【短編】セイヴァー メカ娘と人類の天敵と悲しみの結末と

MrR

これまでとこれからの物語



 =人類に開示できる基礎情報=


 インベスターは人類の天敵である。


 また驚異的なテクノロジーで物量を保有している。


 それに対抗するために人類はインベスターのテクノロジーを解析した兵器群で対抗。


 その中でもパワードスーツ兵装、セイヴァーはその中でも最も特異な兵器である。


 サブカルチャー文化のメカ娘を再現したかのような兵装である。

 対インベスター戦において必要不可欠な程の強力な兵装である。

 しかし適正率の問題でほぼ女性しか使用できず量産には向いておらず、実質女性しか扱えない状態になっている。





 Side 新田 園子


 この世界は終わりを迎えようとしています。


 宇宙からの来訪者、インベスターの手で。


 人類は必死に反抗しました。

 

 核兵器すらも使いました。


 それでも奴達の進行を僅かばかりに留めるのが精一杯でした。


 戦闘機や戦車、戦闘ヘリなど次々と鉄屑に変わり、空を自由に駆け回ってバリアも張れるパワードスーツ兵器「セイヴァー」を必死に開発してどうにか戦線の維持を務めている状態でした。


 それでもセイヴァーは――戦況を好転させる切り札にはなりえませんでした。


 敵の物量と強大な力に押され、関東封鎖作戦――二つの絶対防衛戦も陥落を間近に控えつつあり、日本各地に宇宙からインベスターが飛来してもはや戦線の維持すら覚束ない状態でした。


 このまま世界はインベスターの手で滅びを迎えてしまうのでしょうか?


 私達は戦って死ぬしかないんでしょうか。

 

 

 セイヴァー。

 

 何十年か前に流行ったメカ娘と呼ばれるジャンルのそれ。

 両前腕、両足、両肩、背中、頭部にメカのパーツをつけて大きな武器を使って大空を飛び交い、シールドを張って戦う装備です。

 

 まるで魔法少女のように装着は一瞬で完了します。


 これを身につけるときは基本、専用のセイヴァー専用のピッチリとした体のライン浮き彫りになるスーツを身に纏わなければならなくて恥ずかしいです。

 

 私が身に纏うのは白色のセイヴァー千鳥です。

 武装も標準的ですけど使いやすい機体です。


 空戦型で戦闘機のような翼が背中についています。

 デザインもまるで戦闘機を鎧に見立てたかのような形状です。

 装着時には頭にアンテナがついたバイザーをつけないといけません。


 今回はこれに乗って出撃です。



☆ 



 廃墟となった市街地。


 空を飛ぶ円盤型。


 人間サイズの歩兵型。


 戦車サイズのクモ型。


 三脚の陸上歩行する円盤型。


 頭部がない、胴体に目がある人型機動兵器型。


 などが群れを成して遅い掛かってきます。


 雨のように光の弾を乱射してきます。


 私はペアを組んでる若葉 ナツキちゃんと一旦散開。


 長い黒髪でカッコイイお侍さんのような人。

 青いセイヴァー「テッキ」を身に纏い、次々と大きな日本刀で敵を切り捨てていってます。

 頭部の金の、英語のUの字の飾り付けがついたバイザーと相俟って戦国武将みたいです。

 

 私も負けじと一旦地上に降りて手に持ったマシンガンや背中に搭載したミサイルで次々と敵を破壊していきます。


「園子! 敵の円盤型だ!」


 ナツキちゃんにそう言われると同時に空中に飛び上がります。

 敵の円盤型。

 一体一体はたいしたことはない。


 だけど群れを成して行動し、破壊される事を覚悟で遅い掛かってくる。

 それを次々と打ち落としても味方を盾代わりにして他の円盤が突っ込んでくる。

 

『お嬢ちゃん達が危ないぞ!!』


『援護してやれ!!』


 陸上からセイヴァーの別型のパワードスーツ。

 全身装甲タイプで重武装のプロテクターが私達を援護してくれる。

 ガトリングガン、キャノン砲、ミサイル。

 武器は様々。


 それらが円盤を次々と撃墜していく。


 一先ずの危機を回避した私は一先ずホッとします。


 ですが敵の物量は無尽蔵。


 空も陸も敵だらけ。


 戦いが終わる頃には夕暮れになっていました。





 格納庫ではみな疲れ切っていました。


 ナツキちゃんもそう。


 いくらセイヴァーのシールドで守られてるからと言っても体力や精神はどうにもならないのです。


 格納庫にある休憩室のソファーでグッタリと横になっていました。


「心配かけてすまない園子」


「ナツキちゃん・・・・・・無茶しすぎだよ」


「そうでもしないと皆死んでしまうと思ってな――」


「私も皆も大丈夫だから。一人で抱え込むような真似はやめて」


「・・・・・・すまない。ずっと――ずっと私の時計の針は止まったままなんだ」


「時計の針?」


「インベスターに全てを奪われたあの時からだ。今のご時世珍しくも無いことだと言うのに情けない・・・・・・」


 そう言って腕で両目を隠します。

 どうしてそうしたのかは考えるまでもないでしょう。


 ナツキちゃんの言う通り、みんなみんな同じなんです。

 だけど私にはナツキちゃんの言う通りに堪えることはできない。


 私は思わずナツキちゃんを抱きしめてしまった。


「こら、誰か来るかもしれないぞ」


「でも――」


「でもじゃない。そんな風に泣くもんでもないだろ」


「私も頑張る。私も頑張るから・・・・・・」


「うん・・・・・・」


 ナツキちゃんまで奪われたくない 


 だから戦う。


 そして強くなる。


 インベスターに負けるもんか。



 

