度カーペンタ-ズが全盛を極めていた頃の事である。
カーペンタ-ズの無名時代のレア物レコ-ドや、新しいアルバムレコ-ドが欲しかったからなのだ。
やはり流行の最先端を走っていた東京には、レコ-ドも真っ先に入荷されているので本店のある銀座✰三光百貨店にやって来たのである。
するとエレベーターで、例の美人のエレベーターガール彩に、またしても会うことが出来た。
その時にお客様が少なかったのもあるが、ウインクを送ってくれた気がしたのだ。
リンダを愛していながら、初めてリンダ以上にトキメクこの胸の高鳴り。
降りるまでの間に、またあのウインクに会いたいと強く思う雅彦、そして又しても几帳面な母が、ハンカチにローマ字で名前をお洒落に刺繍してくれたのを、ワザと落としたのだ。
一方の彩の方も、この時を逃がしたらチャンスは巡っては来ない気がして、一世一代の大芝居をした。
たまたま朝十時頃はお客様が少ない時間帯。
「ウウウウッ!気分が悪いウウウウッ!」
そう言ってしゃがみ込んだのだ。
すると先輩達から「今日は休んで帰りなさい。私達が後はやるから!」
嬉しい援護射撃を頂いたのだった。
こうして、暫く更衣室で休憩して””そろ~りそろ~り””病人らしく、レコ-ド店に向かったのだ。
何故レコ-ド店に居る事を知っているのか?
彩はこの美しい男、雅彦の一挙手一投足を知らず知らずに、目で追っていたのだ。
そしていつも見掛ける場所はレコ-ド店。
ときめいたのは雅彦だけでなく、彩も又最初からこのクールで知的な、まるで彫刻のダビデ像のように整った顔立ちの雅彦に、一瞬で夢中になってしまっていたのだ。
あの知り合いのリンダの彼氏である事は、十分に把握しているのだが、目の前に現れてしまうと、自分を抑えることが出来ないのだ。
{ああああああ!やっぱり居た!}
「アッ!あの~?ハンカチーフ落としましたよね?」
「アッありがとう!」
2人は真っ赤になりながら見つめ合う。
その時、咄嗟に「君仕事は何時に終わるんだい?」
「ああ~?今日はもう帰っていいそうです」
「じゃ~?昼食でも一緒に食べない?」
「良い‥良いですよ!」
こうしてリンダという彼女が有りながら、彩との付き合いも始まってしまうのか………?
複雑に絡み合う恋模様。
リンダは大蔵と雅彦に翻弄され、雅彦はリンダを愛していながら、やはり日本男児、和風美人の彩に魅了されて行くのだ。
もう取り返しの付かない悲劇の連鎖が――――
不のスパイラルを断ち切る術はあるのか?
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