エピローグとおまけ

その後の帝国

「あっ。おれ結婚するから」



 帝国の双璧による結婚宣言はそれだけで各国を揺るがすニュースとなった。


 もともとペロロンチーノは知名度、年齢、地位の関係で、皇帝ジルクニフとどっちが先に結婚するかで賭けになるほどの有名人だ。とくに、社交界でもペロロンチーノの愛人といわれる存在が少なからず存在する。しかし愛人と目される女性たちの数は増えるが、まったくといってよいほど結婚の気配はなかったのだ。一部では皇帝との仲を疑われており、その偽装のために愛人を作っているという噂さえあった。


 そんな男がついに結婚するというのだから、相手は誰かということと話題となった。


 もちろんその裏に隠れて、帝国は王国に対し、ナザリック周辺、およびエ・ランテル一帯の割譲を要求しだした。それは後のナザリック独立国家樹立の後押しであった。


 また同時にペロロンチーノは皇帝の名を借り



「法国。うちの嫁を洗脳しようとしたって聞いたんだが、どういうことだ!」



 意訳するとこんな感じの問い合わせをする。



「吸血鬼の嫁など、認められるか! そもそも魅了でだまされてるんじゃないか? ワレ!」



 もちろん法国も言葉をオブラートに包みまくった回答が返ってくる。


 まあ、互いに事情を知らなければ当たり前のやり取りであった。


 しかし、そこで出てきたのが、ペロロンチーノの嫁が所属する組織の主、後の魔導王 アインズ・ウール・ゴウンの存在である。


 当初はアンデット“ゆ“る“さ“んの方向で法国がまとまると、予想されており、帝国側もある程度の力押しを検討していた。


 だが



――逆の論調となった



曰く 六大神、闇の神の再来だ


曰く え? 今度結婚する吸血鬼って眷属神(NPC)なの? 問題ありません。むしろうらやましい


 どうやらこの世界はすこしおかしな流れになっているようだ。最終的に、魔導国による他種族共栄、人間種だから、異形種だからといって排除しないという約定が結ばれた。裏ではユグドラシルプレイヤーの情報開示がなされ、真なる竜王との対立構図なども判明した。


 どうでもいいことだが、ペロロンチーノはどうやらユグドラシルプレイヤーの末裔の可能性が高いということも判明した。


 ペロロンチーノはステータスと認識していた事象は、プレイヤーの末裔共通のもので、見え方は人それぞれ。共通しているのは自分がどのようなスキルを保有しているかの知覚と、レベルの上がりやすさ、そして上限の高さ。そのことが法国からの情報で判明した。



「ああ、うちの初代様。やっぱり転生チート主人公だったんや」



 とペロロンチーノは納得するのだった。


 また、法国から、「プレイヤーの子孫なら、きっとすごいアイテムがあるはず」ということで、ペロロンチーノは、モモンガと実家の屋敷や倉庫を探したところ、当主父上の寝室の壁が二重になっており、その中の小さな保管庫を発見した。


 その中には武具やアイテムなど少々残っていた。もちろんこれはも現在の人間の技術で再現ができないものばかりであったが、一番おもしろいものは初代の日記だった。


 それによると、ヘッセン領にはギルメン6名が名を隠してそれぞれ家庭を持ったらしい。しかも二人ほど相当なハーレム男がいたそうだ。プレイヤーの血は強者への切符。ヘッセル領のレベルが他の都市より一つ二つ上の原因はこれらしい。なによりカッツェ平野のどこかにギルドハウスがあるそうだ。


 そして初代様の日記の最後には



「俺たちの財宝が欲しけりゃくれてやる。探してみな。世界の欠片をそこに置いてきた」

「モモンガさん。これ……ワールドアイテム?」

「まさか、異世界にきて宝探しの冒険が準備されているとは、初代さんも粋なことを」



 というようなこともあった。




***



 そんなある日、ペロロンチーノはジルクニフを拉致るように、外に連れ出す。もちろん移動は上位転移グレーター・テレポーテーションを使うため誰にも見られることはなかった。


 そこは小高い丘に生えたひと際大きな木の上だった。


 周りには生命力を感じさせる美しい自然が広がり、空気も澄んでいる。ほのかな緑の香りにつつまれながらも、遠くには帝都の美しい街並み……人の営みが垣間見える。視線を上に向ければ、空はどこまでも高く蒼い。そして白い雲を従えてどこまでも広がっていく。


 そう。ペロロンチーノのお気に入りの場所である。



「ペロ、どうした? こんなところに急に連れ出して」



 最近ナザリックから人材交流として優秀な人材が数名帝国に所属している。もちろん情報漏洩という観点の問題はあるが、むしろ皇帝の命令ということで黙殺された。


 そのおかげかジルクニフの事務量が三割減ったため、さらなる協力体制への移行を皇帝特権で押し切ったのだった。



「最近やっと顔色がよくなってきたからな。抜け毛も収まってきたみたいだし」

「それは帝国の最高機密の一つだぞ」



 ペロロンチーノの言葉にジルクニフは睨みながら返すのだった。



「ここでの約束を覚えているか?」

「もちろん」



 あの時は三人であった。気が付けばフールーダが後任を選定し、アインズの元に弟子入りしてしまい、結局二人になってしまったが。



「目標。達成できそうだな」

「もちろんだ。それに」

「それに?」



 ジルクニフはもったいぶるように言いよどむ。むしろ笑いをこらえているようだ


「本当にお前といると退屈しないな」



 ジルクニフの言葉に、まったくだと思いながらペロロンチーノは笑う。


 実際はまだまだ課題は盛りだくさんだ。



 しかし



――きっと退屈をしない人生がこの先も広がっているのだろう


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