 ナツキちゃんとこの基地にいる皆がその報せを効いたのは翌日でした。


 敵の大規模進行が開始。


 戦線が崩壊し、24時間以内にこの基地は敵の大群で押し潰されるだろうって。


 逃げるなら今だって。


 皆、ここに残る事にしました。


 私もです。


 ナツキちゃんには反対されましたが決めたことだから。


「いいのか? 間違いなく死ぬぞ?」


「ううん、私ね。それでも諦めたくないの――絶対皆で、皆で生きて帰ろうって――諦めたくないんだ」


「え――」


「この基地の皆も――私達も――諦めないで頑張ろう――」


「そうか――」





 最後の出撃まで少ない自由時間となった。


 と言ってもやる事なんてない。


 せいぜい遺書を書くか非戦闘員の人達に挨拶回りするぐらい。


 皆と涙のお別れになっちゃった。


 本当は恐い。


 とても逃げ出したい。


 でもね。


 ここで逃げしたら死ぬほど後悔すると思うから。


 だから戦うんだ。





 色々と考え事をしている内に。


 様々な事を考えている内にナツキちゃんと二人きりになった。


 基地の外で。


 廃墟となった町を見渡せる小高い見晴らしの良い場所で二人きりになる。


「最後に過ごす相手が私で良かったのか?」


「うん。皆おもいおもいの相手と過ごしているしいいんじゃない?」


「そう・・・・・・か・・・・・・」


 そしてナツキちゃんは空を見上げます。


「がむしゃらに戦って、無我夢中に戦って、随分遠いところに来てしまったな・・・・・・」


「私も――皆がいたからここまで辿り着けた」

 

「ああ――家族の皆も――喜んでくれるだろうか」


「喜ぶよ。ここまで戦い抜いたんだから」


「そうか・・・・・・」


 そしてナツキちゃんは突然泣き出した。

 

 そして私に抱きついた。


「今だけ、普通の少女でいさせて」


「いいよ」


「私は、死ぬのが恐い。恐くて恐くてたまらない」


「うん」


「なにも成せないまま死ぬのが恐い。逃げ出したくてたまらない」


「私もだよ」


「でも昨日、園子が言ってくれたように、ここで逃げ出したら一生後悔するから」


「そうだね」


 そして私はこう言った。


「もしも、生き残れたらどうする?」


「どうするって――」


「とにかくパーティーしよう!! 一生の思い出になるぐらい! それから」


「もう、園子は無茶な要求をするな――」


 泣きながらナツキちゃんは笑ってそう言った。


「えーでもこの様子じゃ勝てる戦いも勝てないよ」


「そうだな。少しばかり前向きになってみるか」


「少しじゃだめ、絶対勝つぐらいの気概でいこうよ!!」


「はははは。本当に元気なんだから」


 そしてサイレンが鳴り響いた。

 敵襲。

 平和の時間の終わり。

 私達は出撃するために格納庫に向かった。





 二人で過ごしているうちにあっと言う間に敵が襲来した。


 想定よりも早い。


 敵が文字通り津波の如く押し寄せてくる。

 

 私は傍にいるナツキちゃんと自然と手を握った。


「すまない、園子。一緒に死んでくれるか?」


 私はそう聞いてこう答えた。

 

「ダメだよ。まだ諦めちゃダメだから。皆で帰るって約束したんだもん」


「そうか――厳しいな園子は」


 お互い涙を流して。

 手を離して。

 そして武器をかまえて敵に向かい合う。


 これを最後の戦いにはしない。


 私達は死なない。


 奇跡でもなんでも起こしてみせる!!





 どれぐらいの時間を戦っただろう。


 戦って戦って戦い抜いて。


 どんどん死んでいって。


 気が付けば残っていたのは私とナツキちゃんだけ。


 敵は屍を乗り越えて追加で押し寄せてくる。


 とんでもない物量差だ。


 それでも、それでもと私は戦う。


 でも。


 でも――――遂に――夏樹ちゃんが――


 ああ、神様――


 この世界はなんでこんなにザンコクで、ムジヒナンデスカ?


 コワシテヤル。


 コノイノチガツキルマデデキルダケミチヅレ二―


 ――


 ――――


 ――――――





 気が付けば私は一人だけ生き残っていた。


 一人ぼっちになった。


 全員死んだ。


 私は人類の救世主になった。


 でも本当に守りたかった人達は守れなかった。


 だから逃げるようにして戦いに没頭した。


 戦って戦って戦い抜いて。


 戦いを追い求めて――


 そしてとうとう終わりを迎えようとしていた。


 無理もない。


 死に場所を追い求めるようにガムシャラに戦ってきたのだ。


 こうなるのが普通である。


 ――それがお前の望みか?


「な……つき……ちゃん?」


 ――お前はそんな人間ではなかった筈だ。


「え?」


 ――お前は――園子は優しくて明るくて――周りを笑顔にするような女の子だったのに……


「ナツキちゃん……」


 ――すまない……そしてごめん……お前はまだこっちには来るな


「ナツキちゃん!!」



 ――生きている人間が成すべきことを成すんだ! 新田 園子!



 

 結局死にそびれた。


 インベスターとの戦いはまだ続いている。


 心が挫けそうな時がある。


 でも――あの時、ナツキちゃんに言われた。


 まだ私にはやるべき事があるんだって。


 だから今度は死んでいったナツキちゃん達のために戦おう。


 ナツキちゃんの願いを叶えるために生きよう。


 それでいいんだよねナツキちゃん?    

 

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