一角兎の進化した先はバニーガールでした。

しゆ

第1話

この話は、「メス・オーガの進化先は美少女でした」番外編の先行公開です。後で本編にも組み込まれますが、単独で読んで問題ありません。






ベチーン!!


後頭部から地面に叩きつけられた俺は、こんな言葉を聞いた。


「悔しかったら、次は額の角取り外す事が出来てから来るんだね~」


細身の小さな少女だというのに、一角ウサギの全体重を片手一本、しかも水平持ちと言う荒業に、逃げたくとも額の角を捕まれている以上、逃げられなかった。


地面に叩き潰され、悔しい思いと痛みが身体を支配する。


このまま、死ぬのか……


否!まだ自分はこんなものではっ!


そう思うと、不思議に身体に力が戻ってきた。


頭を無理やり振ると、角が根元からバキッと折れる。


どうだ、取り外してやったぜ!



坊主頭となった角ウサギの俺は、悔しくて泣けてきて涙目で少女を睨むと、脱兎の如く、いや、脱兎そのまま、逃げだした。


草むらを駆け抜け、森を突っ切りどれだけ走ったのだろうか。


いつしか辺りは暗くなり、夜空に月が昇る頃、俺は池の畔で水面に映る自分の顔を見た。


ない。


自慢の角がない。


そしてデカイ。明らかに自分の身体が以前より大きくなっている。


今ならマッスルポーズか決められるくらいに上半身がムキムキだ。走っている間に身体が変化したのだろうか。掌も五本指で人間のようになっている。


水面に映しながらポージング。

俺、兎じゃなくなっちゃったのかなあ?と思ったり、これからどうしようかと考えたり。


取りあえず、武器がない。頭の角を失って、丸腰のままというのが何か心もとない。股間のもう一本は、雌にしか使わない武器だし。


近くに落ちていた太めの枯れ枝から、節枝を折り、握りが太すぎるので、前歯で削る。


枯れ枝に噛みつくような姿だろうな。枯れ枝うめえ……訳はない。


ペッペッしながら握りの太さを調整する。


これなら、槍っぽく使えるかな。

槍なんて使ったことないけど、とにかく刺せれば良いんだろう。



手作りの槍に満足して疲れたので、俺はそのまま湖畔で眠りにつき、翌朝からは、湖畔の周りを拠点に狩りを始めた。


獲物は、同族であった一角兎や土トカゲ、水辺に近寄った魚。


一角兎を狩る事にも躊躇がないのは身体が変化してしまったからなのか。


仕留めた獲物にかぶりついたが、どういう訳か臭い。これまでは生食してたのに。自分が明らかに昨日までとは変わったのだと自覚せざるを得なかった。


なんとなく、生活魔法と言うものがあることに気づき、火を起こして生肉を木切れでぶら下げて焼いてみる。


うめえ!


それからは食事は焼きの一手。肉も魚も焼いて食べることがお気に入りとなった。


数日後、湖畔に訪れるモノがいた。褐色の肌に金髪の、人族の女。


自分から角を奪った少女の事を一瞬思い出したが、すぐに頭を切り替え、単なる獲物として襲い掛かろうとするが。


「やめておけ。アンタじゃアタシに勝てないよ」


その言葉と共に発せられた威圧に、身体がガタガタ震え出す。


それでも何とか身体を動かそうとすると。


「ほう、アンタ中々見所あるね。しかも槍を使うのかい?面白い。アタシの弟子にならないかい?」


それが、元一角兎と、ハイ・オーガのガイアとの出会いであった。


ガイアに連れられて、山小屋に寝泊まりするようになった俺は、生活魔法の使い方や、ステータスの確認の仕方を教わった。その結果、自分が一角兎から進化した存在であることが判明し、やはりそうかと納得。固有名称が無かったので、ガイアに名付けてもらった。


名前:ミーゴ

種族:バニーボーイ

年齢:8(+1)

LV:3

HP:260

MP:36


STR:12

VIT:10

DEX:13

AGL:22

LUK:18

CHA:16


スキル:

兎魔法LV1

(巣穴)

槍術LV1

跳躍、生活魔法、空駆け


種族はバニーボーイ。

まあ、俺は一角兎だから当然だな。

それにしても、兎魔法って、なんだ?しかも巣穴?


魔力を意識して念じてみる。


「巣穴!」


何気に、これが初めての人語の発生だったが。


空間に穴が開いた。恐る恐る覗いてみると、中は薄暗く、こじんまりとした広さで、寝藁が敷き詰めてある。入ってみると、居心地は良い。


入っている間は出入り口は閉じていたらしく、ガイアの話によると現界からは完全に消えてしまったらしい。


その後、色々と試してみて、巣穴の効果が見えてきた。


巣穴に籠りながら、外の様子を映像で見ることが出来る。これは半径およそ200mの範囲で自由に見れて、さらには巣穴の出口を自由に調節出来ることや、巣穴の中に貯蔵庫として別の部屋も作れたし、客間も作成出来てガイアを招待することも出来た。


時間の流れは巣穴の中も現界も同じだった。


「野外で生活するのに打ってつけのスキルだねえ。しかも、一定エリアで待ち伏せし放題じゃないか」


ガイアの言うとおりだった。巣穴魔法のお陰で、狩りは完全に背後からの奇襲が可能になり、一撃で倒せない場合は、跳躍スキルからの空掛けスキルによる空中立体機動で敵を翻弄出来る。


さらには、巣穴に潜んでターゲットを切ってからの再奇襲。


兎って、こんな生き物だっけ?


ガイアに槍を習いながら、兎魔法を駆使して狩りを行っていたら、ある時、頭の中にアナウンスと言うものが流れた。


ピキューン!

兎魔法がLV2になった。

兎服(バニースーツ)を覚えた。


なんだこれ?

早速、兎服を使ってみる。


「バニースーツ!」


網タイツにハイレグスーツ、首に蝶ネクタイ。何故か胸が膨らんでいるし体型はガイアのように人間のメスだ。


進化したせいか、これらの知識がなんとなく解るけど、何故、自分が兎娘(メス・バニー)にならなきゃいけないんだ?!


兎魔法、頭おかしいだろ……


「アンタ、顔まで人間になってるよ。ウサミミはそのままだけど、面白いね」


ガイアよ、この魔法になんの意味があるんだ?


「人間のリーチが有効だね。後は、人間の男どもが釣れるくらいかな」


人間のように武器が使いやすくなるのは良いが、男を釣ってなんの意味がある?!


大体にして、俺の金玉はどこにいった?膨らんで場所移動してこのおっぱいに?!


「魔法解いたら元に戻るんだろう?」


そうだ、魔法を解けばいいんだ!


……解き方がわからない。時間で切れるのか?


色々試してみたが、兎服の魔法は解けず、一晩寝てから目覚めてもこのままだった……


俺の金玉と下の槍返してくれ。


こうした理由で、俺は元の一角兎に戻るために、旅に出ることにした。


一角兎が進化した先はメス・バニーでした、だなんて、納得がいかねえ。

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一角兎の進化した先はバニーガールでした。 しゆ @tojima-shu

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