02_美少女のお願い

堀園さんには上がってもらって、とりあえず、リビングのテーブルについてもらった。


「ごめん、散らかってるけど・・・」


テーブルだけは食事用にある程度スペースは空いていた。

それでも、所詮一人暮らし。

散らかりまくっているが、まあ許容範囲内だろう。


俺がコーヒーを準備している間、彼女はずっと下を向いていた。

笑顔だったら更に可愛いだろうに、それなのに、表情は暗く、まるで売られてここに来たかのような表情だった。


「インスタントだけど」


ぺこりと彼女は頭を下げた。


ミルクと砂糖と一緒にコーヒーカップを出した。

普段、お客様用のミルクや砂糖は使わないので、先日行ったファストフードでもらったやつがあって何とかなった。

ちなみに、砂糖は小瓶に入れていたのだが、見たら固まっていた。


そんなものは客に出すことはできない。

基本的に客は来ないので、来客用の何かは置いてない。


しばらく無言。

何だこの空気。

美少女が家に訪れてくれるのは、男子高校生としては嬉しいことなのだが、どこの誰かも分からない。

これはもう聞くしかないよな。


「あの・・・」

「あの・・・」


被ってしまった。


「あ、どうぞ・・・」

「あ、どうぞ・・・」


手を出して譲る仕草までシンクロしてしまった。


「ははは・・・」

「・・・ふふふ」


やっと少し彼女の笑顔が見れた。

結果オーライだ。


「今日は・・・どうしたの?」


「・・・おばあちゃ・・・祖母が・・・亡くなって・・・私、ひとりになってしまいました」


そう言うと、彼女はまた下を向いて、目に涙をいっぱい浮かべていた。


「・・・」


俺は何も言ってあげる言葉がなかった。


「しばらく・・・一人で頑張ってみたけど、やっぱりダメだった・・・」


両親はどうしたのだろうか?

疑問は浮かんだが、聞けるような雰囲気じゃなかった。


「私のことを必要としてくれている人がいなくなって・・・最後に・・・セリカくんの顔を見てから・・・」


「おばあさんは残念だったね。でも、きみくらい可愛かったら必要としてくれる人なんて、いくらでもいそうだけどね」


ばっとこちらを見た彼女が言った。


「セリっ、セリカくんなら私を必要としてくれますかっ!?私なんでもしますっ!」


手は胸の辺りで祈るような仕草だ。

まさに『懇願』という感じ。

飛び切りの美少女にそんなことを言われたら、健全じゃないことしか思い浮かばないが・・・


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