第8話⁂出生の秘密!⁂
鎌倉の鶴岡八幡宮に行く前に三人は、鎌倉小町通りを散策。
暫くぶらぶらした後、暑さと小腹が空いた事も有り、何かないものかと目を凝らしていると、目の前に江戸時代にタイムスリップしたような、趣きのある団子屋さんを発見。
僅かばかりの休憩所には、日よけの為の、和式の赤い蛇の目傘風の屋根と赤い腰掛け、そこに座りお茶と団子を食べた三人はまたもやぶらぶら。
だが………暑さもピ-クに達して来たので、今度は暑さしのぎにソフトクリームの食べ歩き、父の大蔵が注文している間に二人は目で合図して、こっそり父の大蔵を巻いて駆け出したのだ。
二人はソフトクリームの食べ歩きの後、時間も忘れて他愛のない話で盛り上がり、いつの間にか、報国寺の竹林に辿り着いていた。
余りにも話に夢中で、身体の変調にも気付かなかったリンダなのだが、ヒールのリンダは、四〇分近くも慣れないヒールで歩いたために、足が水膨れになった。
「アアアアアア!足が、水膨れで痛い!」
「嗚呼?ゴメン!ゴメン!僕が引っ張り回したせいだ!………そんなんじゃ~歩けないだろう?」
「………」
「俺がおぶって行くよ!」
真夏の太陽が、所々シャワーのように降り注ぐ緑の小道。
日本の美に酔いしれる!報国寺、美しい「竹の庭」”竹”の景色を楽しみながら雅彦はリンダをおぶりながら、ぶらぶら歩き続ける。
程なく歩くと「竹の庭」には『茶々助庵』という茶席があり、お抹茶と和菓子を頂いた2人。
美しい竹林を眺めながらいただくお抹茶はまた格別。
心がスーっと癒やされていくのを感じ、それは、それは、至福のひととき。
まだ恋と言うには、はばかれる若い二人だが、淡い恋心を胸に秘め、見つめ合い
時間が経つのも忘れてしまった。
時計を見ると、もう午後四時を回った所、慌てて小町通りにタクシ―を飛ばした二人。
そこで案内所に向かい父を呼び出して貰った。
やがて父の大蔵は、プンプンに怒りながら駆け付けた。
「一体どこに行っていたんだね?まさか、今日会ったばかりなのに二人きりで出掛けたって事無いよね?」
二人は目で合図をして「違うよ?別々だよ!広いから迷子になっただけだよ!」
この後、この美しい鎌倉で写真を撮りまくり、楽しい時間もあっという間に過ぎたのだった。
それでも…雅彦とリンダは密かに愛を育んで行った。
実は大蔵は、妻子が居ながら、この年まで一度たりともこんな身を焦がすほどの恋をしたことが無かったのだ。
今まで一度たりとも感じた事の無い熱い恋心を、抑える事が出来ないのだ。
{こんな自分の娘程の年の小娘を、真剣に思う何てどうかしている?}
否定すればするほど、熱いものが込み上げて来るのだった。
何故こんな燃えるような恋心が生まれたかと言うと、以前から懇意にしていた『ホテルパシフィックOCEAN・湘南』のマネージャーからホテルのゴルフイベント、また上客という事も有り、度々リンダを挟んだゴルフコンペや食事会に招待されていた太蔵。
そこで一緒にコースを回ったり、会話をしながらの食事会にと、行くたんびに、こんな綺麗なお嬢さんが、親しげに話し掛けてくれるものだから、すっかり舞い上がってしまったのだ。
そして時が経ち、五年が過ぎたある日、等々リンダと大蔵は二人で会えるチャンスを掴んだのだった。
リンダにすれば、密かに雅彦との付き合いは続いているので、無下にも出来ない。
ひょっとしたらお義父さんになるかも知れないのだから。
それでは何故雅彦と付き合っている事を話さないのか………?
それはホテル側から「男女交際は話さない事!」釘を刺されているからに他ならない。
それと何故、急に二人で会える事になったのか?
実は湘南海岸沿いに、そびえ建つ斬新なデザインの『ホテルパシフィッOCEAN・湘南』はホテルだけではなく、ドライブイン、ボウリング場、ビリヤード場、ゴルフ場などの娯楽施設を併設し、当時としては最先端の高級リゾートを形成していた。
だが巨額投資が災いして、最近経営が傾いているらしいのだ。
その為リンダは、仕事が激減。
それとフィリピン経済の低迷で、窮地に立たされているフィリピンの家族に送金をしないと、一家諸共飢え死にする事になるかも知れない。
追い打ちをかけられたリンダなのだが、今まで歌手の仕事しかして来なかったフィリピン人で、学の無いリンダにおいそれとは仕事が見つからない。
その為、雅彦が居ながら、何人かのお金持ちのスポンサ―を掴まざるを得ない状態に、追い込まれたのだ。
けれどもあくまで健全な関係なのである。
やがて月日は流れて、雅彦とリンダは念願叶って結婚出来たのだが………?
だが………恐ろしい事に、どうも授かった息子の章は雅彦の子供ではなく、祖父大蔵の子供だと言うのだ。
これは一体どういう事なのか?
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